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最終話

おはようございます。最終話のお届けです。

母マスミが逮捕される。残されたハルトとハルコは……。激動の最終話!


 「愛、地球外家族物語」

       (最終話)


          堀川士朗



日曜日。

室内。

ガイリッツィに骨っこ食べチャムを与える。

ぽかぽかの陽射しが窓から射す。

気持ち良い。

ん?

何だか外が騒がしい。

窓の外を見ると、うちの前にパトカーが三台止まっている。

朝食を作っている途中だったお母さんは独り言のように、


「脱税か……出資法違反か……詐欺罪か。あるいはそれら全てか。ハア……マークされてたからなあ。その時が来たのかもしれないわね」


とだけ言って玄関に立った。


「私はお金が欲しかったんじゃないの。お金なら腐るほどあるわ。上級国民の健康器具を通して、ステージが上がってみるみるうちにみんなから崇拝のちやほやを受けるのがたまらなく快感だったわけ。でも愚かだったわ。今になってやっと気づいた……。ハルト、ハルコ、合わせて懲役何年食らうか分からないけど、しっかりと生きるのよ。私たちは家族!それを忘れないでね……」

「ママ!」

「お母さん行かないで!」


母には手錠がかけられた。

母は連行されていった。

あれ?

おかしいな。

目から涙。

おかしいな。

僕らアシッド星人には『心』がないはずなのに……。

あるのか?

僕の脳内にも『心』が……。

流れているのか?

僕の血の中にも『心』が……。


僕が奪っていった命。

僕が奪われた命。

人の人生を台無しにしちゃった。

あ~あ。

僕の人生も台無しにしちゃった。

あ~あ。

贖罪しょくざい

まだ間に合うのかい?

もう遅すぎやしないかい?


家族が。

家族が一人一人いなくなっていく。

母もだ。

会えない時間は『死』と一緒だ。

どうしてだ。

何も悪い事なんかしてないのに。

したのか?

死や、喪失の連鎖。

したのか。

ああ僕は今混乱している。

何も考えられない。

とうとう僕とハルコだけになってしまった……!

僕は気がついたらハルコを力強くギュッと抱きしめていた。



………………。

十年後。

僕は妹ハルコと結婚した。

アシッド星人は兄妹と結婚出来るんだ。

妹は僕の事を大好きだったし、僕もいずれは妹と結婚するだろうなと思っていたから。



翌年こどもが生まれた。

双子だ。

アシッド星人の赤ちゃんは必ず男女の双子で生まれる。

そしてその双子は結婚する運命にある。

お父さんとお母さんもそうだった。

それで結婚した。

おじいちゃんもおばあちゃんもそうだ。

それで結婚した。

先祖代々。

劣性遺伝子が発生しないからこそ可能な無限の近親婚のループ。

僕らアシッド星人は短命だが、この特性により血が絶える事はない。


僕たちはこの8LDKの親しみ深い家で、また新たなる家族を形成していく。

今ならば父ハルキの、あの木訥ぼくとつで不器用な優しさだったりを理解してあげられるかもしれない。

母マスミはもうすぐ刑期を終え、刑務所から帰ってくる。

ガイリッツィはまだ生きてる。元気。ワンワン吠えてる。


ありがとうおじいちゃん。

ありがとうおばあちゃん。

ありがとうお父さん。

ありがとうお母さん。

ありがとうガイリッツィ。

ありがとう妹であり、妻ハルコ。


愛、地球外家族。

まさしく愛の家族を育んでいく。

それは永遠だ。

それは、とてもあたたかい。

僕ら家族は、生きている!

愛、地球外家族!



●●●●●●●●●●●●●●●



………………。

真冬。

午後十一時半。

小雪がちらついている。

河川敷。

気温、零下3℃。

風が強い。

粗末な、破れた青いビニールハウスの中で。


欠けた茶碗を蝋燭の火であぶって、アルミ缶集めの収入で買った焼酎をあたためて飲んでいる男。

五十代とも六十代とも見える男は、実際の年齢はそれよりもずっと若いのだろう。

男は何枚も厚着しているが、ビニールハウスからは容赦なく冷たいすきま風が入り、男の体温を奪う。

ハウスには拾ってきた汚い薄っぺらな布団のみがある。

男は、片方耳の取れた黒犬のぬいぐるみに向かって話しかける。

彼の唯一の会話相手、ガイリッツィだ。

まっ茶色に日焼けした顔の男の歯は、もう三本しかない。


「あい、ちきゅうがいかぞくぅぅぅ!おりぇもそんな、かぞくにかこまれていたらよかったなあああ。TOPEPEYJ。けーっはっはっはっはっは!」



          おしまい



     (2023年2月執筆)



何とか完結致しました!

途中トラブルもありましたが、

思い入れの深い作品となりました。

最後までお付き合い頂きありがとうございました!

来年1月18日から新連載

「悪のアジトの片隅で」がスタートします。

お楽しみに!

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