023 魔王ゼフィラサンス・フルパワーモード
自惚れていた。
俺はこの世界で自分は最強だと思っていた。
神の神殿に来たのも俺の浅はかな判断だ。
危険だとは思っても、心のどこかで俺が負けるはずがないと…
テンマとディオスは俺より遥かに強い。
そんな自惚れが皆を危険に巻き込んでしまった。
逃げれたのは運が良かっただけだ。
『マスター。反省は後ほどお願いします。今はビーゼとナナエムの対処に全力を尽くしましょう。ビーゼとナナエムを何とかすればミッションは達成です』
そうだな。
今は追いかけて来る2人に集中だ。
頼むぜ相棒!
『マスターのお力になれるよう善処します』
遠ざかっていくガベラ達を見ながら、俺は下降していく。
俺が降りて行く姿をビーゼとナナエムは地上を走りながら確認しているようだ。
地上を走って飛んでる俺達を追いかけるとか、どんだけ化け物なんだよ。
テンマの消え際の自信。
こいつらも相当な実力なんだろう。
見た目綺麗な双子の姉ちゃんなのに。
ビーゼとナナエムは、俺の目の前まで来ると立ち止まった。
黙って剣を鞘から抜く。
息切れ一つしていない。
二人同時に斬りかかってきた。
ビーゼが上段から剣を振り下ろす。
避けた瞬間にナナエムが胴を薙ぎにきた。
間一髪で回避したが、その隙をついてビーゼが追撃してくる。
右から袈裟斬りにくるが、避けて反撃。
「ソーラーライフルッ!」
ナナエムに死角からの早撃ち!
直撃するっ!
だが、ナナエムはそれを見ないで避けた。
なんだこいつら?
連携プレイとか、滅茶苦茶うまいぞ。
『マスター。ビーゼとナナエムは感覚機能を共有してます。その為、死角が存在せず反応速度も異常に高いです』
双子だからお互いの感覚もリンクしてるって事か?
『二人共同じ魔神ノーンハスヤの実体化です。ノーンハスヤは双神、つまり双子の神とされています。双子に双子の神を宿らせた事で感覚共有を可能にさせたのでしょう。まだ若いと思われるこの二人は今のうちに倒しておくべきです。放っておくといずれ脅威の存在になり得ます』
そうだよな。今倒しておくべきだろうけど、どうすればいい?
ビーゼとナナエムに対して、俺との戦力差はどのくらいなのだろう。
『単純なパワーや魔力を戦闘力として換算すると、マスターが18,000、ビーゼ13,000、ナナエム13,000となります。余談ですが、ガベラ様2,500、リゾン様750、といったところです。ただしビーゼとナナエムは2人で1人の存在のような動きをしますので、この数値は当てになりません』
……因みにA級冒険者の平均値は?
『A級冒険者の中でも、ずば抜けて高い者がいるので平均値ではなく中央値でお答えします。1,000前後です』
ガベラとリゾンではビーゼとナナエムの足元にも及ばないって事か。
逃がして良かった。
A級冒険者並み以上の実力はあるから逃走中に魔物と遭遇しても何とかなるだろう。
しかし、この2人どうやって倒す?
1人ずつなら何とかなるだろうけど、2人同時はキツい。
正直勝てる気がしない……
『マスター。ただいま神の神殿で収集したデータの解析によりマスターのお役に立てる能力を構築中です。 あと、300秒で完成します。しばし耐え抜いてください』
300秒か……
流れるような2人の攻撃が、だんだん激しさを増していく。
ビーゼの上段からの攻撃は一撃必殺の力を持っている。
俺の攻撃は当たらない。
ビーゼの突きをギリギリで避けた瞬間に、ナナエムが胴薙ぎにくる。
ソーラーブレイドで受け止めて、蹴りを放つとナナエムが後退する。
ビーゼも後ろに下がるが、今度は俺が追撃する。
だがその攻撃はビーゼの剣に防がれた。
くそっ、隙がない! 2対1だから当たり前だが、とにかく連携が上手すぎる。
ビーゼの剣をソーラーブレイドで受け、ナナエムの攻撃を回避すると、またビーゼが攻撃してくる。
『後30秒です』
「ハアァァッ!」
大振りだが、渾身の力を振り絞ったビーゼの一撃をソーラーブレイドで受け止める。
『マスター、あと10秒です』
長い!10秒が長い!
ナナエムの突きが襲ってくる。
ビーゼの剣を受け流しながら後退しつつ回避する。
「しまった!」
ナナエムの突きが三段突きに!
ビーゼの剣を受け流して体勢が無防備になった瞬間に、ナナエムの突きが俺の胸を貫いた。
「ガハッ!」
そのまま、ナナエムは剣を引き抜くと後ろに下がる。ビーゼも剣を収めた。
「ガハッ、ゴホッ!……ハァハァ」
1歩、また1歩と後退すると片膝をつく。
「ガハッ……ハァハァ」
呼吸が……苦しい。心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいに鼓動している。
『3秒、2秒、1秒。マスター、よく耐え抜きました。魔王ゼフィラサンスの全能力を解放します』
胸の辺りから、熱く力が湧き出てくる。これは……なんだ?
『魔王ゼフィラサンス・フルパワーモードです』
何それ?
めちゃくちゃパワーが漲って来た!
胸の辺りから力が湧き出てくる。そのエネルギーはそのまま全身を巡っていき、身体中が熱くなってくる。
『マスターの前前世である魔王の能力は前世では活用しきる事は不可能でした。しかし、今世ではこの世界の力と神の神殿での膨大な情報と魂の回廊へのアクセスにより、前前世の力を最大限に発揮する事が出来るようになりました。簡単に説明すると、マスターは前前世の魔王の力を100%使えるようになったのです』
前前世の力!
魔王だった俺の力!
いける!
貫かれた胸も回復している。
ナナエムとビーゼは俺の異変を察して剣を構え直した。
「いくぞ!!」
ナナエムとの間合いを一瞬にして詰める。そして剣を手刀で叩き折った。
「!?」
ナナエムが驚いている間にビーゼの剣も破壊して、そのままの勢いで2人同時に殴り飛ばした。
『マスター。報告が遅くなりましたが、そろそろサルワのコピーが復活します。今となっては脅威ではありませんが、一応用心してください』
辺りに霧が漂って人型を構築していく。
『我はサルワ、秩序を破壊する神なり!』
同時にナナエムとビーゼが立ち上がった。
『マスター。先程神の神殿で見たディオスの技もラーニングしています。現在のマスターであれば、使用が可能です』
マジ言ってんの?
危険を冒して神の神殿に行った恩恵デカ過ぎ!!
脳内に技の繰り出し方のイメージが湧き上がる。
ちょっと厨二病チックな技だけど、使ってみよう。
「森羅万象の歪みを知れ!コズミックディストーション!!」
叫びながらソーラーブレイドを振り下ろす。
ビーゼ、ナナエム、サルワに眩い光の柱が降り注ぐ。
柱の色が違うけど属性が違うみたいだ。
3つの柱がクレーターを作り出す威力。
3人は回避できずに、まともにくらった。
サルワは完全に消滅した。
ビーゼとナナエムは吹っ飛んで、地面に叩き付けられる。
「ぐっ!」
「……ッ!」
2人はそのまま気を失ったようだ。
「よしっ!何とか撃退したな」
『マスター。ビーゼとナナエムの止めを刺してください』
やだよ!仲間には出来なくても、殺すつもりはない。
『マスターの甘すぎる考えは理解していますが、敵に情けをかける余裕はありません。ここで殺さないと後々の災いとなるのは確実です。ビーゼとナナエムはまだ強くなるでしょう。今、ここで殺しておくべきです』
俺ももっと強くなればいいだろ。
『マスターは甘いですね。分かりました』
「いつでも相手になってやる。かかって来い」
ビーゼとナナエムは気を失っているので、聞こえているかは微妙だが、俺はそう言い残して立ち去った。
قەھرىمان
Y.U.K.I今なら神の神殿のディオスも倒せるか?
ビーゼとナナエムを倒した後、俺はガベラとリゾンをセンサーで追いかけながらY.U.K.Iに尋ねた。
『ディオスは、魔王ゼフィラサンス・フルパワーモードのマスターであっても、倒せる確率は5%未満となります。また、あくまでも現在所持のデータから導き出した確率です。ディオスの能力は未知数です』
強すぎるだろ、ディオス…
『ディオスは、アンラ・マンユが3,000年分のエネルギーを集めて作った分身体の魔神アーリマンを実体化させた存在です。アンラ・マンユ本体と同等か、それ以上の力を持っています』
マジか……
なぁ、Y.U.K.I俺はもっと強くなれるのか?
『マスター。なれるのではなく、必ずなるべきです。それがマスターの望む事であり、この世界の希望なのですから』
そうだな。そうなるように努力するよ。
『マスター。一つお願いがございます』
なんだ?Y.U.K.Iがお願いなんてめずらしいな。
『マスター。どうか一人で背負わないでください。この世界では必ず同じ志を持った仲間が現れます。もちろんガベラ様達やネモア様達も大切な仲間ですが、強さも含めてマスターが頼れる存在となると少し難しいでしょう。この世界ではマスターと同等かそれ以上の力を持つ者と未来に巡り合う事になるでしょう』
そうだな。ガベラ達もネモア達も頼れる仲間だが、俺と同じくらい強くて頼れる仲間となると、かなりハードルが高くなるもんな。
前世ではそんな仲間はいなかったけど、いるのかなこの世界には。
『神の神殿で得たデータから、善神と共に戦うであろう転生者の情報を得ました。現時点のデータで1人該当します。その者は、この世界で更に鍛錬を積み、仲間を作り魔神達との戦いに身を投じていくでしょう』
やっぱり他にも転生者っているんだ。どんな奴なのかな?
『名はムサシ。宮本武蔵が転生した者です』
宮本武蔵って、あの剣豪の!?!?
そんな奴がこの世界に転生してるのか!?なんか、凄い気になるな。
『意識せずとも、いずれ出会う事になるでしょう。マスターもムサシも、その名は嫌でも世界に知れ渡る事になります。お互いに、良い関係を築ける事を願います』
確かに嫌でも有名になりそうだ。
『マスター、前を見てください』
Y.U.K.Iの声を聞いて前方を見ると、ガベラとリゾンが涙目でこちらに駆け寄ってきた。
「エーデル様!」
「よかった。エーデル!」
2人は俺の胸の中に飛び込んできた。
と言っても俺の体はまだ8歳だ。2人を受け止める事は出来なかったけど、なんとか踏ん張って尻もちをつかずに済んだ。
「2人とも、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
ガベラが目に涙を溜めながら答えた。
リゾンは号泣している。
このひと時の間に兄の信長と会い、強烈な魔神と遭遇し、そして命の危険に晒された。
リゾンにとっては悪夢そのものだろう。
連れて来た事を少し後悔してしまう…
まぁ、この状況、前もって知っていたとしても、リゾンは絶対来ると言っただろうけど。
リゾンはテンマを止める為に、生きていくのだろうか?
でもそれは今聞くべきではなさそうだ。
スノーク、カミール、アイリスと合流しなければ。
影に向かって話し掛けてみると、スノークと通信できた。
便利すぎるスノークのネクロマンサースキル。
スノーク達はテウルの背中で高速移動中。
テウルがカミールの命令を聞かないらしい。
どうやら一時的には魔物使いの王のカミールより、ドラゴンナイトのガベラの命令の方がドラゴンには優先されるらしい。
ガベラがテウルに目一杯飛んで逃げろと命令したようだ。
おそらくこのまま魔力が尽きるまで飛び続けるだろうとの事。
『つまり、スノーク様達は2,000キロメートル程先に行くという事です』
だいぶ離れてしまった。
俺達は一昨日往路で泊まったカドダールという街で落ち合う事にした。
スノーク達はカドダールにすぐ到着するだろうけど、俺達はここからカドダールまで1,500キロは離れている。
テウルで迎えに来て貰う方が早いのだが、俺の経験上地の理に詳しく無い場所での合流は危険。
なので、スノーク達にはカドダールで待っていて貰う事にしたのだ。
少なくとも神の神殿から数百キロは離れた場所で合流するべきだ。
まだ、追手とか来るかもしれないから。
テウルで迎えに来てもらうならもう少し離れてからだろう。
往路で売って来た魔石で資金は大量にあるしね。
………
俺、無一文だけど……
俺達お金持ってる?
「ガベラ、リゾン。お金持っているか?」
ハッとした顔をして首を振る2人……
ええっ?
お金の管理は、ガベラとリゾンとアイリスに分けていたんだよな?
「バックはテウルの背中に載せたままでして…」
「わたしも…」
無一文で1,500キロの旅だと?
こうして俺達は、お金も食料も無いまま、徒歩でカドダールを目指す事になったのだった。
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ガンダム試作1号機ゼフィラ ン サ ス
わたくし、30年以上ゼフィラ サ ン スだと思っていました…
そんなわけで花の名前から名前を取っている《異世界行っても変身ヒーロー》では
折角なので前前世の魔王はゼフィラサンスと名付けております。
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お読みいただきありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゜
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