021 こんな化け物がこの世界にいるなんて
朝早く起き、朝食を済ませた。
神の神殿に向かう。
通常、神の神殿に続く階段を登らなければいけないが、テウルの背中に乗って空から向かう。
出発前に俺達は話合った。
「神の神殿は、魔神に占領されている可能性がある。カミール、いつでも引き返せるように準備しておいてくれ」
カミールは静かに頷く。
「上空から俺が姿を消して先行し様子を見る。もし異変があったら俺に構わず引き返して欲しい。これは絶対命令だから頼む」
ガベラは真剣な表情で答えた。
「分かりました。ですが私も仲間です!最後まで一緒にいます!!」
「駄目だ。最悪俺一人なら何とかなる状況でも、お前達がいたら足手纏いに成りかねない」
「「「!!!!」」」
皆が俺の言葉に絶句する。
「私達が足手纏い?いくら貴方が強いからって足手纏いは無いでしょう!?私達だってそれなり戦えるわ!!」
アイリスが抗議する。
「チェンジ・ブレード」
「ソーラーライフルッ!」
俺はブレードワイスに変身してソーラーライフルを少し離れた岩山に放つ。
スコーン!と綺麗な穴が出来上がる。
「今の動き。目で追えた?」
皆、無言である。
俺の変身してからの一連の動作は全く目で追えていない。
突然離れた岩山に穴が空き、俺がソーラーライフルを撃った後の姿勢しか見えていない。
いくら劇的に強くなったガベラ達でも、ブレードワイスと比べると残念ながら実力差がありすぎる。
これが現実なのだ。
「皆が強くなるのは、まだまだ先の話だよ。俺は皆を大事な仲間だと思っている。だからこそ、最悪の時は言う事を聞いて欲しい」
ガベラ・スノーク・カミールは急激に強くなった。
こういう状況は勘違いをしやすい。
自分の強さに自信を持ち過ぎてしまうのだ。
その慢心を突かれて命を落とす者は沢山いる。
ガベラは目を真っ赤にして俺を見ている。
スノークは歯を食い縛って俯いている。
カミールは下唇を噛み締めた。
リゾンは危険に飛び込んでしまう性格だ。
特に織田信長絡みになれば尚更の事。
新しい力を手に入れた事で気持ちが大きくなっている。
アイリスはA級のプライドがある。
人間と魔族のハーフとして乗り越えてきた事も自信になっているだろう。
だが、そのプライドと自信は現場の見極めを甘くしてしまう事があるかもしれない。
「分かったわ。あなたの力が絶対なのは。でも、あなたこそ無理はしないって約束なさい!!いい?」
アイリスが俺に詰め寄ってくる。
「あぁ、勿論さ。じゃ、そろそろ行くぞ」
قەھرىمان
テウルの背中に乗り、神の神殿50キロ以内に近付く。
センサー範囲内に入った。
生体反応!神殿の中に何かいる。
2人か…
1人は強力な魔力を感じ、もう1人の魔力は弱い。
『マスター。魔力が弱い方ですが、魔力を抑えている可能性があります』
抑えてる?
『それともう一つ気になる事があります。何かに魔力が収束しています。恐らく、魔神の心臓です』
なんだとっ?魔神の心臓だと!?
『現在、魔神の心臓を作っている最中だと推測できます』
まさか、こんなところでクーデターの全貌が分かるかもしれないとは…
簡単には引き返せないようだ。
「カミール、なるべく上昇してくれ」
「はいなのです」
「ワイスフェイドオプティクス」
「わ!本当に姿が消えた!」
かなり近くに来たので俺が潜入する為に姿を消した。
スノークが驚いて声を漏らす。
「いいか。俺が先行して潜入するからお前らは近くで待機だ。空中で旋回しながら合図があるまで待っていてくれ」
「了解なのです」
「エーデルに影を忍ばせてある。影に向かって話してくれれば俺に聞こえる」
スノークのネクロマンサー能力は凄いと思う。
「じゃあ、行ってくる」
俺はステルス機能を使って透明化したまま神の神殿に潜入した。
神殿内に入るとすぐ広いホールになっている。
柱で屋根を支えていて、神殿内でも外の景色はよく見える。
普通の状態なら美しい景色が一望出来て感動するところだ。
だが、禍々しい気配が充満していて緊張感が強い。
『マスター。神の神殿は神と交信出来る場所で間違いありません。現在神との交信を開始し大量のデータが送られてきています。莫大なデータ量です。解析には時間が掛かりそうです。データの受信をストップしますか?』
それが最大の目的。ストップしてしまったら、ここに来た意味がない。
データは必要だから可能な限り集めてくれ。
『了解です。引き続きデータを収集致します』
神の神殿を奥に進むと壇上に心臓があり魔力が収束されて脈打っている。
壇上の近くに先程察知した2人が立っている。
1人は渋いおっさん。
あれはヤバいな。
化け物だ…
もう1人は子供。
あの子供が魔力が弱い方か……。
子供の方は魔力の放出を止めているが、明らかに強い雰囲気を持っている。
12〜13歳ぐらいだろうか。
目つきが鋭い。
転生者か?
というか、あれ日本刀だよな。
ちょっと大きいけど間違いない。
縄の帯に刀を差している。
服装も和服っぽい。
嫌な予感しかしない…
あれは何だ?
像が壊れた後のような残骸が置いてある。
「ディオス。何が宿った?」
「アテナだ」
「ほう。それは興味深いのう。戦いと知恵の女神だったな」
「そうだ。こちらに完全に引き込むには時間が掛かるだろう。だが、心臓には宿った。後はこれを使って実体化させればよい」
どういう事だ?
あの禍々しい心臓にアテナが宿った?
アテナってどう考えても善い神様だよな。
善神を悪神に堕とすって、そんなメジャーな神様堕としてしまうのか?
Y.U.K.I何か分かるか?
『111001111000111110111110111001011001110010101000111001001011101010100100111001001011111110100001111001001011100010101101』
え?Y.U.K.Iさん?
『失礼致しました。回答可能になりました。アテナはギリシャ神話に出てくる女神で戦闘と知略に長けた神と言われています。あの心臓に宿らされ、魔神としてこの世界に召喚されたという事になります。召喚したのはディオスと呼ばれた男。魔神アーリマンが実体化した姿です。アーリマンとはアンラ・マンユの別名ですが、現在は別個体として存在しています。分かりやすく例えると双子のようなものでしょうか。しかし、同一の力を持った存在と言っても過言ではありません』
情報多っっ!
神の神殿との交信でデータ量が増えてるのか。
それよりも…
そこにラスボスの片割れがいるわけね。
『マスター。もう一人の子供の方ですが、魔神サルワが実体化した姿です。ですが、サルワが逆にあの子供に完全支配されているようです。非常に危険です。ご注意下さい』
…………マジですか。
魔神サルワを完全支配ってヤバくないか。
『サルワはアンラ・マンユの仲間6柱の魔神の1柱。悪神と呼ばれる存在で秩序の破壊を司る魔神でした。破壊神の力を宿した子供という事です。この世界で最強格の力を持っています』
……厄介極まり無いんですけれど!!
「ディオス。アテナが心臓に宿りきるのに後どれほどかかる?」
「5分程必要になる。その間に邪魔されれば失敗だ」
「ギリシャ系統の神の繋がりは初めてだったな。逃すには惜しい。儂が相手をするから集中しろ」
子供の方が日本刀を抜いた?
俺の方を見る。
馬鹿な!バレている?
「ワイスフェイドオプティクス解除!」
「ソーラーブレイド!」
『ソーラーブレイドを可動します。エネルギーチャージ完了しました』
テテテテ♩テテテテ♩テテテテ♩テテテテ♩
「なんだお主?奇怪な格好に奇妙な武器じゃのう。見たこともないぞ。それにその音は何だ?」
子供が近付いてくる。
速い!!
ガキィイインッ!!!
ソーラープライドと鍔迫り合いになる。
速すぎるし重い!!
コイツ何者だ?
咄嗟に後ろに飛ぶ。
あれだけのスピードなら距離をとらないとダメか。
「その音はなんなのだ!?儂の唄と同じ能力か?」
唄だと……
どういうことだ。
俺はソーラーブレイドを構え直す。
子供は不敵な笑みを浮かべながら、刀を横に構えた。
「人間五十年…下天の内をくらぶれば夢幻のごとくなり……」
なっ、詠唱を始めた。しかもそれは……。
『マスター。あの子供の唄、敦盛です。一句毎に莫大な魔力が蓄積されています!』
マジで、ヤバイ。
これは、間違いなく一撃必殺の技が来る。
唄い終わる前に何とかしないと。
「ブレイド・ストライク!」
俺が必殺技を発動すると同時に、目の前の子供は刀を振り上げた。
「天魔斬!!」
バギィィィィン!
ソーラーブレイドと子供の刀がぶつかり合う。
凄まじい衝撃で手が痺れる。
そのまま弾き飛ばされるが、なんとか体勢を立て直す。
だが、子供の方は崩れることなくこっちを見据えている。
撃ち負けた。
ブレイド・ストライクが撃ち負けただと?
「おい、テンマ!!衝撃が強すぎんだろ。心臓に集中しろと言ったのお前だろ」
「カッカッカ!思ったより強かったのでな。さらに手加減するとしよう。それにしてもお主、面白いのう。今のを受けて立つとは。カカカカカッ」
遊ばれている…
くそっ、完全に負けてるじゃないか。
こんな化け物がこの世界にいるなんて。
そして、テンマと呼ばれたが、こいつ間違い無い。
『マスターの推測通りです。この子供、織田信長が転生した姿です』
やはり織田信長か。
くそ、厄介極まりない。




