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第15話 作戦

「冒険者に手を出した事は、後悔させねばならん。とはいえ相手は腐ってもお貴族さまだ。組合が自警組織でもあるとはいえ、確証なしには踏み込めん」

「ボクの血が見つかればいいの? それなら、檻とか水槽とかに付いてると思うよ。酷いことされたから。あと、水槽の蛸がボクを少し食べたけど、魔力って残るのかな?」

「……食べたって、さらっと怖いこと言うな」

「怖かったよ! マジで怖かったよ! 死んだと思ったよ!」

 思い出して、ちょっと涙目になる。

「むう、やはり許しておけん。しかし、ひと目でわかる決定的なものというと、やはり人身売買か。虐待目的なら去勢して奴隷落ちだ。……ニア、お前ももう冒険者だ。一肌脱いでもらえるか?」

「わかった。私は囮。やられたらやり返す。カチ込む」

「じゃあボクも一緒に……」

「フェイはダメ。私だけでじゅうぶん。フェイが他の人にも姿を見られちゃう」

「でも、ニア……逃げてまた捕まったとなると、あいつに何されるか……」

「ニアが囚われたらすぐに自警団が突入しよう。精鋭を揃えて、何か起きる前にガフベデを押さえる」

「私は大丈夫。最悪でも痛いだけ」

「……じゃあ、せめて突入には連れてって! 隠れてるから!」

「わかった、なんとかしよう。それと、外した魔封首輪に、代わりに電撃を付与しとくから付けとけ。殺傷力はないが麻痺させられる。カモフラージュにもなるだろう」

「そんなこと出来るの?」

「魔封首輪とは言っても、モノはただの付与アイテムだからな。魔術師に依頼すればすぐできる。ついでにフェイのもやっとくか? 指輪と言っとけばごまかせるだろう」

「もっと強力なヤツ付与できないの?」

「できんことはないが、自分が巻き添えになる危険もあるからな。逃げる時間を稼ぐのに使うんだ」


「ニアには追手がかかってるはずだ。監視を付けて単独行動すれば網にかかるだろう。事が起きたら即、突入する。決行は明日だ、今日は外に出るなよ」


 ◇ ◇ ◇


「ニーアーちゃーん! 何かあるの? 支部長が、今日ニアちゃんの面倒見てくれ、だって!」

「うん。秘密」

 もちろん、支部長には誰にも言うなと言われてる。

 受付の半獣人猫族のお姉さん、ネケケさんというそうだ。

「買い物に連れてこうかと思ったら、外に出ちゃダメなんだって。ニアちゃん、もっとちゃんとした服着ないと!」

「服……別にいい」

「ダメよー、モフモフ可愛いんだからちゃんと着飾らないと! 一人前の獣人さんは堂々としてるよ!」

「むー、善処する。まず一人前になる」

「んーもう、ストイックなとこもかわいい!」


 ネケケさんに冒険者組合の施設を案内してもらったり、遅いお昼をご馳走になったり。

 組合には飲み屋が併設されていて、朝と昼は食堂として営業してる。安くてサービス悪くて美味しくないから、利用するのは駆け出しばかりなんだって。


 ◇ ◇ ◇


「ねぇ、フェイ」

「……ん?」

 夜。ニアに抱かれて横になってるけど、明日のことを考えてしまって眠れないでいた。ニアも同じみたい。ふと、ニアが話しかけてくる。

「フェイは、どうして私と一緒にいるの?」

「……ダメかな?」

「ううん……嬉しいけど……フェイは無理してないのかなって」

「どうして?」

「だって、フェイはこんな危ないことする理由がない。今すぐどこにでも飛んで行けるのに」

「ニアがいるから……じゃ、ダメ?」

「…………」

「…………」

 ボクを抱くニアの手に、少し、力が入る。

「……私は強くなりたい。そのためにはこうしてフェイを危ない目に遭わせちゃうかもしれない。強くなりたいのは自分のためだから、フェイに迷惑はかけたくない。でも……フェイと一緒にいたい」

「ボクこそ、ニアと一緒にいたら、ニアにどんな迷惑かけるかわからないよ。シロンやダンデが言ってたようにボクを狙う奴がたくさんいるなら、ニアまで襲われるかもしれない。それでもボクと一緒にいたいと言ってくれる?」

「うん。だから強くなりたい。フェイを守れるくらい、強くなりたい」

「……ニア……」

「フェイ、私……憧れてた。お母さんが話してくれた泉の妖精のおはなしがとっても好きだった。かわいそうなフェイを守ってあげたかった。だから……でも、私は弱い。フェイを守れない。それでも一緒にいたい。お願い、フェイ。いいかな…………」

「うん……ボクもニアと一緒にいたい。ニアが好きだから……いいかな?」

「……嬉しい……すごく嬉しい」

「ボクも嬉しいよ。ありがとう、ニア」


 ◇ ◇ ◇


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