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014 大空の支配者

「エーデル様、この先に飛竜の巣があるみたいです」


 スノークが指差す方向には、岩山があった。

 岩山の上に飛竜の巣があるようだ。


「この山はトリ子では登れ無いなぁ。仕方がない、降りて行くか」


 トリ子の背中から降りると、カミールはトリ子を魔石に宿した。


 飛竜を使役出来れば劇的に移動時間を短縮できる。

 何としてもカミールには飛行系魔物を使役して欲しいものだ。

 運良く4匹、もしくは全員乗れるくらいのデカい奴だといいな。

 そう言えば、ドラゴンナイトのガベラでも使役出来るのかな?


 岩山を登って行く。

 高さは300メートルくらいありそうだ。

 所々坂道になっているので楽に登れた。

 頂上付近に来ると、野球場ほどの開けた場所に出た。

 真ん中に藁や木の枝が敷き詰められている。

 巣なのかな。

 あ、卵がある。

 ん?卵?

 魔物って魔力が集まって出来る存在だよねぇ。

 Y.U.K.Iあの卵は何だと思う。


『マスター。高確率で飛竜の卵と推測できます。魔力とは、量子を単位と見立てた場合、量子よりはるかに小さいクオンという超素粒子が集まったり動いたりする事で生じています。クオンは原子核や光子、さらにクォークを作り出す事も可能です。魔物はクオンの集合体ですが、原子を作って実現している為、生物と差はありません。また、魔物はゼロからクオンの集合体として誕生した魔物と、元々いた生物が暗黒のクオンに汚染され魔物になったものとに分けられます。どちらにしろ繁殖が可能で、個体数を増やすことが出来ます。なお、クオンは14種類存在し、大量の暗黒のクオンに汚染された人間が魔族の先祖です』


 ふむ、何の事だかさっぱり分からないけど、つまりあれは飛竜の卵だと。


「わっ!」


 ガベラが声を上げた。

 上を見上げて口を開けている。

 つられて見上げると、巨大な影が舞い降りた。

 大きな翼を広げ、鋭い爪のある足で着地する。


「グオオオォーッ!!」


 威嚇するような鳴き声を上げて、こちらを睨んでいる。

 全長20メートルほどの体躯。

 赤い鱗。

 大きな翼に黒い爪。

 太く逞しい二本の脚と大きな尻尾。


 うおおおっ!某狩りゲームの赤い空の飛竜にそっくりじゃないか!! カッコいいぞぉ~。

 あれを使役して背中に乗れば一匹で皆乗れるじゃないか!


 いかん、興奮してる場合じゃない。

 ガベラ・スノーク・カミールは呆気に取られて固まってる。

 ってか、魔物?魔物の域超えてない?魔神じゃねぇーの?

 こいつを手懐けるとか無理ゲーすぎね?


「ほ、本当にいたんだ。レーヴァテウルス」


 スノークが呟く。


 って、カミールがまた剣を抜いて近づいて行った。

 だから、何も考えずに突撃しないでくれーっ!


「グルルルル……グアァアッ!!!」


 レーヴァテウルスが体を低くし、大きく息を吸い込んだ。

 火炎ブレスの構え。


 ちょ、待てよ。いきなりピンチなんですけれど!?


「ブリザードアッパー!」


 咄嗟にレーヴァテウルスの下顎を殴りつけ、無理やり口を閉じる。


「カミール!下がるんだっ!こいつは俺に任せろっ!!」


 だが、カミールは横に動いて脇からレーヴァテウルスに突撃していく。


 おいぃいっ! 言う事を聞けぇええいっ!!


 って、うおおおおっ!


 カミールが当たらない距離で左手のパンチを繰り出すと、左手からトリ子が出現する。

 ホーンレックスの突撃がカミールの左手から出現するというとんでもない光景。

 10メートル1トンほどの巨体が、レーヴァテウルスにぶつかって行く。

 左手にトリ子を宿した魔石を持っているようだ。


 ドゴーーーンッ!!!


 すげー音を立てて、2体の魔物がぶつかり合った。

 おぉう、衝撃波で吹っとばされそうだぜ。

 そしてトリ子をまた魔石に宿す。


 また、カミールのパンチ。

 トリ子が出現してドゴーーーン!!

 トリ子を魔石に戻す。


 カミールのパンチ。

 ドゴーーーン!


 なんだそりゃーっ!

 強すぎるだろその攻撃。

 1トンのトラックの衝撃が左ジャブで繰り出せるってどんなチートだよっ!

 もう唖然としてしまった。


 たまらずレーヴァテウルスは空に舞い上がる。

 飛翔が速い。

 ダメージはありそうだけど、トリ子ジャブを3発受けてまだ飛べるとは相当強いな。


 空中で旋回しながら様子を伺っているようだ。

 他の2人は?

 スノークはカミールを守れるように、すぐ動けるようにしている。


 ガベラは?


「はあああぁぁ…」


 何か力を溜めてますけど……。


「てりゃああっ!!」


 気合いと共に全身が光に包み込まれた。

 そして光が消えた時には……


 なんということでしょう。


 変身してるじゃないですか。


 背中から翼が生えて、髪の毛は逆立ち、ちょっと角が生えてませんかね?

 顔つきも少し変わっているような気がする。


 あれだ、竜の騎◯の竜魔◯みたいな感じ。

 女の子だから、怖くないしドラゴニュートみたいだ。


 あ、飛んでった。


 まさかのチート祭りに、頭が追いつかない。


 ガベラはレーヴァテウルスと空中戦をし始めた。

 動きが素早いガベラの方が優勢に見える。

 だが、相手は空を飛ぶドラゴン。

 どうするのだろうか。


 不意にレーヴァテウルスの縦回転。

 サマーソルトキックならぬサマーソルトテイル!

 ガードはしたがガベラは飛ばされてしまった。

 そして地上に落ちてくる。


 なんとか俺がキャッチするが、カミール達と離れてしまった。


「すいません。エーデル様」


 レーヴァテウルスが高速で降下してきた。

 まずい、スノークとカミールに狙いを定めてきた。


 空中で反転して巨大な尻尾での薙ぎ払い。

 スノークがカミールの前に飛び出して盾になる。

 バシーィインッ!!とスノークが吹っ飛ばされてしまった!

 落下速度と全体重を乗せた尻尾の一撃。

 今のはまずい!


「スノーク!」


 スノークはすぐに立ち上がった。


「え?今のくらって何とも無いの?」

「いや、ゴブリンの影が10匹分消えました」


 それだけっ?

 影が身代わりになってくれるのか。

 ネクロマンサーのスキルみたいだけど、あの巨体の一撃を受けて無傷とは。


 さて、どうしたものか。

 レーヴァテウルス、中々の強敵である。

 仕方ないな、ちょっと痛そうだけどあの尻尾攻撃をくらってみるか。


 レーヴァテウルスは空中で旋回している。

 落ちてる手頃な石を空のレーヴァテウルスに思いっきり投げつける。


 ゴンッ!


 よし、命中したぞ。

 くるっと回ってこちらに向かってきた。

 いいぞ、ターゲットが俺に切り替わったようだ。

 そのまま真っ直ぐ降下してきてくれよ。

 そして、尻尾攻撃!


「うわわああぁぁ!」


 尻尾攻撃にわざと当たり崖から落ちる。


「エーデル様ーーっ!」


 ガベラの叫び声が聞こえた。

 俺の姿は見えないはずだ!


「チェーンジ・ブレード!」


 ブレードワイスになって上空へ舞い上がる。


「ブレード・バーニング・キイッック!」


 ドゴーーーン!と衝撃音とともにレーヴァテウルスは吹き飛んでいった。


『マスター。レーヴァテウルスは火属性に強い耐性を持っています。バーニングシリーズは効きにくいです』


 確かにレーヴァテウルスはすぐに起き上がった。


「グルルルル…」


 む?何者だと言わんばかりに睨んでいるではないか。


「大空の支配者レーヴァテウルスよ。私は闘志と誇りを込めて、勝利を求む!異世界よりの使者、ブレードワイス見参!」


 決まったぜ。


 む?

 レーヴァテウルスのやつ…


 左の翼で顔を隠して、右の翼をブンブン左右に振っている…・

 ひょっとして大空の支配者と言った事に照れてるのか?


『マスター。レーヴァテウルスは全力で喜んでいる模様です』


 そうなの!? あ、でも目をキラキラさせてる。

 まあいいか。


 では改めて、


「行くぞ、レーヴァテウルス!ハンド・ウォーター・プレッシャー!」


 ハンド・ウォーター・プレッシャー。

 これはただの水が高圧で発射されるだけの技だ。


「超風魔・竜巻!」


 高速回転の空気の渦がレーヴァテウルスを襲う。

 水がレーヴァテウルスの表面を覆い冷やされる。

 気化熱を利用する合わせ技なのだ。


 だが、これくらいで倒せるとは思ってないさ。


「くらえ!ブレードサンダーキックスピーーーンッ!」


 雷のキックで一気に畳み掛ける。

 バシッ、バリリッ、バチィィーンと派手な音が鳴り響く。

 雷のキックと覆っている水への放電。

 二重の攻撃に流石の奴も堪らず悲鳴を上げる。


「今だ!カミールッ!」

「はい!なのです!エーデル様っ!」


 カミールが魔石を投げる。


 するとレーヴァテウルスが黒い霧に……ならない!


『マスター。レーヴァテウルスは魔物ですが、かなり知性も高く精神力も強いようで、使役スキルに屈しないようです。倒すしかありません』


 マジですか。

 倒してしまったら何のために戦っているのか分からないじゃないか。

 躊躇っているとカミールがレーヴァテウルスに近づいていく。


 だから不用意に近づかないでーっ!


「私は魔物使いの王カミールなのです。私の僕になるのです。永久の至福を与えるのです」


 カミールが倒れているレーヴァテウルスを見下ろしながら言った。


 ゾクッとした。

 普段の可愛らしいカミールからは想像できない、狂喜と諦念を誘うかのような眼差し。

 まさにカリスマと呼ぶに相応しいものだ。


「子供達も連れていくから安心するのです」


 そう言うと、レーヴァテウルスは安心したような顔をして黒い霧となり魔石に吸い込まれていった。


 カミールー!怖いよおおおぉ!!

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