影の国の霊王
魔機車が凄まじいスピードで死の大地の広野をひた走る。これもセシリアが魔車の速度調整ボタンをおもいっきり押したせいだ。
「ニャアー! めちゃくちゃ揺れるニャアー!」
「セシリアは大げさじゃのう。こんな揺れ、次元の狭間の移動時よりも楽ではないか」
「あー、あれな。周りがぐにゃぐにゃ揺れて気持ち悪くなるよな」
「うむ。あの場所を最初に通った時は気分が悪くなったものじゃ」
「まあ、あの中は色々な世界と繋がってるらしいからな。魔力回路が乱されるだろうな」
「そうなのか? それは初めて知ったのう」
「オニャエラ!! こんな時にイチャイチャと普通に会話してるんじゃニャいニャアー! 目の前を見ろニャアー! でっかいお城にぶつかるんニャゾ!!」
「おう! あれが影の国の城、ゲイボルグ城だぜ! アインズさん」
「ニャアア!! ヒスイ! オニャエも、なに普通に冷静でいるのニャア! ぶつかるニャアア!!」
「ああ、不味いな。エスフィール。俺の手を……転移で外に出るぞ」
「うむ! 分かったのだ」
「アインズさん。俺達は影の中から逃げるぜ! 〖無闇影〗」
「ニャアー? 逃げるニャア?!」
ドガアアンン!!
セシリアの叫び声が車内で響き渡ると同時に、ヒスイが言っていたゲイボルグ城に暴走した魔機車が激突した。
《相変わらず賑やかな者だな。少年……我が城へ招こう。〖メヒスト〗》
ズズズ……
転移魔法で外に出ようと魔法陣を展開していたが、何か強大な力に引き寄せられ、強制的に別空間へと移動させられてしまった。
「……何だ? 外に脱出しようとしたのに……結晶に囲まれた部屋?」
「かなり広いのう……まさか人族が住めぬ様な死の大地にこのような場所があるとはのう」
俺とエスフィールは強制的に転移させられた部屋の中を見渡した。
ズズズ……
「そう警戒する事はねえぜ! お二人さんよう! ここは霊王の城の中、ゲイボルグ城内だぜ。なあ、霊王さんよう」
「ニャア……死ぬかと思ったニャア~」
俺達に遅れてヒスイとセシリアも結晶の部屋の中に現れた。
「ああ、ゆっくりとしていくと良い。夜霧の友達よ……そして、久しぶりだな。少年。元気そうで何よりだ」
「良好……元気そうで何よりだわ。カミ君」
大柄な身体と金色の王冠を被った人物と……赤茶色の艶やかなロング髪、紫色と赤色のオッドアイ、黒色のフードを被った女性が俺を嬉しそうに見つめていた。
「その声はヘファイストス地方であった……レオンさんと……スカサハ? 何で君が此処に?」
俺は二人の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。