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「霧のむこうのふしぎな町」を久しぶりに読むと…

柏葉幸子さんの「霧のむこうのふしぎな町」を初めて読んだのは中学生の頃、講談社文庫で、だ。

話の内容も面白かったけれど、タケカワコウ氏の手になる表紙や中のイラストが「霧のむこうのふしぎな町」の世界の奥行きをグッと広げていた。(ひな)には(まれ)なハイカラな通りに出向いて、ナータの本屋に入り浸り、トケの店のお菓子が食べたいと何度思ったことだろう (今だったら、陶器を扱うシッカの店にも入り浸りそうな、そんな気がする)。

大事にしていた文庫本だが、半世紀を経る経年劣化によりばらんばらんになってしまい、数年前泣く泣く手放した。なのでこの度、五、六年ぶりに図書館で本を借りて読むことにした。

借りてきた本と、家で改めてご対面。現在のイラストが最初に読んだ時と違っているのは知っていた。でも、知っているだけだったのだ…。現在のイラストしか知らない人なら、あれはあれでアリなんだと思うが、昔のタケカワコウ氏のイラストを知る身としては物語の奥行きが見えてこない。ピコット婆さん然り、ナータの本屋の本まみれの光景、ツツジの花が年がら年中咲き乱れる小径。頭に一本角を持つ小鬼も可愛らしかったのに、残念だ。

それから、最初は気が付かなかった文章改変。「きちがい通り」が「めちゃくちゃ通り」になっていた。昨今の差別用語対応の為改変したのだろうが、語呂が悪い上に物語の魅力を削ってしまっている。脚注を入れるなど、もうちょっと他の対応は無かったものか。

とてもとても、残念だ。初めて読んだ時の感動は何処にや。

何度も何度も読み返すくらい気に入っていた物語だけど、現在のイラストならもう読むことは無いかもしれない。


ところで。宮崎駿氏の映画「千と千尋の神隠し」を観た時、湯婆婆の格好やツツジの咲く小径の場面で、この場面知ってる!と内心思ってしまった。そう、「霧のむこうのふしぎな町」のイラストによく似ていたのだ。それにもしかしなくても、釜爺の元はイっちゃんだよなぁ…。「霧のむこうのふしぎな町」を何度も読み返している方なら、私と同じことを考えたはずだ。

果たして後日、「千と千尋の神隠し」をつくるときに宮崎駿氏が「霧のむこうのふしぎな町」から刺激をうけたと何かで読んだ。なるほど。その時はそれで納得して終わった。

今回、「霧のむこうのふしぎな町」を読んでイラストにガッカリしたことから、ネットでその辺りのことを調べてみた。すると、当時タケカワコウ氏がジブリにイメージを使われたとして怒り、じぶんのイラストを「霧のむこうのふしぎな町」から引き上げることになってしまったという出来事があったというではないか。ジブリにイメージ盗用されたものと怒りを訴えるも、講談社は取り合わず、以後の柏葉作品の装画担当は竹川氏から変更されてしまい、現在に至る。

タケカワコウ氏のイラストもそうだけど、柏葉幸子さんの物語の設定も利用しているジブリ映画「千と千尋の神隠し」の裏側にあるドロドロ問題、初めて知ったよ。こんな風に映画で使いますねという、挨拶や根回しをして無かったんだ。刺激を受けただけとは言え、分かる人には分かる、黒に近いグレーな表現。自分の作品に誇りを持って仕事している繊細な方なら、タケカワコウ氏の怒りも当然だと言うだろう。お金が絡むなら、尚更だ。結局、ジブリとしてはどう対応したのだろう?サラッとネットで流した中では見えてこなかった。

ネットの情報として、2019年に講談社からの三部作セットの愛蔵版がタケカワコウ氏のイラストで刊行されていた。なお、「霧のむこうのふしぎな町」の紹介文には映画『千と千尋の神隠し』にも影響を与えた物語とあり。断捨離中なので、手に入れるかどうか、悩ましい…。

個人的希望として、佐竹美保さんのイラストで再販されるなら、タケカワコウ氏のイラストとは違うけれど、また別なる「霧のむこうのふしぎな町」が見えてくるかもしれない、と思う。

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