古い言い伝え
古い言い伝え
前半
我輩は元魔王である。名前はもうある。
元勇者と共に地球に飛ばされ早くも二、三週間くらいの時間がたった。
初めの頃は勇者であるセツナに私は殺されるものとばかり思い怯えていたが。飛ばされてそうそうにセツナはこっちの世界の事を教えてくれ。
生活に必要な道具をお金も無い私に買い与え。語学や読み書き、計算、雑学もろもろを教えてくれて。学校っという場所を休んでまで丁寧に教えてくれた。
そのお陰で今では日常生活にほとんど支障が無くなり暇なときはセツナの家事手伝い等をするようにまでなった。
セツナいわく。「君はあちらの世界では高名な一族である魔法族だし。多分、こちらの世界に来て魔法が一切使えなくなった代わりにエスフィールの魔力分だけの体力、知力、五感やらに能力が振り分けられたんじゃないのかな?
アリーナの女神連中はかなり適当な所があるから。魔力没収の代わりに気まぐれで送り物を与えたんじゃないか?こちらでの世界で少しでも住みやすい様に女神なりの罪滅ぼしだと俺は考えているよ。まぁ単なる俺の予想だけどね。」
そんな事を私との勉強中に話していたのを思い出した。
まぁ、色々ったがセツナは面倒見が良く。顔も良い(メイド好きだが)優しい奴だった。
それになぜか私にもセツナが通う聖豊中学という場所に一緒に通うと言われたのだ。
言われた時はどうゆうことなのだ状態だった。
説明を聞くと私の学習能力は素晴らしいらしくそれを伸ばす為にも聖豊中学に入りこちらの世界の事を色々学んで欲しいと熱弁された。
「エスフィールとなら学校でも一緒に切磋琢磨できる良いライバルになれるし。君には色々な可能性が大きく眠っている。それを活かさないのはもったいないことだ。それにもしアリーナに帰った時。地球で学んだ事をアリーナで活かせる事は沢山あると俺は思っているよ。」
そう言い終わるとスマホを取り出し誰かに電話をかけ始めた。えーと!電話中は電話が終わる待で静かしている事と。頭の中で習ったことを思い出す。
そんな事を考えているとセツナがスマホ越しに誰かと話し始めた。
「もしもし父さん?!仕事中だった?忙しい?ごめんごめん。あーうん。ちょっと父さんに頼みたいことがあって!海外の友達が遊びに来てたんだけど故郷の家族と連絡取れなくなったんだ。」
電話の相手はどうやらセツナの父親みたいだ。
「そうそう、この間の国際交流会の子で……。星奈も知ってるよ。星奈とも友達だから。今?今は家に一旦居てもらってるよ。他に行く宛て無いんだった!うん!………そこを何とかお願い!………本当に!ありがとう。」
一緒に住む事が許されたらしい。
「名前?ユナ・エスフィールさんって言ってイギリスの子ロンドン育ち!うんうん!」
こちらの世界での設定が作られていく。
「そうだ。後1つ頼みたいことがあって。………エスフィールさんに俺と星奈が通っている聖豊中学に通ってもらおうと思っているんだ。学力?心配ないよ彼女凄い頭が良いんだ。うん!学校としてもプラスになると思う。編入試験も心配無いと思うよ。」
そして話が私の通学?の話に移り変わった。
「本当に?ありがとう。えぇっ?書類もろもろも用意してくれるの?助かるよ。うんうん。また連絡するからありがとう!今度、父さんの好きなビーフストロガノフ作るから!うん!また時間ある時に!今日はありがとう!また!」
話がまとまったみたいで通話が終了した。
「エスフィール!君の聖豊中学への編入が決まったよ。めんどくさい手続きもろもろは父がやってくれるから心配無いと。編入試験も今のところ問題無くクリア出来そうだし何の問題もないな。」
問題ならしい。
とりあえず、まだこちらの世界の事は良く分からないけど学べるチャンスがあるのなら見聞を広げるためにもセツナが通う聖豊中学?とやらに通うことにしよう。
正直、この家に一人で残されて暇を持て余すよりは余程、私にプラスに働くと思うし。セツナが学校に行って色々とこの世界の事を学んだ方が良いと進めてくれているので俄然やる気が出た。
そしてあれよあれよ日にちが進みその間も聖豊中学の制服を見繕うため高そうな服屋に行ったり。学校で使うための道具など(これも高そう)を買い集めた。
そして私は1つ気になったことを元勇者であるセツナに質問した?
「1つ疑問に思ったんじゃが!」
「なんだ?」
「セツナの家は貴族かなにかか?」
「ごく一般の普通の家だよ。」
「嘘をつけ!制服とやらも高そうな装飾が着いてたり指定のカボンだって革の良いやつを使っておる。
それにどんなマジックを使ったら得体のしらぬ外人が編入試験とやらを受けられるんじゃ?」
そう言うとセツナは間を少し開けて話し始めた。
「まぁ、家は日本でも古くからある神成家っていう名家の1つらしよ。」
「名家の1つ?」
「そうそう。アリーナで言うところの旧貴族みたいなものだよ。まぁ、家は神成家でも分家で俺は跡取り候補から外されているからあんまり関係無いけど。そんな訳だから顔の広い父に君の事を相談したんだよ。」
「ほーう!そうだったんじゃな!」
そう聞いた私は色々納得した。
だからこんなにバカみたいに金を使えるのか魔王時代は節約節約だったからこの元勇者ときたら。
地球に帰れば金持ちボンボンとは羨ましいのじゃ。一瞬そう考えてしまった。だがそのお金を惜しげもの無く宿敵だった私に使ってくれるのもセツナの懐の深さがあっての物なのだろう。
ふとそんな事を考えているとあちらの世界にいた時、私の一族である魔法族に伝わる言い伝えを思い出した。
神なり名を名乗りしモノ世界を救わん
そして我が一族も共に救われん
人と魔、共に共存しあい長き争い終結し
真の平和訪れん
神成家と最初の文の神なり名を…………。
「まぁ、単なる古い言い伝えじゃし!まさかのう。」
そう言って私は聖豊中学に行くための準備をセツナと一緒に進めていった。
後半
私はユナ・エスフィールである。
役職(魔王)になる前は魔法世界アリーナでは『魔法族の里』の族長の令嬢だった。
小さい頃から魔法、術式、数式やアリーナの世界の事について、魔法族の長でもある母に徹底的に教え込まれた。
母は厳格で厳しかったが私の魔法に対する才能や物覚えが良かった為。溺愛されていた。
そんな母を私も大好きだった為。魔法やアリーナに着いて勉強に励んだ。
そのお陰だったのか分からないが先代である魔王様が急病で無くなってしまい。次の魔王が不在の状態になった。
その頃は人間側の勢いは日ましに増し。あわや魔族側が滅ぼされるので無いかとまで囁き始めるようになっていた。
それを危機として思った母は魔王側近や幹部等の数人と話し合い魔族側でも最も魔力量が多く、若さもあるということから若干14歳の私が新米魔王に就任してしまったのだった。
最初は自信が無かったが。人間側には勇者がいる状態で劣勢であったため。反対するものもおらず魔王貴族や先代魔王の側近達も皆、私を補佐しながら各々が一緒懸命に働いてくれていた。
魔王としての仕事も幼少の頃からの勉強や魔法族特有の高い知性に助けられなんとかなっていた。
だが日に日に魔族側の戦況は悪くなり土地も痩せてきてしまっていた。運が悪いことに流行り病が流行し疫病等も蔓延した。
これまでかと思ったその時。進行している筈の勇者パーティーが敵側である筈の魔族嶺で物資の救援や流行り病や疫病等を見たこともない治癒魔法でたちどころに直していっているとの情報が流れてきた。
今、思えばあれは元勇者であるセツナが今の地球で暮らす私と同じように目の前に困っている人を見捨てられず。
敵味方関係なく救ってくれた結果なんだろうと地球に来てからの私に対する接し方で良く分かった。
セツナには、本当に感謝している。
こちらに来てまだ日が浅いけど。生活に慣れ私、自信も余裕が出てきたら少しずつでも恩返ししていきたいと思う。
これからは、勇者と魔王ではなく。
共に暮らしていく相棒としてセツナの役にたっていきたいと思う。
そう回想しながら私は今、聖豊中学の近くの大きなビル?というのだろうか?
その場所で編入試験を受けている。
セツナも私の付き添いで近くにいて私の方をボーッとしながら眺めている。暇なんじゃな。
編入試験の内容も以前、セツナ言っていた通り。ここの所セツナに教わっていた勉強よりも難しくは無かった。
特にこの数学と英語とやらはアリーナ世界の魔法学式や魔法詠唱に似ていたので、こちらの世界で勉強を始めた時からすぐに解けそこまで苦ではなく。
むしろ問題を解くのが楽しかった。数学は魔法理論に英語は詠唱論語にとても似ているのだ。コツさえ掴めば直ぐに理解できた。
数時間経過した頃。合否の発表すぐ出た。最近はAI採点とかいうでたの読み込んで直ぐに結果を教えてくれるらしい。便利じゃのうとか口に出してしまった。
結果は歴代の編入試験の中で最も好成績だったらしく監督者らしき先生に誉められた。(そもそも聖豊中学の編入試験を受ける人が余りいないのも理由らしいが。)
合否が決まるとすぐに聖豊中学の説明会が開かれ。1時間程ボーッと聞いていた。
なんと明日から登校して良いらしくならばよろしく頼むと言うてしまった。
監督者の先生もならばとちょうど明日は聖豊中学の定期テストだからそちらも受けるようにと言われ私はその場で倒れてしまった。(またテストやるのかーっと。)
セツナが言うには学校の連中もテストで頭がいっぱいで。ずっと休んでいるセツナや編入生として入ってくる私の事など気にしていられないだろうしテストが終わったらすぐに帰ろうとう騒ぎになるのも嫌なんだとか。
私はこちらの世界の学校っという建物をゆっくり見たかったがセツナいわく君は目立つから落ち着いた別の日にゆっくり学校を案内するよーとか言っていた。
次の日。定期テストの日は先生達も忙しかった様でクラスでの編入生の自己紹介も後日となった。
しかし本当にセツナが言っていた通り学生の皆が皆。余裕な雰囲気ではなく朝会?らしき時も何かの本を一緒懸命に読んでいる人間ばかりだった。セツナはボーッと私を眺めていたが。
セツナとは学校側の配慮もあってなのか同じクラスの後ろ側窓際の同じ席に置かれていた。(セツナ以外知り合いがいない私にとっても非常に助かった。)
「おーっ!これからよろしくのうセツナ。」
「おーっ!これからよろしくエスフィール!」
なんだか楽しい日々が始まる予感がしたのだった。
定期テストというものもあったが昨日の物より簡単だったのですらすら解けあっという間にテストが終わって暇を持て余していた。セツナも同じだったようで外の用務員をジーッと観察していた。
あっという間にに時間が過ぎ。放課後になった。
その途端クラス中の男女が私に目掛けてミサイルの様に突っ込んで来ようとしたが。
その瞬間には私とセツナは教室を去り下駄箱で靴を履き替えていた。何でも魔道具で身に付けると動作を早くさせる魔道を身に付けさせられて。いつもより早く動けた。
(何で私は魔法が一切使えないのにこやつは魔道具で色々出きるんじゃ。私もアリーナの魔道具を地球に持ってくれば良かった。)
そう思いながら帰路に着いた。
ちなみに今日、受けた定期テストとやらは学年1位がセツナで2位が私と同率で天王洲 彩音という女の子だった。
何でもこちらでもAI採点が使われているらしく直ぐに学校の専用サイトに掲載されるらしいとセツナが説明してくれた。
地球の学校では土日が休みらしくその土日の土曜日が明日で。ここ最近は勉強とテストで大変だっただろうからゆっくりしてくれと言われ。
その日の夜は私の好きなカレーを作ってくれて2人で食べ早く寝ることにした。
月曜日からはまた、別の意味で大変になるから覚悟しといてね~っと笑顔で言われセツナは自分の部屋に入っていった。
その言われた意味を思い知る事になるとは月曜日の登校するまで私は知るよしも無かった。