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017 魔石を採掘しよう

 夕食前に俺はサンパールの村に戻って来た。


「エーデルッ!」


 レスナが俺を見つけるやいなや抱きついてきた。

 そんなに仲良かったっけか?

 まだ昨日の今日だよ。

 でも、ちょっと嬉しいかも。


「ごめんよ。色々あって遅くなった。心配かけたよね。大丈夫だったかい?」

「ううん。ちょうど良かった。魔族の子達は?」

「今はラシューリ伯爵邸にいる。俺も夕食には戻らないと」

「そっかぁ。あのね、わたし達明日村から旅立つの」

「えぇ!? そうなの?」

「村長が首都マカレに呼び出されて、それの付き添いなんだ。ネモ兄とアリウムとセンカが正式な護衛で、わたしとレニューが見習いで付き添いをするんだ。それで、もう明日には出発しないといけなくて……」

「そっか…皆は?」

「村長の家にいるわ。呼ぼうか?」

「そうだね。顔ぐらい見せておかないと。俺が行くよ」


「エーデルッ!」


 ネモアが抱きつこうとするのをサッと避けた。

 避けられた事がショックだったようで涙目になっている。

 そこまでかっ?


 姉のレスナに抱きつかれるのはいいが、兄のネモアだと嫌だ。


「どうして避けるんだ。僕達兄弟じゃないか。酷い奴め~」

「男に抱きつかれても嬉しくないんだよっ」


 俺はそう言ってから、リビングに向かう。


 リビングでは、センカ、レニュー、アリウムがお茶をしていた。


「エーデル!」

「エーデル君!」

「皆、大袈裟だよ。昨日の今日なのに」

「大袈裟なもんか、最悪もう会えないかも知れないって思ってたんだぞ。無事で何よりさ」

「ほんと、ずっと、エーデル1人に背合わせてしまったって、後悔ばかりしてたのよ。無事に帰って来てくれて本当によかった」

「おかえりなさい。エーデル君」


 本当にいい奴らだ、このパーティメンバーは。

 改めて思うけど、やっぱり好きだぜ。


「ただ、俺達は明日村を出ることになった。だから、暫くはお別れになると思う。次に会えるのは数ヶ月後かな」


 アリウムは寂しげだったが、すぐに笑顔を見せた。


「俺もガベラ達と暫く旅に出る事になったから、すれ違うとなかなか会えないかもしれない。でも俺は10歳になったら冒険者になりたいから、アリウムしっかりA級になってくれよ」


「実の兄に期待はしないのか〜?」


 ネモアの一言に皆で笑った。

 その後、村長と話をして村を後にした。

 村長は首都マカレに行くことで身の潔白を証明できるとの事。


 家族達とも会いたかったけど、そろそろ戻らないと夕食の時間に間に合わない。

 いつでも戻って来れるから、また今度ゆっくり話せば良いだろう。


قەھرىمان


「私は、やはりこの国を豊かにしたいです。クーデターの事も何とかしたいと思いますが、一番と言えば、国民達が飢えずに済むよう、食料問題を解決する事です」

「俺も一番といえばこの国の食糧問題を解決したい」

「私は皆で楽しく暮らしたいのです」

「私は世界を色々見て回りたい。もちろん平和が一番だけど」


 ふむふむ。

 旅に出る前に皆で旅の目的を明確にしようと話し合っている。

 リゾンは、まぁ、兄を探したいってのが一番なんだろうけど…


 クーデターも食糧問題が解決すれば少しは良くなるんじゃないだろうか。

 クーデターの全容も目的も一切分からないのだが。

 でもクーデターというのは普通なら政変を意図するはず。

 クーデターに加わる人々は政変を求めているというわけだ。


 しかし、政治が変わったところで国が豊かになるわけでは無い。

 問題は山脈に囲まれたこの国の食糧自給率の低さだ。


 結局のところ、政治は経済に従属する。

 まぁ、日本だって同じ様なものだったんだけどね。

 家庭の収入の範囲でしか家庭のルールは決められないのと一緒で、国の経済収入の範囲内でしか政治は出来ない。

 日本が貿易で経済を発展させる事でしか、良い政治を行えないのと一緒で、この魔族の国パラクーパも経済を発展させる。つまり貿易によって繁栄していくしかない。

 だが、他国との貿易は魔族差別であまり行われていない。

 魔族差別を無くすってのが理想的だが、すぐには難しいと思う。

 旅の目的としては、この魔族の国パラクーパと近隣諸国を周り、クーデターを調べ貿易の糸口を見つける事かな。


 Y.U.K.I何か良い案無い?


『マスター。会社を作ってみてはどうでしょうか』


 へっ!? 何それ? どういうことよ。


『この世界では、ギルドという組合はありますが、会社組織は聞いた事がありません。人族と魔族が共に手を取り合うには、共通の組織が必要と考えます。その第一歩として、貿易会社を起業してみるのが良いのではないかと考えました。勿論、最初は小さな規模でも良いでしょうし、社長はマスターが務めればよいかと存じ上げます』


 確かにそれは面白いかもしれないな。

 だが、まだ8歳の俺にそんな事が出来るんだろうか。

 ビジネスには信用が必要だろ。


『問題ございません。建前としての人物を雇用するという方法も可能です。人族の商人ジョブを持った人材を雇えばいいだけです。豊富な魔石を売れば資金に困ることも無いと思われます。それに、私のサポートがあれば世界の魔石の相場をコントロールすることも可能です』


 世界の魔石相場のコントロール……なんか凄いな。

 って事は、まずの目標は商人を仲間にすることだよな。


「という事で商人の仲間を探そうと思うんだけど、どうかな?」

「人族の商人って事ですよね。大丈夫なのでしょうか?」

「近隣諸国を周りながら私達の仲間になってくれるような人物を探すのは賛成だけど、もし、それが出来ない場合は、どうやって商売をするつもりかしら?」


 うーむ。

 考えてなかった。

 Y.U.K.Iどう?


『マスター。最悪15歳になった時に冒険者登録をして商人と取引をすれば良いと思います。しかし、杞憂かと思われます。魔族差別は根深いとはいえビジネスチャンスを見逃さない者も多いはずです。チャンスを掴む者は固定概念に囚われず、柔軟な発想が出来る者の可能性が高いと推測できます』


 成程。

 という事を皆に説明した。


「そういうもんなのか〜」


 スノークは理解しているのかどうか分からないけど、一応納得してくれたようだ。

 正義の味方、スーパーヒーローが会社の社長となり、悪い奴らを倒しながら魔族差別を無くしていく物語。

 いかん、ワクテカしてきた。

 早速、行動開始だ!


قەھرىمان


「それで、私に相談とはなんだろう。エーデル殿」


 ラシューリ伯爵に謁見して相談したいことがあるから時間を作って欲しいとお願いしたら快く引き受けてくれた。


「実は資金繰りの為に魔石を大量に手に入れたく思い、自由に魔石を掘れる鉱山を探しているのですが、心当たりありませんかね?」

「ふっ、その程度ならお安い御用だよ。君には恩がある。なんでも言ってくれ!」


 ラシューリ伯爵はそう言ってくれたのだが、とんでもないスケールの話が返ってきた。

 何と山脈の一角を丸々くれると言うではないか。

 この魔族の国パラクーパの魔石の豊富な理由は、山頂を境に魔族領側の方が魔石が多く採掘できるらしい。

 それは、魔族が魔力量が多い事に関係しているようである。


 早速その山に行ってみた。

 こんなに広大な土地が無料で手に入るなんて、俺は恵まれ過ぎではないだろうか。

 まあ、ちゃんと税金払うようには言われたけどね。

 広さは東京23区くらいありそうだ。

 鉱山として、良質な鉱石が取れる場所なのは間違い無いらしいのだが、他の鉱山に人手を取られて未開発で手付かずになっているのだと。


 ドゴーーーーンッ!!


 考え中の俺に構わず、カミールがトリ子を呼び出し、穴をあけているようだ。


 ガンッガンッガンッ!!


 スノークが大量の影を出してツルハシで掘り進めていた。

 そのツルハシは何処から持ってきたんだよ? ってか、2人ともやる気満々である。

 大型掘削マシーンと化したトリ子と数百人の採掘部隊の影が出来上がっていた。


 俺とガベラとリゾンは呆然として見守るしか無かった。

 そしてもっと原石の加工が大変な作業になると思っていたが、案外簡単に掘り出された。

 どうやらここはかなり良いところのようで、沢山の魔石が手に入ってしまった。

 これは嬉しい誤算。

 暫くは資金面は問題なさそうである。

 それにしても、ここは本当に人が居ないなぁ。

 街まで結構距離あるみたいだし。


「1割をラシューリ伯爵に献上するとしても、残り9割りも貰っちゃっていいのかな?」


 いくらくらいの価値なんだろう。


『マスター。換算すると、約20億ゴールドになります』


 え!? 20億だって?

 一瞬で大金持ちになってしまったぞ。

 取り敢えずこの魔石を明日人間の街へ持って行って換金してみよう。

 良い商人と出会えるといいんだけど。

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