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025 ベヒモスを倒して村を救おう

 次の日の朝、俺達はベヒモス討伐に村を出発した。

 村人は山まで案内すると言ってくれたのだが、危険だからと断った。

 というのは建前で俺とガベラの変身能力を見せない為である。


 人間というのは自己認識の許容範囲を超えると恐れを抱く。

 俺の事以上に魔族のガベラがドラゴニュート化する姿を、村の人々はいい人達だから恐れないだろう。などという甘い考えで見せていいものではない。

 こんな田舎の村でも噂はあっという間に広がる。

 人間と魔族の溝をこれ以上深くしてはいけないのだ。


「ねぇ、エーデル。私先行して偵察してきていいかしら?」


 リゾンが言ってきた。

 リゾンはジョブ【ニンジャ】の能力を鍛える為にも、進んで偵察したいのだろう。


「ダメだ」


 だが俺はリゾンの提案を却下した。


「ブレードワイスのセンサーですでに確認済みだ。無駄に危険を冒す必要は無い」

「そのセンサーってのは絶対なのかしら?もしかしたら、別の魔物がいるとか、そもそもセンサー自体が不完全とかあるでしょう?」


 リゾンは食い下がる。


「村の周辺をスキャンして確認したから間違いない。ベヒモスは1体だけだ」

「あなたも一人で背負おうとするのね」


 そう言ったリゾンは悲しそうな顔をした。


「どういう事だ?」

「いいえ、何でもないわ」


 何でもないようには見えないのだが……


『マスター。リゾン様は前世の兄である織田信長の事を言っているのだと推測します』


 俺と織田信長が似ているというのか?



『マスターと織田信長は、見た目も性格もまるで異なりますが、精神的な部分で一人で背負おうとしている所が似ているのだと思われます』


 一人で背負っている?

 俺は皆がいるから戦えると思っているのだが……


「ねぇ、エーデル。私の経験を積む為に安全な範囲で偵察させてくれないかしら。あなたの指示内で行動するわ」


「んー。分かった、了解だ」


 まぁ、安全な範囲なら頑なに却下する必要も無い。

 うまく言いくるめられてしまった気もするが。

 リゾンには経験を積んで成長して欲しいので、提案を了承した。


「ありがとう、エーデル」


 ベヒモスがいるという場所から500メートル程離れた場所で俺とガベラは待機。

 リゾンが偵察に向かった。


『マスター。緊急事態です。生命反応を発していませんが、ベヒモス以外に何者かがいるようです』


「何っ?」


『マスター。至急リゾン様を追いかけてください』

「ガベラ!行くぞ!」

「えっ?はいっ!」


 俺とガベラはリゾンの向かった方へ走り出した。

 センサーの反応でリゾンに異変は起きていない。


 近くに行くとリゾンは感知スキルを使っている為か、俺達にすぐ気がついた。


「エーデル!何者かがベヒモスと戦ってるわ!」


 リゾンは俺達に状況を伝えてきた。


「!!!」


 リゾンは何かを感知したのか驚いた表情をした。


『マスター。ベヒモスの生命反応が消失しました』


 何が起こっている?

 いい予感はしない。


 俺達はベヒモスのいた場所に到着した。


「!!」


 体長は10メートルくらいだろうか。

 カバを大きくしたような風貌。

 大きな角、鋭い牙、巨大な爪に覆われた4つの足。

 そのベヒモスが横たわっている。


 心臓らしき箇所を貫かれていた。

 だが、それよりも俺の目を奪ったのはベヒモスの貫かれた心臓から多くの血管が伸びており、その血管は別の心臓と繋がっている。


『マスター。魔神の心臓です』


 魔物も魔神の実体化の対象になるのか?


『心臓を持ち血液を循環させる肉体を持った生命体は、魔神の実体化対象となります。魔神達が求めているのは知能である為、人間や魔族を依代として望んでいますが、ベヒモスのような強力な魔物も魔神達は欲しています。単純なパワーだけなら人間や魔族をはるかに凌駕します』


 なるほど、魔神はこのベヒモスを実体化の依代にする為に心臓を貫いたのか。

 そして、ベヒモスの横にいる人影を見る。

 そこに体長2メートル程の白い仮面を被った男がいる。

 何故センサーに生体反応が出なかった?


『マスター。申し訳ございません。先日私が神の神殿と交信した事により、こちら側のデータもアップデートされたようです。あの仮面、光学迷彩とステルス機能があり、ブレードワイスのセンサーでは検知できません』


 という事は、俺のセンサー機能に対策してきたという事か?

 そんな短期間で?


『マスター。この世界でのブレードワイスのセンサー機能は前世と違い魔法技術を応用して私が再構築したものです。探知魔法の対策と同じ要領で構築できる為、元々ある技術の応用と推測されます』


 しかし、俺の対策である事は間違い無いだろ?


『はい。マスター。奴はディオスの追手です』


 戦闘態勢に入る。


「リゾン!ガベラ!あの仮面の男から距離を取れ」


 俺は二人に指示を出した。

 あの仮面の男は明らかに強い。


『貴様を追って来てみたら、よい魔物がいたのでな。アーリマンいやディオス殿に良い土産が手に入った』


 仮面の男はベヒモスの死体を見てそう言った。


『マスター。あの男、直接頭に語りかけています。これは魔神の力が人間の精神を支配している証拠です。魔神の力を最大限に使えますが、技術や集中といった人間の長所は使えません』


 つまり?


『つまりおバカです』


『ブレードワイスよ。このアーリマン四天王の6人の内1人アシュタロス様が貴様の命を貰い受ける。覚悟するがよい』


「………」

「………」

「………」

『………』


 おいっ!Y.U.K.I。今奴は何と言った?


『アーリマン四天王の6人の内の1人アシュタロスだと名乗りました』


 Y.U.K.I!四天王の6人の内の1人とはなんだ?


『理解不能です』


 ですよねーっ!


『マスター。聞いてみてください』


 なにーっ?

 何て無茶振りを!


「おいっ!四天王の6人って何だ?」


『四天王の6人は四天王の6人だ!』


 仮面の男はドヤ顔でそう答えた。

 いや、だから意味分からんってば!


「4人なの?6人なの?どっち?」

『ふっ、愚かな。分からないとは、貴様の知識も底が知れる』


 うおおおぉぉーっ!ムカつくっ!!


「おいっ四天王ってのは4人だから四天王なんだろ?6人って何だ?」

『ふっ、何を言っておる。頭の悪い奴め』


うがあぁぁー!ムカつくっ!!この仮面野郎!ぶっ飛ばしてやるぜーっ!


『マスター。落ち着いてください』


 だってこいつムカつくじゃん!


『マスター。先人達は良い言葉を残してくれております。その言葉で落ち着いてください』


 ふむ?


『バカは論破できない』


 ぐぬうぅ……やむを得まい。


 Y.U.K.I!ゼフィラサンスモードは使えるか?


『使えます』


「行くぞ!ゼフィラサンスモード!」

『了解。魔王ゼフィラサンス・フルパワーモード起動』


 アシュタロスに加えガベラとリゾンも俺を見て驚いている。


 ブレードワイスの関節から溢れ出すように白い炎が噴き出す。


「ブレードエクササンダーパーンチ!」


 俺はアシュタロスに渾身の一撃を放った。


『グボアアアァーッ!』


 直撃した。

 吹っ飛んて後ろの岩に激突する。

 あれ?あんま強くないんじゃない?


『マスター。アシュタロスを名乗る奴は魔神の力によりパワーとスピード、防御力を増しておりますが、魔神に精神を支配されていますので技術や集中といった人間の長所が使えません。魔神が精神を支配している限り、本来の力を発揮できていないと思われます。アシュタロスという高貴な悪魔を名乗っているにも関わらず、その力を使えないとは情けない』


 Y.U.K.Iが呆れている……


『マスター。私はAIゆえに感情は持ちませんが、悪魔としてのアシュタロスが哀れに思えてなりません』


 AIのくせに感情移入してる…


『おのれ、ブレードワイス!いきなりとは卑怯だぞ!』


 アシュタロスの発言は無視して追撃する。


「ソーラーライフル!連射!」


 俺はアシュタロスに容赦ない攻撃を加えていく。


『グボアアァーッ!グボアアァーッ!』


 だが、アシュタロスはソーラーライフルを受けながら立ち上がる。

 ソーラーライフルで撃ち抜かれた箇所はすぐに再生する。

 そして撃ち続けるソーラーライフルを受けながらアシュタロスは飛び上がった。

 ベヒモスの上に飛び乗った。


『ディオス殿にこのまま渡したかったが仕方あるまい。聞いた話より強いようだな』


 アシュタロスの足がベヒモスの肉体と一体化していく。

 人間の肉体も三回り程大きくなり、皮膚が黒くなり鱗の様なものが現れる。

 右手が蛇に変化し、頭から角が生え、背中から翼が現れ、尻からは先端が尖った尻尾が現れる。

 仮面が割れて、額に第三の目が現れた。

 目が赤く光る。


『光栄に思うがいい。このアシュタロスが貴様を本気で殺してやる』


 アシュタロスの右手の蛇の口が開き、そこから魔力が放出され魔法剣となった。


『死ね!ブレードワイス!』


 アシュタロスは俺に向かって飛び掛かって来る。

 アシュタロスの魔力の剣が俺を斬りつける。


 だが遅い!


 サッと避け、カウンターの一撃をお見舞いする。


『グボアアァーッ!』


 直撃をくらわせたが、アシュタロスは鱗や皮膚に守られ、致命傷とはなっていないようだ。


『おのれブレードワイス!魔神アシュタロスの恐ろしさを思い知るがいい!』


 アシュタロスが喋っている間にリゾンが後ろに回り込みミスリルソードで突きを繰り出す。


『グボアアァーッ!』


 リゾンが放った渾身の突きは見事にアシュタロスの背中に突き刺さる。

 アシュタロスの尻尾がリゾンを襲う。

 だが、リゾンは難なく避けた。

 アシュタロスはリゾンに連続攻撃を繰り出すが全て難なく避けている。

 何だ?急にリゾンの動きがよくなっている。

 アシュタロスの動きを全て見切っている感じだ。


『マスター。リゾン様は感知スキルでアシュタロスの動きを把握しています。感知スキルを所持しているリゾン様には今後攻撃をまともに当てる事は難しくなるでしょう』


 なるほど、感知スキルか。

 そして、アシュタロスはリゾンと俺の攻撃を受ける一方になった。

 アシュタロスから焦りの表情が見える。


 そこにアシュタロスの顔面に熱線が直撃する。

 ガベラがドラゴニュート化し、上空から熱線を放ったのだ。

 両掌を向け、熱線を連続して発射する。

 それ、かめは◯波じゃーん!

 両掌から発射される熱線は正確にアシュタロスにヒットする。


『グボアアァーッ!』


 Y.U.K.Iソーラーブレイドだ。


『ソーラーブレイドを可動します。エネルギーチャージ完了しました。いつでもいけます!!』

「ソーラーブレイド!」


 テテテテ♩テテテテ♩テテテテ♩テテテテ♩


「ブレイド・ストライク!」


 アシュタロスに直撃した。


『グボアアァーッ!!』


 今の一撃で、アシュタロスは大ダメージを負った。

 だが、まだ立っている。

 タフな奴だ。

 でかい奴相手にはどうしても剣撃は浅くなる。


 Y.U.K.Iソーラーキャノンを使う。


『マスター。了解です。ソーラーキャノンスタンバイOKです』


「ソーラーライフル!ソーラーブレイド装着!」


 ソーラーライフルにソーラーブレイドを装着してコネクターに接続。


『ソーラーキャノンスタンバイ完了』


「リゾン!離れろっ!」


 俺はリゾンに離れる様に合図した。


「ブレイドソーラーキャノン発射!!」


 ソーラーキャノンがアシュタロスに向かって発射される。


『グボアアァーッ!』


 アシュタロスは避けきれず直撃した。


『おのれ、ブレードワイス!アーリマン四天王はまだいる!首を洗って待っていろ!』


 アシュタロスはそう言い残して、ベヒモスの肉体ごと爆散した。

 後5人いるのか3人いるのかは結局謎のままだが。


「ふぅー、なんとかなったか」


 俺はリゾンとガベラに振り向く。


「大丈夫か?二人とも」

「はい。お陰様で」


 ガベラが答える。


「大丈夫」


 リゾンが答える。


 よし、ミッションコンプリート。

 村に帰るか。


『マスター。ご報告がございます。村人が一人、一部始終を見ておりました。戦闘終了と同時に村に戻っています』


 そうか、村人が見てたのか……。

 覚悟しておく必要があるかもな……。


قەھرىمان


「帰れ化物ーっ!」

「この村から出て行けーっ!」


 村に帰ってくると、村人達は俺達に向かって石を投げてきた。


「何が転生者だ!何が魔族の姫だ!化物の癖に!」


 投げられた石が俺に当たる。


「ちょっと、皆さんやめてくだ……」


 ガベラの言葉を俺が遮る。


「行こう。ガベラ。リゾン」

「で、でも……」


 俺は無視して、リゾンとガベラを連れて村を後にした。


 村を出て、森の中を無言で進む。


「あ、あの……」


 ガベラが何かを言いかけた時、リゾンが俺の前に出てきて俺に向かって言った。


「これでいいの?」


 俺はリゾンに答える。


「ああ、いいんだ」


 俺達は困っていた村人達を助け、そして村人達から化物扱いされ追い出された。

 これで、いいのだ。

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