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ウィンドダンス
風はそれ単独では透きとおって目に見えない。
ただ、様々な別なるものを通して、そこに風があることを知らしめる。
たとえば、一面の草原を風が駆け抜ける際、草原は波打ち、さながら緑なす海のよう。
あるいは、大地に散り敷いた桜の花びらや赤く色付いた落ち葉を巻き上げながら進むつむじ風。サワサワ、カラカラと軽い音を立てつつ。つむじ風はそんなに早くは進まないので、私もつむじ風と一緒に前へ、前へと歩いて行く。
青空に浮かぶ白い雲が流れていくのもそう。ふわふわのシュークリームの形をしていたはずが、いつのまにかビョーンと伸びて紡錘形に変化している。
大空を征く鳥達は、風に乗って高く高く舞い上がり、翼を広げて悠々と旋回する。
ザワザワと音を立て、チラチラと葉っぱが揺れる木の葉擦れ。
見えない風は、その手の先にあるものと妙なるダンスを舞う。それは一瞬の間であっても、永遠に通ずるなにかがある。