第42話 人攫い
運ばれた時間から考えて、そう遠くない場所。どこかの建物の地下室のよう。
ボクもニアも麻痺は解けてるけど、騒いで状況がよくなるとも思えなかったんで、じっとして機を伺っていた。
ドサッ
「――っ」
男はニアの入った袋を無造作に床に放り出した。
「ずいぶん大人しいな。もう動けるはずだ」
ニアが袋から這い出し、男から目線を逸らさずに立ち上がる。男はそれを黙って見ていた。
「あ、アニキ、オラにやらせてくれ」
隣の大男が愉悦に歪んだ顔で言う。
ニアの目がそっちに向いた瞬間。男が目の前にいた。
男の踏み込みとほぼ同時。ボクのジョイスティッ毛でニアが横に飛ぼうとする。
でも、男のそれはフェイントだった。
気が付くとニアは腕を後ろに取られて床に押さえ付けられていた。
「がうっ……」
男の膝が背中に食い込み、ニアが呻く。
(~~っ)
ボクはニアごと押し潰される。
男はニアの腕から冒険者証を奪うと、大男に促した。
「剥いて縛り上げろ。討伐隊が戻る前に街を出る、遊んでる余裕はないぞ」
男はニアを大男に任せて離れ、荷造りを始めた。
「――っ!」
大男はニアを床に押さえつけたまま、ニアのショートパンツを下着ごと剥ぎ取った。片手でニアの胴を背中から掴んで持ち上げ、足を押さえ付けて露わになったニアの秘部を覗き込み、口元を歪める。
「おい、遊んでんじゃねえぞ」
男が振り返って釘を刺す。
「わかってるってよお、でも後で頼むぜえ、獣人にブチ込めるのは逃せねえ」
こ、この野郎、ニアにそんな事させるか! ニアのことをそれこそ猫でも扱うかのような、大人と子供以上の体格差。
ニアは無表情を保っているけど、怯えて小さく震えてるのがボクには伝わる。逃げないと……まずい……。
「注文品だ、壊すんじゃねえぞ。いいから早くふん縛れ」
大男はニアのタンクトップを摘むように引き剥がす。遮るものがなくなってボクの周りが急に明るくなる。膨らみの代わりに胸にしがみついているボクを見て大男が目を丸くした。
「おお? なんだこりゃ?」
大男の手がボクに伸びる。ボクは逃げるように飛び上がった。
「アニキ! なんかいた!」
大男はニアを放り出して空中のボクに何度も手を伸ばす。ボクはヒラヒラと躱しながらも、大男に纏わり付く。
「逃げて!」
ニアが大男の足にしがみついて叫んだ。ダメだ、ニアを置いて逃げられるわけがないよ。でも、これは埒があかない。
「妖精だと? ……くふ、はははは! そうかアレがそうだったのか、こりゃあツイてるぜ!」
男が歩み寄る。そして――
ドガッ!
ニアを蹴り飛ばした。
「ニアっ!」
「……う……ぐ……」
床に転がって呻くニアの首を掴んで持ち上げ、ボクを見る。
「逃げるとこいつがどうなるかわかるな? おい、捕まえろ」
「え……あ、ああ」
大男の両手がそろそろとボクに伸びてくる。ニアの手とは比べ物にならないゴツくて巨大な手が両側からボクを包み込もうとしてる。恐怖を感じて思わず後ずさると、逃すまいとするように両手が一気に迫る。ボクが逃げるとニアが……ボクは身を縮こめた。
パンッ!
「ぼげっ」
巨大な質量の間で潰されそうになる。変な声が出たよ、中身出ちゃうかと思った。
「おお……ふ、ふおぉ……ふうう……」
大男は鼻息を荒げて、捕まえたボクの形を確かめるように全身をまさぐる。
いだ、痛い、ぐええ、潰れるぅ……
摘むようにして親指でボクの胸を執拗に捏ね回したかと思うと、ワンピースのスカートをめくって指先で引っ掛けるように下着をずらした。
「ちょ、なっ!? ……やっ、痛っ!!!」
そしてそこを広げて覗き込む。
「ぐふっ、同じだぁ。あ、アニキ、たまんねえ……コレ、ブチ込んでもいいか?」
ブチ込……え、ええっ!? ななな、何を……って、いやいやいや無理無理無理!! オ◯ホ妖精は概念的ファンタジーだからね!? 物理的に考えよう!?
「おまえ……ソレに何をどうするつもりだ、見境ないって問題じゃないぞ。ダメだダメだ、そいつは3千は堅い。壊したらブッ殺すぞ」
そそそそうだぞ! ボクは激レアなんだから入れちゃダメだぞ! 入んないからな!
「うひょう、マジか! で、でも、壊さないように気を付けるから、先っちょだけでも……」
「だからナニをどうするつもりだ……まあいい、とにかく街を出てからだ。そいつもふん縛れ」
まあよくないよ!? ダメだよ!? やめて! お願い……
◇ ◇ ◇




