たんぽぽの花色
大昔、どなたの何という本で読んだか不明だが、ひとつだけ忘れられない記述がある。
もしかしたら過ぎゆく長い歳月のうちに、思い違いをしているところもあるだろうが、こんな内容だったかと思う。
太平の徳川の世、江戸では盆栽を初めとする園芸が流行っていて、その頃の園芸に関する書物にあおい花色をしたたんぽぽの記載があったと。
たんぽぽというと、黄色い花というイメージが強い。一応、しろばなたんぽぽという白い花色の仲間も存在するけれど、個体数はとても少ないので存在を知らない人も多いと思う。
あおいたんぽぽかぁ…。一度でいいから見てみたい。ネットで検索しても出てこないから、徳川から明治に移る御一新の頃か、関東大震災の頃か、第二次世界大戦の東京大空襲のいずれかで、失われてしまったのだろう。残念なことだ。
ところで、あおいと言った表現には色味に幅がある。草木の緑を青々としたというように表現することから、薄い緑色も「あおい」と言うことになる。花びらは葉の変形したものだから、薄い緑色ならしろばなたんぽぽの変異種として出現してもおかしくはない。反対に花びらの発色から考えると、水色の花色のたんぽぽが存在するのは難しいだろう。もしも存在するとしたら、とても優しい色具合だろうなと夢想する。
ただ、純粋な青い色の花というのは、とても少ないのである。なんだかんだ言っても、赤が混ざって青い花色は紫がかった発色になることが大半だ。探せばもっとあるのだろうけれど、赤が混じらない青い花って、胡瓜草とヒマラヤの青いケシくらいしか思い付かない。あとは、個体によるけれど朝顔、露草か。厳密に言うと、微妙に赤が混じっていることが多いのだが。
しろばなたんぽぽの花
キュウリグサの青い花