〖博士〗アレイスター No.2 ルアとアナスタシア
ルア・カトリクの都市が再び氷の世界に覆われていく。氷霊帝アナスタシアが博士・アレイスターを見た瞬間。この人物は確実にここで仕留めなければいけないと覚悟したからである。
「ルア・カトリク殿が戦うのは分かりますが、他大陸の始祖・神集九煌の神がこれ程介入するのですか? 氷霊帝アナスタシア殿」
「カハハ! この大陸の者達には昔から世話になったからな。それに親友のルアが治める地を脅かす存在が居るのなら、それに加勢するのは当たり前の事なのだ」
「……いやはや、参りました。参りましたね。これ程の大物が釣れるとは思いませんでした。これでギアートル様の負担も相当軽減出来ますね。火痺魔法〖炎毒〗」
「ウィー、アナ。来る! 聖杯・聖典〖囲いの加護〗」
「カハハ!! うむ。任せよ。青の氷〖氷菓輪〗」
ルアは聖典の力で防御結界を張り、アナスタシアはその内側に氷の結界を張る。その結界はアレイスターが放った魔法もいとも容易く防ぎきった。
「二重結界ですか。無駄の無い美しい魔法結界ですね。素晴らしい……これがギアートル様のご令嬢の力。それに加え、極寒の地を治める神がサポートすれば、私など太刀打ち出来ませんね」
「カハハ! そうだ。負けてもらうぞ。残忍研究者アレイスターよ」
「ほう。私の事をご存じで」
「魔法世界の七大大陸の裏で、悪神ロキと共に数多の悪事を働いてきた〖博士アレイスター〗よ。遂に表舞台に出てきたと思えば、まさか私の親友の国を蹂躙するとはな」
「成る程。私の裏の暗躍を知る方でしたか。ロキ殿のせいで、私の評判も最悪ですか……まあ、それも終末が過ぎれば関係がない事ですが」
「ウィー、アレイスター。そろそろ正気にもどれぇ。そんで父を止めに行くの」
「……ルア殿。まさかお父上の記憶が甦り初めているのですかな?」
「そう……断片的だけど。アレイスターの事も思い出してきた」
「ほう。それは少し不味いですね。これではギアートル様とマギアさんに影響が及んでしまいますね」
「ウィー、マギア母は生きてるの?」
「ええ、生きております……現在はヘファイストス地方に居らっしゃる様ですし、会いに行っていかがですか?」
「それは全部終わってから行くからいい。今はアレイスターを止めるから氷っていて」
「氷っていて?……おやおや。これは油断しましたね。氷霊帝殿の力を見誤っていましたよ。これはどの位の年月で溶けるのですかな?」
「カハハ! 数百年後に氷雪大陸で目覚める様にしてやろう。アレイスター……フリューゲルの元で管理されろ」
「……零度のフリューゲルですか。それはそれは、終末の後とは……未来の世界の話ですね。終末を待つ私に、終末を越える未来の話をするとは……なんと皮肉が効いた話でしょうか」
パキンッ……!
七死霊・博士アレイスターはそう告げると氷霊帝アナスタシアが造り出した氷帝結界の中で数百年の眠りについたのだった。
〖博士〗アレイスター
終
 




