決戦前夜
『キャメロット城』客の間
「‥‥‥‥意識が遠退いた」
「大丈夫?セツナ君?」
「あぁ、ありがとう。アル」
明日は決戦だというのに、『妖精国』を代表する円卓の騎士に魔力が使えない部屋に連れて行かれ。ボロボロになるまで剣術の指導を受けた。
「もう!何なの?あれ、一方的に僕達の話も聞かないでさぁ。僕のセツナ君の意識が無くなるまで」
「‥‥‥‥ありがとう。アル。心配してくれて」
「う、うん!‥‥‥えへへ」
俺は優しく。アルの頭を撫でる。まさか、アル。アルディスとこんな関係になるとは夢にも思っていなかった。
最初の‥‥‥『セルビア』の入国館で初めてあった時は、生意気なイケメンエルフと誤解してしまったが、今では、俺の中ではエスフィールや彩音の様な大事な存在へと変わってしまった。
「しかし、ギャラハット卿‥‥ガラ先生の変な薬のせいで痛みも傷、それに魔力も完全回復した。いったい、どんな魔法を使ったんだ!あの人は?」
「‥‥‥なんか、あれだよね。セツナ君」
「ん? あれって何だ?」
「ほら、なんかさぁ。雰囲気とか、不思議な力? かな? メリュジーヌ卿に似てない? メリュジーヌ卿も神代魔法を二種類も使えるし。あの人。不思議な魔法であんな‥‥‥」
「‥‥‥ガラ先生がメリュジーヌ卿に似ているか‥‥‥‥確かにな」
「あぁ、それとセツナ君にも似てるかな? ユナちゃんやサーシャさん、ヒスイ君も」
「案外似ているか奴等が多い気がするけど‥‥‥アルが今、上げた俺も含めた連中の共通点が1つだけある」
「共通点? 何かな?」
「俺も含めて。そいつらは神代の血を色濃く受け継いだり。七聖―女神―と関わりのがある人達。‥‥‥つまり。『臨界突破』の経験がある人達だ」
「『臨界突破』の経験‥‥‥じゃあ、ギャラハット卿も?」
「明らかに『臨界突破』経験者だろうな。それはガラ先生が厄災を救済に反転させた時なのか、中央魔法国での魔法研究の時なのかまでは分からないけどな」
「じゃあ、あのセツナ君の魔力が一切使えなくなってた空間も」
「何かしらの『臨界突破』の力の一端だろうな。まぁ、もう過ぎた事だしこれ以上気にしてもしょうがない。明日は早いもう寝ようアル」
「う、うん!そうだね!お休みセツナ君」
俺達は部屋の明かりを消し。お互い別々のベッドに入った。
なにか起こると思ったかな?‥‥‥‥残念ながら何もなかったよ。
『妖精国』や『セルビア』の事もまだ、解決していない。
(ご主‥‥ご主人様!)
俺が静かに寝息を立てて入ると。いつの間にかタマキが布団の中に潜り込んで来ていた。
(ん? タマキ。、どうした?)
(どうした? じゃあ、ありませんよ。、うちと蓬莱君で色々。準備はしましたが。本来なら明日の決戦で使う筈だったドローンを用意た。大規模召喚魔法陣でご主人様が地球の神。オーディン様を喚ぶ手筈でしたよね?)
(あぁ、そのつもりだったけど‥‥‥)
(ヴォーディカン戦で使ってしまい。一度切りの神の召喚はできなくなりましたね。)
(そうだな。まさかヴォーディカン級が、まだ、地下に潜んで入るなんて思いもしなかったからな)
(‥‥‥‥)
タマキが疑い深く俺を見てくる。
(なんだよ?タマキ!)
(本当に思いもしなかったんですか? 『セルビア』をこれ以上。破壊させないために。オーディン様を喚んだんじゃないんですか? ご主人様)
(‥‥‥‥まぁ、そんな感じだ)
(ほら。全く! どうするんですか? もう、神は喚べませんよ!しかもここは地下空洞。東西南北には、奈落、魔窟、冥界、最果てですよ?天界からも喚びにくい場所と来ています。‥‥‥‥ハッキリ言います。詰みの状態に近いですよ)
(‥‥‥‥まぁ、そうだな‥‥‥その時になったら何とかするさ!タマキも今日はもう寝るぞ。おいで)
俺はそう言うとタマキを抱き寄せた。
(ちょっと。ご、ご主人様?! あっふん! ゴロゴロ)
(お休みタマキ)
(はい。おやすみなさい。ご主人様‥‥‥じゃなくて?は蓬莱君はどこに?)
(蓬莱様? 一足先に魔法の袋の中で入って眠りについたぞ‥‥‥)
(な、何ですって‥‥‥なんて、潔い)
(あぁ、分かったんなら。寝ろ。お休み‥‥‥‥)
(はい。おやすみなさい‥‥‥ってもう寝てしまいましたか‥‥‥‥本当に大丈夫何ですか? ご主人様?)
『世界樹の迷宮』内
「女王様。及びて」「我がギネヴィア。呼んだかな?」
「あら、モードレッドにランスロット、良く来てくれたわ。楽にしなさい」
「感謝します。女王様」
「感謝を我が妻に」
「フフフ、いいのよ。それよりもいよいよなの。明日、私は新たな神になるの! そうでしょう?二人共?」
「はい!女王様」
「あぁ、当然の摂理だね」
「長かったわ。ここまで、ヴォーディカンを利用して長年に渡り。呪いを集めさせ、地上に呪いを撒かせた。地下は地下で円卓の騎士達を北側と南側に分断させるのにどれだけの時間がかかったわ!それも明日で全てが終わるわ」
「はい!」「あぁ!」
「ここまで、これたのも貴方達二人のお陰ね。まぁ、ランスロットの方は最早、脱け殻同然だけど。ねぇ、貴方?」
「あぁ、そうだな!」
「アハハハハ!面白いは貴方! ギネヴィアなんてとっくにこの世にいないのにね! モードレッド」
「はい。女王様! ハハハハハハ! 笑いが止まりませんな! ハハハハハハ」
「あぁ、そうだな」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
「アハハハハハハハ!! おもしろーーい! 無き妻を思ってここまで頑張るなんてね! 本当に明日が楽しみね。モードレッド!」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!! はい! 女王様! ヒヒヒヒヒヒヒヒ」
「じゃあ、開戦の狼煙じゃないけど!細やかな贈り物よ『キャメロット』‥‥‥‥‥神話魔法(邪)『邪陰結界・黒』」
ギネヴィア?女王が『邪陰結界・黒』を唱えると。『妖精国』の中央地帯。地下空域から黒いベールが表れ。中央地帯を丸ごと包んでいく。
パチパチパチパチ
「お見事です。女王様!! ヒヒヒヒ!」
「ありがとう。モードレッド」
「あぁ、そうだな」
「五月蝿いわね。この木偶は」バコン!
ドガーン!!
「あぁ、済まん!」
「女王様。最早、ランスロット卿の心は‥‥‥」
「壊れかけね。まぁ、明日まで持てばいいわ」
「はい!」
「それに『邪陰結界・黒』で外からは誰も入って来れなくなったわ。フフフこれでアヴァロンやユグドラシルにも邪魔されずにゆっくりと神になれるわ。明日が楽しみ過ぎるわね。モードレッド! ◯◯◯◯◯! フフフフフフ」
「おっと。すみません。女王様、ペリノア卿の処遇はどうしますか?」
「あぁ、あのどっちつかずの同等王ね。‥‥‥‥いいわ! ほっときなさい! どのみち、もう呪いの人数は足りている者。逆にあの同等王に呪いをかけたら全てがパーになるなるもの」
「やはり、アグラヴェイン卿が忽然と姿を消してしまったのは、少々、不味かったですな」
「ええ、でも良かったわ。先代の円卓の騎士・ケイ卿が直ぐ近くにいて。そのお陰で不足分を補えたですものね。フフフ」
「これも、日頃の女王様の行いが素晴らしいからです。ヒヒヒヒ」
「そうね。では、私は儀式の準備に入るか後は頼むわね! モードレッド‥‥木偶のランスロット!」
「はい!」
「あぁ、そ‥‥だな!」
女王はそう言い残すと『世界樹の迷宮』の際奥へと消えていった。
北東部。フローレンス領。サグラモール領境
「兵はどのくらい集まった?イフリート、パーシヴァル?」
「はい。我々、三軍を合計すると30000人程は」
「うん、私の領は南側に攻撃を受けてたから。戦える兵士は余りいなくて。集まりがよくないね」
「了解。分かった!」
「‥‥‥フローレンス。どうすんのよ? このまま、明日の朝まで待機しとくの?」
「ベディヴィアかい? 良く間に合ったね?」
「‥‥‥あんたの竜のお陰よ! オロオロオロオロ」
ベディヴィアは汚い何かを吐いていた。
「‥‥‥嫌な予感がする。‥‥‥イフリート‥‥サグラモール卿とベディヴィア卿は20000の兵を率いて待機して!此方とパーシヴァル卿はそれぞれ、5000の兵を連れて今から『ペレアスの湖』へ向かう!それとセシリアとメイエス先輩はレッドドラゴンに乗って此方達より先に『ペレアスの湖』に着いてて!何かあれば、レッドドラゴンで『キャメロット』へ逃げて構わないから」
「「はっ!」」
「ああ、分かった!」「なのにゃあ!」
「な、なによ、なんでそんな、いきなり慌てて!フローレンス!」
「‥‥‥ベディヴィア。あの地下空域の『世界樹の根元』の上を見てみて何があると思わない?」
「『世界樹の根元』の上? んーーー?! なに?あれ? 黒いオーロラ?」
「うん。あれは‥‥‥あれはね……多分だけど神話魔法の類いだよ。用はオーディン様レベルの魔法。」
「オーディン様って、あんた。神話時代じゃあるまいし‥‥‥‥嘘?」
コクり!
此方は小さく頷く。
「中央に入るね。神話の怪物が‥‥‥とりあえず。足と体力に自信のあるもの10000を動かす。皆に早急に伝えよ! 散れ!」
「「「はい!! フローレンス卿」」」
「うにゃあ! なんかメリュジーヌ奴、いつもと違ってカッコいいにゃあ。にゃあ、メイエス?」
「ん? あぁ、そうだな‥‥‥私達も急ごう。セシリア、多分だが、急がねば取り返しのつかない事になる」
「‥‥取り返しのつかない事にゃあ?」
「あぁ、下手したら七聖―女神―の一角がここで落とされるかもしれん。ほれ、呑気に話してないで行くぞ。セシリア」
「待っ、待ってにゃあ、メイエス!!」
戦争が始まる。




