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019 神の神殿って何?

「いらっしゃいませっ」

「あーーっ!!」


 早速綺麗なお姉さんが気づいて大きな声を出した。


「やばっ!」


 演技で逃げるふりをする。


「待って君達!!」


 お客が一斉にこっちを見る。

 皆驚いている。そりゃそうだよね。こんな小さな子供が逃げてるんだもん。


「な、何ですか?僕達は別に悪い事したわけでは…」


 いや問答無用で冒険者を蹴りで気絶させるのは悪い事かもしれない…


「お願い!ちょっとだけでも話しをさせてくれないかしら!?」


 俺達は渋々席に着く。

 お姉さんに会いに来たのだが、演技である。

 変な人だったり、思想が危ない人だと困ってしまうからだ。

 一応警戒しておかないと。


「私の名前はアイリス。単刀直入に聞くけど、貴方は何者で何故魔族の子と一緒にいるのかしら?」


 やはりこのお姉さんは人間と魔族のハーフなのだろうか?

 俺が魔族の子達と行動しているのが不思議らしい。


「出来れば何故それを聞くのか理由を教えていただけないでしょうか。僕が魔族と一緒にいるのは理由があり、それを話す事はリスクを背負う事になるんです。なので、そちらの事情を話してくれませんかね?」


 俺は冷静に質問に対して疑問をぶつける。

 アイリスと名乗ったお姉さんは、俺の言葉に驚いていた。

 まぁ、8歳の子供にしか見えない俺の口から、いきなりそんな言葉が出てきたのだから無理もない。


「ごめんなさい。そうよね。まずこちらの話をしないといけないわよね」

「俺の名前はエーデル。転生者です。これだけは明かしておきますね」

「!!!!」


 今度はかなり驚いたようだ。

 口をパクパクさせている。


「どうぞ、アイリスさん」


 俺は掌を向け話を促す。


「そ、そうね。私の名前はアイリス…は言ったわね…ごめんなさい、動揺してしまったわ。私は冒険者、A級ライセーサーよ。そして人族と魔族のハーフ。ジョブはメサイア。私の夢は人族と魔族の垣根を取り払い、共に手をとり合い生きていけるような世界を作る事。その為には魔族は敵ではないと伝えなければいけないと思っているの。貴方が、エーデル君が魔族と一緒に行動しているのが気になって話しをしたいと思ったのよ」


 彼女は真剣だった。

 嘘偽りの無い心からの声のように感じる。

 彼女の言う通り、本当に世界平和を望んでいるのだろう。

 だからこそ、彼女になら本当の事を言っても良いかもしれない。

 いや、言わなければならないのだと思う。


「僕達も魔族差別を無くす為に活動しています。食事が終わったら僕達のアジトに来てくれませんか?そこでお話をさせて下さい!」


 アイリスは快く了承してくれた。

 アジトなんて言ってしまったが、ラシューリ伯爵邸だけどいいよね。

 食事が終わった後、街の郊外に出てテウルに乗ってラシューリ伯爵邸に戻る。

 アイリスはまたも驚いていた。


قەھرىمان


「なるほど。まずはエーデル君が貿易の組織を作って魔族差別を無くす活動をしていくのね」


 すっかり意気投合した俺達とアイリス。

 目指す目的が同じという事もあり、とても話が弾む。

 アイリスには仲間はいないらしい。

 一人で活動してA級になるとは凄い事だ。

 年齢は17歳。

 思ったより若かった。


「でも、せめて10歳なら冒険者になれるのに、本格的な活動はそれからよね」


 アイリスの言う通りである。

 10歳で冒険者になればライセンスを貰える。

 ギルドカードは身分証明書に成り得るので、持っていれば様々な場所で有効に活用できるだろう。

 他国との取引を行うのはもちろん、他国の図書館や資料室の利用も可能になるはずだ。

 後一年半程は本格的な活動を始められない。


「まぁ、今のうちに色々な国や街を訪れて見識を深める事は大切だよな」


 俺の言葉にアイリスは考え事をしている。


「魔石以外にもこの国で売れる物は無いかしら。私はこの国には初めて来たのだけど、稀にこの魔族の国パラクーパに訪れる人族の冒険者はいるわ。目的はミスリル製の武器防具よ。ミスリル製の武器防具の取引が出来ればいいけど、高すぎるから無理ね……」


 Y.U.K.Iそもそもミスリルは何で高いんだ?


『マスター。ミスリルは魔石と鉄の合金で、魔石の使用率が非常に高く、30パーセント程魔石を含有します。非常に硬く軽いのですが魔石の使用量で金額が上がってしまいます』


 30パーセント?

 つまり1キロのミスリルソードは300グラム位か……。


『マスター。本日は相場以上に買い取って貰えましたが、魔石相場は1グラム当たり2万ゴールド程度ですので、ミスリルソードの魔石使用量は600万ゴールド程になります。以前レスナ様とセンカ様が購入されたミスリルソードは800万ゴールドでしたので、加工料や販売手数料等考えますとあまり割の良い商売ではありません』


 そりゃそうだよな。

 何か良い方法は無いかな……


『なお、ミスリル金属の魔石含有率は0.5パーセントでも十分であり、パフォーマンスは0.98パーセントしか低下しません』


 Y.U.K.Iの話を聞いてズッコケた。

 Y.U.K.Iの言葉は俺にしか聞こえないので、周りからは驚かれているが、気にしない事にする。

 1パーセントのパフォーマンス低下なんて分からないだろっ!


『マスター。ミスリル製の武器防具を購入できる者は熟練者が多く、そのような者は僅かな差も見逃さないでしょう』


 ん〜…そうかなぁ…

 何か良い案ないかな?

 魔石ばかり売ってると魔石の相場が下がる。

 需要が高まるまで大量に売りたく無い。

 そもそも、大量に売るにはライセンスなり国同士の貿易とか許可が必要だろう。

 だが、必要な条件が揃うまで何もしないわけにもいかない。


『マスター。新しい合金を考えてみてはいかがでしょうか?』


 あ、それいいかも。

 ミスリル並みの金属でミスリルより安いなら売れるかもしれない。

 それにしても、相変わらず高性能なAIだよ。

 俺の考えを先読みして提案してくれる。


『ラシューリ伯爵より頂戴した鉱山では魔石の他にタングステンに似た希少金属が大量に産出されることを確認しております。この金属に魔石を0.5パーセント含めた合金を作ってみるのはどうでしょうか。ラシューリ領でしか採掘出来ない事は重要なポイントになると思います。ラシューリー領の特産として、新たな産業に発展させる事が可能かもしれません。ただし問題は加工に高火力が必要な事。ミスリル程の魔力伝導率は見込めない事です』


 なるほどね。

 タングステンって確か融点が3,000度以上だったはず。

 硬いわ溶けないわで先人達は加工に諦めたのかな?

 でも、そんなの俺がどうこうできる事でも無いのでは…


『マスター。ブレードワイスに変身すれば可能です。最大出力のソーラーブレイドなら切断も可能です。なお、鉱石はタングステンではなく、タングステンに似た別の物質と思われます』


 ふむ。まぁ、やってみますか。

 まず、リゾンとアイリスにブレードワイスの事と、この際皆にY.U.K.Iの事を話しておくか。


 目の前で変身してリゾンとアイリスは目を丸くしている。

 更にY.U.K.Iの話をするのだが、機械とかAIの理解が出来ず《神様と通信出来る》と説明する事にする。


「えっ?神の神殿でもないのに、神様と会話が出来るの?」


 アイリスの言葉に眉がピクッと動く。


 何だ?神の神殿って?また新しいワードが出てきてしまったぞ。

 聞くべきか?スルーすべきなのか……。

 話が進まないからスルーしたいところだが、凄く引っ掛かる単語なので聞いておくことにする。


「なあ、その神の神殿ってなんだい?」

「うーん…。よく分からないのよね…。言い伝えでは神と会話が出来るって言うのだけど、言い伝えが人族と魔族で違うの。人族は世界に一つだけあると言われて、魔族では世界に六つあると言われているわ」


 おい!なんか嫌な雰囲気になってきたよ。


「皆は知ってる?神の神殿」

「アイリスさんと同じ程度の事くらいしか知らないわ」


 リゾンが答えた。

 ガベラ、スノーク、カミールも同様のようだ。


『マスター。現在の私のデータバンクにはそのような情報は存在しません。ただ六ヶ所という数字と神と交信できる場所とで推測すると、アフラ・マズダー以外の6の善神と数が一致します。これは何らかの関係がある可能性があります。調査が必要と考えます』


 Y.U.K.Iさんが何か言い出した。

 どうしようか……。


「その神の神殿の場所は分かるの?」

「うーん。2ヶ所ね。1ヶ所は人族の言い伝えの通りのブラッサン大陸の北部。もう1ヶ所は南スレカ大陸の東の岬にあるとされているんだけど……」


 南スレカ大陸…

 先程までいた大陸だ…

 何か引っ掛かる。

 何故、人間と魔族でそこまで認識が違うんだろう。

 行ってみるべきか?

 危険な気がする。


 いや、行くべきだ。

 ヒーローの勘が言っている。


「詳しい場所は分かる?」


 近隣諸国の地図を開き確認する。

 南スレカ大陸の東の岬、ここから4,500キロ程離れているようだ。

 テウルの最高時速500キロで9時間…


「カミール、テウルは何時間くらい飛べるんだ?」

「一日5時間程で魔力が尽きるのです。魔力が尽きると一日程休まなければならないのです」


 飛竜の上に5時間乗り続けるのも無理があるし、3日くらい掛けていくのが妥当なところか。

 合金の開発はすぐにどうこう出来るものでもないし、ある程度魔石を売ったら暫くやる事も無くなってしまう。

 どうせ、俺達は近隣諸国を旅しようと思っているんだ。

 途中の街に寄って魔石を売りつつ、神の神殿を目指すとするか。


「という明日からのプランはどうだろう?」

「はい。それでいいと思うのです」

「それは、私も一緒でいいのよね?」


 アイリスが期待を込めて俺を見つめている。


「勿論だ。皆で行こう!」

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