013 この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます。
ワクテカしながら付いていくと、少し開けた場所に出た。
ええっと……あれはトリケラトプスにしか見えないんだけど?
かっこいい角をもつトリケラトプスがドシンドシンと歩いているぞ!
草原にトリケラトプスが描かれていた恐竜図鑑の1ページが脳裏によぎる。
「うわっ!ホーンレックスだ!あんなのどうするんだよ、カミール」
スノークが半分興奮している。
おい、君キャラ変わってないかい。
まさか魔物オタクじゃないよね。
「折角みつけたので、あいつを弱らせて使役してみるのです」
と言ってカミールが剣を抜いてホーンレックスに近づいて行った。
ちょっ、待てぇ~!危な過ぎるんですけどぉ~。
すかさずカミールより前に出てホーンレックスにワンパン入れる。
ドゴォーンッと轟音が鳴り響くが、硬ええぇぇ。
首がちょっとグラついただけだ。
「ブオオオォォッ!」
四つ脚のホーンレックスが前脚を上げて怒りをあらわにしている。
「でけぇ……。トリケラトプスだ…」
思わず呟いてしまった。
全長10メートルはあるぞ。
ガベラとスノークは剣を抜いて身構えている。
「使役するんだから剣は駄目だ。魔法を使うのも危険だから、ここは俺に任せてくれ。3人は下がっていてくれ」
3人共素直に従ってくれた。
しかし、どうやって倒そうか。
素手でこのトリケラトプスにしか見えないホーンレックスを殴り倒すのは難しいだろう。
ブレードワイスに変身すればどうにでもなるだろうが、3人の前では変身出来無い。
ん?変身しなくてもそこそこ強く戦えたはず……なんで変身しないと駄目ないんだっけ?
ああっ!思い出した!!
俺は魔王だったぁ~(涙)。
すっかり忘れていた。
生身のままで魔王の力を使うと人間の体では耐えきれないという理由もあった。
だが前世では特訓して少しは生身でも魔王の力は使えるようになったんだよ。
でも生身で力を使うと魔王だとバレてしまう。
敵に知られたら面倒な事になるし、人に見られると恐れられてしまう。
だから、変身して正義の味方の必殺技に見せかけていたんだ。
でも、それは前世の地球の時の話だ。
ひょっとして、この世界なら生身でも魔王の力使えるんじゃないか?
物は試しにやってみよう。
「サンダーパーンチ!」
バリリッと放電が起こり拳に電気が流れる。
その腕をホーンレックの頭に叩きつけた。
バチィィンと大きな音を立てて、頭に大きな衝撃を受けたホーンレックスがよろめく。
おお、効いている。
そのまま2発目を入れると、今度は吹っ飛んでいった。
そして、木にぶつかると動かなくなった。
倒したみたいだが、まだ生きているようだ。
「カミール!今だ!」
カミールはホーンレックスに魔石を投げつけた。
すると、ホーンレックスの体が黒い霧になって魔石の中に吸い込まれていく。
どうやら成功したらしい。
ガベラとスノークも喜んで飛び跳ねている。
「やったのです。大成功なのです。エーデル様ありがとうなのです」
早速カミールは魔石からホーンレックスを召喚した。
俺達4人で背中に乗る。
おお、結構速い!時速40キロぐらい出ているんじゃないだろうか。
これって馬車より速くないか。
乗り心地もいいぞ。
ただ、ちょっと怖いけどね。
見た目が…
「エーデル様、さっきトリケラトプスって言いましたが、何の事なのです?」
「あぁ、俺の前世の世界にいたトリケラトプスって恐竜にそっくりなんだ」
「エーデル様の前世の世界にもいたんですかっ?」
スノークが食いついて来た。
「あぁ、一応…」
どうしよう。恐竜の説明面倒くさいな。
スノークは関心して納得してるし、このままにしておこう。
「では、お前の名前はトリ子なのです!」
なにぃーっ?
それでは、《この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます。》になってしまうじゃないか。
まあいいか。
「トリ子!このまま、次の獲物を探すのです!レッツゴーなのです」
しかし、この森にこんな魔物がいるとは知らなかった。
そういえば急いで村から出て来たから、あまり考えてなかったけど、森に入ってこの方向に進んではいけない掟があったなぁ。
ということは、この方向はとんでもない魔物がうじゃうじゃいるのかもしれない。
قەھرىمان
「ウサ子がもう疲れて動けないと言っているのです」
「じゃ、ウサ子とはもうさよならしないといけませんね」
「うぅっ。ウサ子さよならなのです」
トリ子に乗って一時間ほど走っていたら、ウサ子が疲れてしまったようである。
カミールが最初に使役したウサギの魔物は石で使役したので宿る事が出来ないようだ。
魔石を使えば宿れるのだろうが、ウサギの魔物に魔石を使うのにはコスパが悪すぎるので、ウサ子とはこの場でお別れである。
「しかし、偵察用の魔物は必要だなぁ」
俺は呟いた。
森を暫く進むと、少し開けた場所に出た。
そこには、ゴブリン達が屯しているのが見える。
50匹以上は確実にいる。
あれ?止まらないの?
そのまま構わず進むトリ子。
ゴブリン数匹を何事も無いように踏み潰して行く……
「キィヤァァァッッ!!」
ゴブリン達が叫んで逃げ出して行くが、構わず進んでいく。
ちょ、ちょっと待ってくれよぉ~。
トリ子の背中からの光景は地獄絵図だった。
逃げ遅れた奴らが、次々と踏み殺されていく。
そして、その血肉を浴びながら進み続けるトリ子はまさに地獄の使者であった。
いくら魔物とはいえ、良心が痛むぞこれ……。
「ちょっと止めてくれ、カミール」
スノークがトリ子を止めるようにカミールに言った。
もう、ゴブリン達はほぼ全滅してるんじゃ無いだろうか。
スノークはゴブリンの死体に向かって左手をかざしている。
「目覚めよ」
おおお!ゴブリンの死体が黒い影となって起き上がった。
黒い影と言っても輪郭とかはっきり見えるし、目も光って居るので黒く塗っただけにしか見えないけど。
「宿れ」
スノークが影ゴブリン達に言うと、スノークの影に入って消えた。
これがネクロマンサーか。
死体が蘇り、仲間になる。
「偵察とかは俺が出来そうです。辺りを探ってみますか?」
「ああ頼む」
「影のまま散れ」
スノークの影が分かれて影だけが素早く移動していく。
さっきのゴブリンの数50くらいの影が散り散りに離れて行った。
「カミールもスノークも何で自分のジョブの使い方が分かるんだ?」
不思議だったので聞いてみた。
ジョブを解放しても使い方が分からない人は沢山いるのに、二人はちゃんと使えている。しかも数時間前に解放したばかりなのに。
「あーそれはですね……」
スノークが説明してくれた。
魔族は生まれつき魔力が多い為、魔力の使い方の訓練を小さい頃から行っているらしい。
自分の魔力を感じる事を習慣にしているそうだ。
ジョブを解放したら何となくこうすればいいと分かったと言う。
自分の魔力と向き合う事が大切だと教えられた。
自分の魔力と向き合うか……。
俺もやってみよう。
どうせトリ子の背中に乗ってるだけだし。
魔法研究室で少し学んだ魔力の感じ方で、自分の魔力だけに集中する。
………
『マ……』
んんっ?何か聞こえたような気がするんだが。
気のせいかな。集中しないとな。
……
『マスター……』
うおっ!
まさか、魔力を感じられるようになると、生身でもY.U.K.Iと通信出来るのか?
もう一度集中!
『マスター。ご自身の魔力の操作により、ブレードワイスに変身しなくても、私とのアクセスが可能になりました。お知らせします。宜しくお願い致します』
マジですか。
これは凄いな。
Y.U.K.Iは叡智の結晶とも言える存在だ。
前世のデータバンクを網羅し、今世の俺が見聞きした事を全て記憶している。
意識して見聞きした事ではなく、無意識に見聞きした事も全て記録してある。
例えばこの数時間で通ってきた途中の木の数や種類、さっきのゴブリンの顔からシワの本数まで。
俺が生まれてからの記録は全てY.U.K.Iに蓄積されている。
やっぱり俺が一番チートなのは間違いないようだ。
いつでもY.U.K.Iとアクセス出来るように、意識的に訓練しよう。




