終末決戦・〖勇者と魔王の未来の為に〗No.12 無と黒と匣
「極西と極東の結界魔法を合わせた次元結界か。マキナといい、タマキまでもが。生みの親である我の障害となるか」
「……ギアートル。やはり貴方が神々の黄昏のリーダーでしたか……全能と破壊の神の半神・ギアートル・ホーエンハイム」
「タマキ……」
ギアートルはタマキを見て一瞬だけ身動きを止めた。
「隙だらけだな。ギアートル! 北の最果に着く前にお前を倒す! 黑衣装飾〖黑断〗」
俺は黑衣の力ですかさず攻撃を開始する。
「次はお前が来るか。勇者、そして、それは〖色彩〗の力……白衣礼装〖白亜〗」
「何? 俺の黑衣と似た力で相殺された?」
「何を不思議がる事がある? No.8〖力〗のマザーグースも使っていただろう? あれは元々、我が彼女に与えて力だ」
「くっ!……これならどうだ。無属魔法〖虚来〗」
「ほう……新魔法か? どれ試しに受けてやろう」
ギアートルはそう告げると、俺が放った〖虚来〗に自ら当たりに行った。
「は?……馬鹿なのか? 無属性魔法だぞ。喰らえば身体が消えて……」
「ほう……物質構造の消滅……無力化か……完璧に地上から存在を消し去る力とは恐ろしいが……我には真似が出来ぬ力だな……このままでは死に至るが。首だけ残せば良いだけの事。聖典回帰〖首狩り〗」
ドスッ!
ギアートルは自身の首を自ら切断し、〖虚来〗から脱出した。
「何ですのぉ? あれ? 自分から自害するなんて」
「……いえ。あの程度では直ぐに治せますよ。彼ならね」
「再生魔法〖超神星〗」
首だけになった筈のギアートルの身体が元に戻って行く。
「……何だ? そのデタラメな力は。無属性魔法を自分から喰らって生き延びてる?……それに再生魔法だと?」
「初めて見る魔法故に興味をそそられ受けたがな……あれはそもそもこの魔法世界の世界とは異なる力。それ故に取得は諦めよう……それにあの様な力。当たらなけば何の驚異にもならん」
「……想像以上の化物かよ。アンタは」
「化物?……そうか化物と戦いたいのか?……良かろう……獣操魔法〖聖牛闘争〗……遊んでやれ。オーロックス」
奴は株っていた牛の被り物を突然取ると空中へと投げた。するとその牛の被り物が白い巨大な牛へと変化していく。
『ブロオオオオオオ!!!』
「……巨大な牛?……ベヒーモス! 来てくれ!」
「「「オラアアアアア!!!!」」」
俺は最果ての孤島からベヒーモスを何の躊躇いもなく召還した。
『ブロオオオオオオ!!!』
「「「オラアアアアア!!!!」」」
白い牛とベヒーモスは出現と共にぶつかり合いを始めた。
「懸命な判断だな。そうだ巨大な怪物には巨大な怪物をぶつけるのが一番効率が良い。その方が周りの被害が肥大化しやすいからな。マキナ、タマキ、ベヒーモス……下にはユグドラが居る……後、三つか。さあ、どんどん使うが良い」
「……何か狙っているの? 黑衣も無属性魔法も駄目なら匣の力を喰らえ! 異空魔法〖時限結界〗」
「……これも知らぬ力だ。別の異世界の力か? 興味を深い……」
ギアートルの周りに異空間が出現し、徐々に小さくなっていく。これは対象の居る空間を徐々に狭め拘束する空間結界だ。
「───〖殲滅蹴〗」
「?! ここでお前が来るか? マキナよ!」
ドゴオオオンン!!
マキナによる突然の強襲により、ギアートルは空高く繰り上げられた。
「───決まった?」
「いや……ピンピンしてるよ。だがマキナが作り出しこの瞬間を有効に使わせてもらう。〖匣〗の力も通用しなかった……一つが駄目なら三つを組み合わせてお前を倒してやるよ。代理人……黑衣・無匣……〖無限黑廊〗」
俺はソロモン山脈の上空に向けて黑い匣を打ち上げた。
◇
『ソロモン山脈上空』
「……ほう。三つの異なる力を合わせたか。時限を声、地球から来た勇者が得た力は〖調和〗だった様だな。我とは事はなる力……我は【自壊】の力……全てを破壊する滅びの力である。それをこの上空から落とし全てを終わらせよう。死ぬがいいソロモンの峰にたどり着きし者達よ……神明回帰〖ラグナの追憶〗」
上空から凄まじい白い衝撃波がソロモン山脈の峰に降り注ぎ。全ての存在が塵と化した……