反逆の騎士は国を思う No.4 ルキウス
私は消して恋等というものをしてこなかった。それは私の家系が妖精純血主義を貫く血統第一主義の妖精の家系というのもあるからだろう。
そもそも、エルフはともかく、上位妖精や一般妖精の寿命は途方もなく長い。軽く300年を生きる者達等数多にいる。
ましてや、私は純粋な妖精一族の家系に産まれ落ちたもの。流石にフローレンス卿やサグラモール卿等の神代から生きる方々とは勝負にならないが。他のパーシヴァル卿やユーウェイン卿等の新世代の者達よりは長命に生きてきた。
‥‥‥‥もう一度言う。私は消して恋などしない。
しないが、我が友。トリスタン忘れ形見。○○○○殿がこの国で幸せになれるようにはしなくては‥‥‥‥‥
それが我が王に反逆する事に繋がるとしても‥‥‥‥
十数年『モードレッド』領
我が友。トリスタンが無くなった後。私はこの『妖精国』の民が飢えず、苦しまず、笑える様に暮らせる国にするために努力した。
たまに、我が王と衝突したり。
トリスタンの忘れ姿見の○○○○殿の様子を見たり。
そんな、忙しい日々を送っている時、突然、私の前に訳の分からない生き物が現れた。
「ヒヒヒヒ! よう! モードレッド卿!」
形容しがたい。黒い小さな魔人。
「?あぁ、魔窟はあちらだよ。迷子殿」
私は魔窟のある。結界の方へ手を向ける。
「ヒヒヒヒ! ちげえよ! モードレッド卿! 退屈だろう? 反逆しようぜ! 反逆!」
いきなり。現れ、訳の分からないことを喋り出す。黒い小さな魔人。
「‥‥‥‥? まぁ、とりあえず、暇なら。私の仕事を手伝ってくれないか? 君? 名前は?」
「あん? 何でだよ!‥‥‥俺の名前? 名前?なんだろうな? ヒヒヒヒ」
「なんだ。名前も無いのか?‥‥‥‥それでは適当にルキウスと名乗っておけ」
「適当につけんな! ヒヒヒヒ!」
「『キャメロット城』にある。伝承の本に登場する架空の人物さ。‥‥‥カッコいい名前じゃないか。ルキウスなんて」
「ヒヒヒヒ? カッコいい? 俺が? ヒヒヒヒ」
「あぁカッコいいさ。ルキウス。これからよろしく。それとこれが君の仕事だ」
「おう! よろしく! ヒヒヒヒ! モードレッ‥‥‥」
ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサ
私は山積みになっている。仕事の書類をルキウスに渡した。
「お、おおすぎだぜ!! モードレッド! ヒヒヒヒ!」
「あぁ、共に頑張ろう。新たな友よ」
「ヒヒヒヒ? 俺が新たな友?‥‥‥‥ヒヒヒヒヒヒヒヒ!そうか! 俺が新たな友……ヒヒヒヒ」
こうして、私とルキウスの忙しない日々が始まったのだ。
「ヒヒヒヒ! モードレッド! そろそろ、反逆しようぜ! 『女王』様の為に」
「いや、まずは我が王の為に頑張ろう。ルキウス。あっそこ間違ってるぞ!」
「ヒヒヒヒ? ああ、済まねえ! モードレッド」
「モードレッド! ここはこれでいいのかぁ? ヒヒヒヒ」
「あぁ、凄いな。ルキウスは、こんな難しい仕事をもうこなせるなんて」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ! そうだろう! ヒヒヒヒ、俺は優秀な架空の魔人様だぜ! モードレッド。ヒヒヒヒ」
「あぁ、いつも本当にありがとう。ルキウス。君がいると私の心まで癒されるよ」
「ヒヒヒヒ? そうか?ヒヒヒヒヒヒヒヒ!それは俺も嬉しいな! ヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
数年後。
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「モードレッド? ヒヒヒヒ! 大丈夫か?」
「あぁ、済まない。ルキウス‥‥‥‥私も円卓の騎士になったから数百年経ってしまった。日々の業務に熱が入り。自分の体調を疎かにしてしまった様だよ。ルキウス。ハハハ」
「モードレッド! ヒヒヒヒ! 死なねえよな?」
「そうだな、昔の友。トリスタンの忘れ形見も入る。それに私はまだ、恋を知らない。そして、新たな友、ルキウスをのこ‥‥し‥‥て‥‥‥‥」
「ヒヒヒヒ? モードレッド? ヒヒヒヒ?! ヒヒヒヒ?! モードレッド! 起きろよ!‥‥‥いつもの仕事しようぜ!! ヒヒヒヒ!! 楽しいお前との仕事!! ヒヒ‥‥‥ヒヒ‥‥起きてくれよ! 俺の友‥‥モードレッド‥‥」
そして俺はモードレッドの亡骸に入り。
薄れ行く。モードレッドの魔力意識をほんの少し保ち。今日まで。モードレッドと共に生きてきた。
トリスタン側
「どうやら、あちらもそろそろ終わる様だよ。○○○○殿。ヒヒ」
「‥‥‥‥そのようですね。モードレッド」
「済まないが『女王』様のためだ。ヒヒ! そろそろ、決めさせてもらう」
「ええ。私もこの技で貴方を止めます」
「そうか、ヒヒ! では、神代・回帰(青)『青玉の大剣』」
凄まじく大きな青剣がトリスタン?卿へと向かってくる。
「では、私も偽装解除‥‥‥‥神代・回帰『白金の弓矢・イゾルテ』!!」
美しい白金の大きな矢が形成されモードレッド卿の青玉の大剣へと向かって行く。
「おお! なんという美しい! 技だろうか?なぁ、我が友トリスタン。そしてルキウス! ヒヒ」
(モードレッド。もういいのか? ヒヒヒヒ)
(あぁ、もういい。ルキウス。君も私の意識を残す為に疲れたろう? もう休め)
(ヒヒヒヒ!バカ言え! ヒヒヒヒ! お前と一緒にする仕事が疲れる分けないだろう。モードレッド! ヒヒヒヒ‥‥‥‥本当にもう良いのかよ?)
(‥‥‥あぁ、もういい。思い残す事は何も無い。トリスタンの忘れ形見の成長も最後まで見れた。恋を知らない私が彼女に淡い気持ちを抱かせてもらった。そして、最後に君という新しき友もにも会えた。これで満足いかないわけ無いだろう? ルキウス)
(ヒヒヒヒ! ヒヒヒヒ! そうか! そうか! 『女王』様には悪いが。これでバイバイだな! ヒヒヒヒ!‥‥‥それじゃあ! 行こうぜ、モードレッド! 罰を受けにな)
(あぁ、ありがとう。ルキウス。あちらで共に罪を償い歩んで行こう‥‥‥‥では、さらばだ。我が友。ガウェイン卿!我が友。トリスタン卿‥‥‥いや、イゾルテ殿‥‥‥さようなら。そして、アーサー王。お元気で! 国を『妖精国』をよろしくお願いいたします。去らば)
ドコオオオオオオオオオオ!!!!
二ヶ所同時の神代・回帰の大技により。戦場の大地は激しく揺れ。
そして1人の円卓の騎士は姿を静かに消したのだった。
反逆の騎士は国を思う
終




