思い出のきんぴらサンド
大昔、我が母の定番メニューのひとつにきんぴらがあった。五人家族で食べ盛りの子供が三人いる為、大きな中華鍋に一杯と一回に作る時の量が凄まじい。作ってすぐより、日を置いて味が馴染んできたくらいが美味しい。メインのごぼう、またはれんこんは売っているものではなく、掘り立てなので柔らかく味が染みやすい。特にれんこんは小ぶりながらねっとりとした柔らかな歯触りが美味しくて幾らでも食べることが出来た。
大学時代、大学が田舎の不便な場所だったので家を出て寮生活をしていた。実家に帰った際、帰りにいろんな物を持たされる。いかなごの佃煮、葉唐辛子の佃煮、漬物各種、おから煮、きんぴらごぼう…などの惣菜。自家製野菜。ありがたいが量が多いので友達の寮生にせっせと分けて配る。
ある時、大量のきんぴらごぼうを消費するべくご飯を炊こうとしたら米を切らしており、代わりに食パンがあるという状況が発生。なので、ご飯の代わりにパンでサンドイッチのようにして食べてみた。これが意外な美味しさで、ハマった。友達の寮生にも意外な美味しさを言って回った記憶がうっすら。ただ、きんぴらをパンに挟むという行為に対して、え〜?てな感じで私以外皆んなにはきんぴらサンドは不評だった。今思うと、寮生の皆んなはそれまでに無い新しいものに対して、保守的傾向性があったのかな、と。
社会人になって暫くした頃、モスバーガーから新しいメニューとしてきんぴらライスバーガーが発売された。初めてきんぴらライスバーガーを食べた際、大学時代のお手製きんぴらサンドを懐かしく思い出す。やはりきんぴらサンドはありだったなと。
昔食べたきんぴられんこんは、今だと再現不可能なものになっている。土が違うのか、種類が違うのか、掘ってから時間が経っているからか、流通販売されているれんこんは硬くてシャキシャキ感があるものばかり。残念ながら、あの柔らかくねっとりした食感にはならない。願わくば今一度、あのきんぴられんこんを食べたいものだ。