スヴァローグの追憶
───ここは何処だ? 確か我は死の大地での最終決戦後、霊王が治める影の国に運ばれ治療を受けていた筈だが。
「うお?! 何で夢世界に居るんだ?」
「む? その声は……刹那か?」
「は?……この声は……スヴァローグ……何でお前がここにいるんだ? 神明魔法しか使えないくせに」
「いや、それは我が聞きたい事なのだかな……」
かつての相棒がいきなり知らない世界に現れたのだ。びっくりもするだろう。
◇
「へー、あっちは今、全地方でお祭りなのか?」
「ああ、死の大地が遥か昔の様に緑豊かな地へと変わり、終末の時を無事に回避したことを祝う祭典だとか。グレイという者が言っていた」
「そうか……本当に平和になったんだな。スヴァローグ。お前の怪我は大丈夫なのかよ? ギアートルに深手を負わされてたよな?」
「それは問題ない。養父…親父殿が我を傷つけた後。直ぐに治癒魔法を施してくれていたからな。傷はかなり浅かった」
「そうか。ギアートルが治癒魔法ねぇ……まあ、なんにせよ。スヴァローグが生きていて良かったよ」
「うむ。それよりも。刹那よ。貴様、今、どこに居るんだ? 決戦後、魔王領の魔王と消えたと聞いたが?」
「んー? ああ、実はだな…」
刹那は決戦後の事を話始めた。
◇
「新たな神になる事を拒み。力を全て捨てて地球へと帰還したのか」
「まあ、そんな感じだな。俺がそっちにいても、新たな火種にしかならないからな。勇者は役目を終えたらさるのみさ」
「そうか……力を失ったか。ならば。魔法世界にはもう来れないのだな?」
「だな……あんな力。俺には過ぎたる力だから。魔法世界が平和になったんなら。俺はそれで良いさ」
「刹那らしい……己の力への解答だな。おっと。もう起きる様だな。ではな。刹那よ。また魔法世界で会おう」
「は? スヴァローグ。お前。今、何て言った……」
◇
〖影の国 医療部屋〗
「……朝か。随分と長く寝ていた様だな。刹那の奴。元気そうであったな……」
────久しぶりに相棒と話せて良かった。少し見ない間に背が伸びていたな。
刹那よ。貴様がくれたこの平和な魔法世界は任せてほしい。
新たな時代は争いなき平和な世にしていくと。イグニッションの名にかけて誓うとしよう。
我はそう告げて医療部屋を静かに後にした。




