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第十話

おはようございます。第十話のお届けです。母マスミは今日も健康器具『上級国民』を老人たちに売りつけます。お楽しみに!



 「愛、地球外家族物語」

       (第十話)


          堀川士朗



私はマスミ。

アシッド星人。

今は日本人。

38歳。

二児の母親。

健康器具『上級国民』を販売する会社を経営している。

はぁー修羅シュシュシュ。

太客をーつかめーみたいなー勢いで『上級国民』を購入した会員数はうなぎ登りで、純利益は右肩上がりだ。

イケイケドンドンで売りさばいてやる。


「巷で噂の万能電気式健康器具、『上級国民』が通常価格108万円のところを何と今なら特別価格50パーセントオフの54万円で販売!出血大サービスキャンペーン実施中!」


今日も老人が騙されて購入。

今日も老人が騙されて購入。

今日も老人が騙されて購入。


まあ、この器具、『上級国民』、原価2300円だけどね。

外側だけステンレスで重くして中身スッカスカだから。

一日中テレビしか観ていない馬鹿で情弱な学ばない老人にセミナーで洗脳して売りつける。

馬鹿な老人を騙すのが快感なのは否めない。

まあ、言っちゃアレだがうちの会社のやり口はマルチ商法だ。

不幸になる人間もいる。

でもその倍、十倍、幸福になる会員が増えれば、爆増すれば八方丸く納まるし良いではないか。

良いではないか。

良いではないか。

うちは還元率も高めに設定してあって、マルチ界隈では割りと良心的な方だ。

良いではないか。

内緒だけど脱税もしている。

良いではないか。

カネは潤滑油だかんね。

油大好き。

油もの大好き。

でもそれよりも、電気式健康器具『上級国民』を試して、買って、満足してくれた会員の喜びの声が私には純粋に嬉しく思う。

例え、それがヨボヨボの老人どもであっても。



僕の担任が変わった。

ヨボヨボの老人の男性教師に。

戸座山すみれ先生は亡くなった。

僕が先週、消した。

佐藤ぼんの机の上には花を生けた花瓶が置かれている。

僕が先々週、消した。

静かな教室。

男性教師は僕に興味を示す事はなかった。

安心だ。

それで良い。



クラスメイトの海苔香さんはとてもかわいいのに家が貧乏でやはり片親の家庭で、アパートに住んでいる。

かわいいのに残念だな。

残念でならない。

所詮住む世界が僕と違うんだな。

違う惑星にいるみたい。

まあ、別の種族だからな。

地球人とアシッド星人の違い。

集合住宅になんか住みたくないよ。絶対。

僕はこの一軒家が良いんだ。

貧乏ったれのアパートなんて、住人はみんな低所得の工員ジャンキーばっかで、片方が夜中三時に大音量でロリAV流してたら隣が腹いせに般若心経を一晩中唱えて、やがて汚い廊下を全裸で全身タトゥーで、スイカ割りをする筋肉男の本物レベルのキ○ガイが現れて状況が三つ巴になって更にケイオスと化す、そんなとこばっかだろう恐らく多分。

まるでゴキブリの巣だよ!

爆殺してやろうか。

けーっはっはっはっはっは!



それにしてもなかなか日本は戦争にならないなあ。つまんないなあ。早く見たいのに、その状態を。ドラマを。



今日タバタバをやめようと思って灰皿を潰した。

灰皿はアルミのエンボス加工だから簡単に潰れて、でも三時間もするとイライラしてまたタバタバが吸いたくなってゴミ箱に捨てたグシャグシャの灰皿をペンチを使って何とか元に戻して吸った。

人間関係はアルミの灰皿と同じだ。

こじれて壊してもまた元に戻せる。

でも微妙に歪んでしまった関係の形は戻らない。その微妙な機微までは修復出来ない。

被虐?自虐?

どっちでも良いよ。

もうあの日には帰れない。

灰皿は底面が揺れてグラグラする。草。

この灰皿は今日だけだな。

吸う……マリマリマリ……ポカーゾ。

タバタバ美味い。



水曜日。

今日、学校の図書室で海苔香さんに告白した。

結局何だ好きだったのか。

海苔香さんの事。

自分でも初めて気づいたよ。

でも彼女はまだそんな事考えてないって感じで、僕の告白を遠回しに断った。

やっぱりな。

そんな感じがしたんだ。

それに海苔香さんには、


「ハルトくんは何だか人間て思えないから」


とも言われた。

すごい傾斜角から来るなこの子は。

鋭い。

僕がアシッド星人て事は誰にも内緒のはずなのに。

海苔香さんに告白した事は隣のクラスの妹ハルコにもなぜか知られていて、ハルコは何だか怒っていた。

何だ?やきもちか?

なんかー。

なんかー、まだ今年中に嫌な事が起きそうだな。

今年僕は牛歩戦術ならぬ、もっとゆっくりな亀歩戦術で人生をゆったりと楽しむつもりだったのに。

しかし実際のところは、かなりハイペースでオフロードの人生を走っている。

羽が欲しい。

翼が欲しい。

潤いが、欲しい。

オエイシスはどこ?

OEEAIESIEESU!



            続く



ご覧頂きありがとうございました。あと二話でこの物語は完結致します。どうか最後までお付きあいのほどを!

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