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異世界行っても変身ヒーロー  作者: 謎の小顔整体師
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004 新米冒険者パラディンのセンカ

「俺ちょっと先に見てくる。すぐ戻るけど5人は離れず行動しろよ」

「え?ちょっと待て…」


 アリウムが言い終わる前に俺は森に向かって駆け出していた。

 あっという間に皆の前から姿を消す。

 そろそろ皆んなから見えない距離だな。


「チェンジ・ブレード」


 ブレードワイスにならないと使え無い能力が沢山あるので皆の前から姿を消さないといけないのだ。

 生体反応センサーとかな。


『ピピッ』


 森は広大かつ魔物も多い。

 魔物と違う動物もいるから生体反応が沢山あって、どれがガベラの仲間か分からない。

 ところがどっこい、ブレードワイスのセンサーは前世の超科学で出来た優れもの。

 東京都内で怪物一体を探し出せるのだ。

 ガベラと似た反応を探すなど造作もない。


『ピピピッ』

『マスター!複数の生体反応を察知しました。近くにいます。方向はこの先です!』


 脳内に直接マップが送られて来た。


 2人一緒にいる!

 他に3人と、大きな反応が1つ!

 強い魔物か?

 何故、いつもいつも都合が良いのか悪いのか誰かのピンチに遭遇する?


『マスター。ヒーローの宿命です』


 余計な事を言わなくていい。


 一度ネモア達に知らせたいな。

 俺はブレードワイスのままネモア達5人のところに戻る。


「君達!」


「うわっ!」

「また出た!」


 突然飛んで来て目の前に現れた俺にネモア達は驚く。


「驚かせてすまない。実はこの先に困っている人達がいる。回復魔法が使えるなら必要かもしれないので行って上げてくれないか?では、さらばだ」


 俺は飛んで先程の反応の所へ行く。


「な、何、今の?」

「あれ、たぶんエーデル…」

「えぇぇっ!?」


 何か喋っていたようだが、飛んでいく俺にはよく聞き取れなかった。


 もうすぐ反応地点だ。

 いた!

 翼が生えたでかい虎みたいな魔物がいる。

 ガベラの仲間っぽいのと、冒険者っぽいのが3人。まずい!やられそうだ!


「ブレード・スパイラル・バースト・キィィッック!!」


 俺は急降下しながら必殺技を放つ。

 ドカーン!と爆音と共に魔物は倒れる。


『マスター。ターゲットの撃破を確認しました。お疲れ様でした』


 ガベラの仲間と思われる2人の魔族と、冒険者と思われる3人。

 怪我してるが全員無事みたいだ。

 俺を見て目を丸くしている。


「君達!大丈夫か?もうすぐ回復魔法が使える者が来るから、それまでここで待機しててくれ。じゃあ、私はこれで失礼する。さらばだ!とうっ!」


 それだけ言って、俺は飛び去る。


「何…あれ…」


 下でそんな声が聞こえた気がしたが、気にしない。

 そして、数分後、変身を解き、ネモア達と合流して魔物を倒した所に戻ってきた。


「ガベラ!」

「カミール!スノーク!」


 魔族の2人は怪我をしていたが、冒険者の1人が回復魔法を掛けていたようで、怪我は治っていた。

 ガベラと2人の魔族は嬉しそうに抱き合っていた。


 取り敢えずめでたいと思っていたが、2人の冒険者が露骨に嫌そうな顔をしている。

 何かあったのだろうか?

 そう思っていると1人の冒険者が喋り始めた。


「おい。センカ。契約違反だ。違約金払ってもらうぞ」


 センカと呼ばれた女の子の冒険者は困った顔をしている。

 魔族の2人に回復魔法を掛けていた冒険者の少女である。


「何があったの?」


 俺は2人の冒険者に聞いた。

 8歳の見た目をそぐわないように丁寧に話す。


「ガキは黙ってろ!大人の話に口を挟むな!」


 俺が子供だからか、冒険者の男は高圧的な態度で言った。

 ムカつく。


 転がっている拳大の石を握りしめ、粉々にくだく。


「そんな事言わずに教えてよ」


 笑顔で言ってあげた。


 冒険者の男は口をパクパクさせている。

 ネモア達や魔族3人も固まっているが。


「いや、こいつがな。言う事を聞かなくて俺達は死に掛けたんだ。魔物と遭遇した人を助けたいなんて言い出して、こいつら魔族を助けようとしたんだよ」


 冒険者2人は新人冒険者のセンカを雇いクエストに来たらしい。

 途中で魔物と遭遇したガベラの仲間、カミールとスノークを助けるために勝手に行動したそうだ。

 センカは俯いたまま何も言おうとはしなかった。


「この魔物はキオンジーです。亡骸をギルドまで持っていけば、かなりの報酬が出ますよ。それで手を打てませんか?」


 アリウムがそう提案した。


「こんなデカいのどうやって持って帰るんだ」


 冒険者が文句を言う。

 面倒臭い奴だ。


「あらよっと」


 俺は魔物の巨体を持ち上げ肩に乗せた。

 そして、そのまま歩いて行く。


「アリウム。村で大丈夫?」

「あ、あぁ。村のギルドでも手続き出来るはずだ」

「じゃ、行こうか」


 俺達は歩き出した。


 後から冒険者2人も付いてきた。

 センカは泣きながら歩いている。


 レスナとレニューに慰めながら歩くようにお願いした。

 2人がセンカの側に寄り添ってくれている。

 少しすると、センカも落ち着いてきて、ポツリポツリと話し始めた。


 センカのジョブはパラディンという凄いジョブらしい。

 今年15歳になって冒険者になったものの上手く行かず、今回のような問題を起こしたのも初めてではないようだ。


「たぶん上級のパーティと組めば上手くいくと思うけどね」


 アリウムが小声で俺に話しかけてきた。

 さっきレニューに言ってた話しか。

 才能ある新人が中級以下のパーティに入ると伸び悩む事が多いという。

 おそらく中級者が新人に期待したり頼ってしまうのだろう。

 上級者なら、しっかり新人をフォローしてあげられるし、新人同士なら切磋琢磨して成長していける。


「なるほど」


 アリウムの言葉を受けて俺は頷いた。


「エーデル。俺が持つよ」


 ネモアがそう言って魔物の死骸を持ってくれた。

 さすが木こり。大木を軽々と運ぶだけあって、魔物の死骸も余裕で持てるみたいだった。

 あれ?木こりって結構優秀じゃない?


 村に帰り魔物の死骸を冒険者ギルドに持っていくと300万ゴールドの報酬が出た。

 冒険者2人に全部渡してセンカとのパーティも解除して貰った。

 冒険者2人は足早に立ち去って行った。

 さらば名も知らない冒険者よ。


 センカは落ち込んでいたけど、アリウムが声を掛けた。


「センカ、俺達とパーティを組まないか?」

「えっ……。私なんかとですか?」

「うん。まだ俺とネモアの2人だけど、来年にはレスナとレニューが入る。結構いい感じだと思うんだ。どうだろう」


「え?私まだ決まってないのにー」


 レニューの抗議の声に皆笑った。


「あたしも、アリウム、ネモ兄とパーティ組むなんて決めてないけどね」


 レスナが茶化すようにアリウムに言った。


「え?俺達と組むんじゃないのか?」

「ま、センカが仲間に入ってくれるなら考えてもいいよ」

「私なんかでよろしければ……。よろしくお願いします」


 センカは深々と頭を下げた。


「じゃ、あたしとレニューも来年アリウムパーティに参加って事ね」

「だから勝手に決めないでよぉ」

「大丈夫よ。ネモ兄でも出来るんだから」

「実の兄をオチに使うなーっ」


 ネモアの抗議に皆が笑った。


 こうしてセンカは正式にアリウム達の仲間になる事になった。

 凄くいい雰囲気だ。

 皆の笑い声が心地良い。

 このパーティなら、やっていけるだろう。

 俺も冒険者になったらこのパーティと組みたいなと思った。


 さて、問題は…

 魔族の3人、ガベラ・カミール・スノークの事である。

 ガベラ達は魔族の国パラクーパのクーデターを止めるべく、冒険者を雇う為にこのスレカ王国の首都マカレに向かっていた。

 途中、クーデター側の追手に追われ、それを俺達が助けたのである。


 強い冒険者を雇う為、かなりの魔石を持っていた。

 魔石とは魔力が宿る鉱石で、非常に価値が高い。

 宝石としての価値もあり、金持ちの収集家もいる。

 魔族の国パラクーパは山脈に囲まれていて、鉱山資源に恵まれ、魔石も豊富にあるらしい。

 魔石を売ったお金で冒険者を雇おうとしていたらしい。


 確かに首都であり港もあるマカレなら強い冒険者も雇えるかもしれないが、この村からマカレまで2,000キロ以上ある。

 徒歩だと何日かかるか分からない。

 魔族差別で、馬車等の交通手段は拒否されるだろう。

 魔族がマカレに行くには命懸けの旅になりそうだ。

 そんな危険な旅をこんな子供がしているのは、かなり切羽詰まってたんじゃないかと思う。

 ガベラ13歳、スノーク13歳、カミール8歳。


「マカレまで行くって無理があるよな。でもこのまま放っていくのも気が引けるし…」

「その事なのですが。私としてはエーデル様にお願いできないかと思っているのですが…」

「「「ええっ?」」」


 ネモア達と村長が驚いている。

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