〖博士〗アレイスター No.1 我が友の為に非道な研究を
神話時代『ヘファイストス地方 イシス研究所』
「アレイスターよ。―女神―研究の方はどの位進んでいる?」
「これはこれはギアートル様……失敗です。殆どのの女神因子にロキが細工をしたらしく。生き残っているのは第一世代のヤマトタケルとフォルトゥナだけかと」
「……また奴か。破壊神の遣いだと言っていた為、監視も付けずに自由にさせていた結果がこれか……研究は全て凍結しよう。そして、ここには第一世代の成功体であるイシスに守護させ、異界化させる。さすればあの悪神ロキといえど簡単には悪戯できなくなるだろう」
「懸命な判断です……では私はその悪神の監視に付きましょう」
「良いのか? アレイスター……お前の夢は確か世界中を旅し、世界の研究をする事ではなかったのか?」
「それは貴方の夢が叶ってやれば良い事ですよ。全ては私の命の恩人たるギアートル・ホーエンハイムの願いの成就の為に……それで私が悪魔と罵られても叶えます。貴方が創る新たな平和の世界の実現を」
▽
『ヘスティア地方 ルア・カトリク』
「……いやはや。驚きましたよ。まさか私が造り出した数万の実験体をたった数百匹の竜達に全滅させられるとは」
「はぁ、はぁ、はぁ……夜叉よ。まだ戦えるか?」
「は、はい。ク、クロとニーズヘッグの皆のおかげでそれ程のダメージは喰らってませんので」
「そうか。それは良かった」
「……流石、ギアートル様がイシスを護る為に選択された西側を任させていた龍種の一族。自力が違いますね。それにこの地は本当に隔離されていて良い土地だ。教皇アトスや悪神ロキなどが欲しがるのも納得がいきます」
「教皇に悪神?……まさか。貴方は神々の黄昏の一人なのですか? 白衣の方」
スーツに白衣とシルクハットを被るその人物に夜叉巫女は語りかけた。
「数日前までその方々をサポートするのが私の役目ですが、ロキ殿が死んだ事でそれも終わりを告げましたよ。今は親友のギアートル様の為に今までのやりたくもなかった研究の成果を引き連れて貴女達の相手をしているだけです。終末の時間稼ぎですな」
「終末?……それはいったい?」
「おや? 何も知らないのですか? まあ、それも仕方ありませんね。ヘスティア地方は沈黙と秘密を内包する秘匿の場所。知らされないのも必定というものです」
「貴様。先程から五月蝿いぞ。自分では全くといっていい程、戦わず。可笑しな魔獣達だけに戦闘をさせている卑怯も……」
「火痺魔法〖火毒〗」
博士アレイスターの掌から紫色の火がクロに向かって放たれた。
「ぐっ! これはなんだ?」
「ク、クロ! 大丈夫ですか?」
「誰が卑怯者ですか。これでも私はギアートル様と共にこの魔法大陸の神話、神代、現代、新名魔法とあらゆる魔法体系を確立した。魔法の専門家。そんな私が戦えないわけないでしょう。私は貴女達が終末の邪魔をしない様に派遣されたまで、ダラダラと戦い何も知らないまま終末を過ぎて頂く為に」
「……これは痺れる毒か……成る程。同士たちはこれを喰らって身体が動かなくなったのか」
「クロ。今、治癒魔法師が来てくれますからね」
「そうそう。ゆっくりとやりましょう。ギアートル様の邪魔にならない様に。といってもヘラ地方には幾人かの邪魔者が入り込んでしまいましたが、アルデバランが戻った様ですし良しとしましょうか……長く険しい道のりでしたがようやく終わりが近付いて来ました。私はギアートル様の苦悩を間近で見ていた一人。新世代などにあの方の願いを邪魔させませんよ」
「ギアートル……七聖教会とルア・カトリクの創設に関わった人物ですか。そんな遥か昔の人が今更何を……」
「全ては世界を救う為です。その為、ならば私達。七死霊は何でもやる……」
「ウィー! 敵居た! 聖杯・聖典〖光脚〗」
「カハハ! だな! 〖青の氷〗・『青雪の都市』」」
パキンッ……
「ほう。私に蹴りを与え、私を逃さない為に即座に氷の結界を張りますか。何者です?」
「ウィー、ルア法王」
「氷霊帝アナスタシアだ!」
「……これは思っていたよりも大物が現れてくれた様ですね」
アレイスターはそう告げると不適に笑うのだった。




