レイド領から影の国へ
『ヘラ地方 レイド領』
俺達は今、ヒスイに案内され、ヘラ地方の北側を九条先生が用意してくれた。魔機車と言うのに乗って移動している。何でもレイド領地の北にある影の国を経由しなければソロモン山脈の頂上には辿り着けないんだとか。
「は? 魔法大陸の七つの地方それぞれに刺客が放たれただって? まさか女帝の話と昔、魔術院で読んだ終末録の記載通り。七つの死霊の脅威が本当に現れるなんて……」
「おうよ! ヘラ地方には、さっきの骨野郎。ユグドラシル地方は確かサテュロスとか言う獣の始祖だかなんかが現れたって、レイサイトのオッサンは言っていたぜ!」
「サテュロス? それ、わっちのご先祖様の名前ニャア! ニャンでそんなの古い時代のニャツが今になって現れるのニャア?」
「……英雄サテュロス。遥か原初の人物だぞ。それに不死騎士は自身の領土を脅かさぬ限り敵対行動は決して取らない温厚な方だった。それがあれ程好戦的になるなど信じられん」
「エスフィールは不死騎士と面識あるのか?」
「ん? うむ。昔、闇系統の魔法を教えて頂いた。魔法の師の一人じゃな。会ったのは小さい頃だったし半年程しかお世話になっておらんかったが。あっちは私の事が分からなかった様だ。優しいお方だったのをだがのう」
「……それがあんな好戦的になったと。ギアートル・ホーエンハイムに何かされたのか?……七聖教会創立者の聖人に」
俺達は移動しながら、ギアートルや不死騎士について議論していった。だが相手側の事を何も知らない今の現状では憶測でしか思案できない。
「……こりゃあ。あれだな。おい! 一度。影の国に居やがる霊王にそのギアートルやら不死騎士について聞き入って情報を吐かせるしかねえぜ。神成。アイツは遥か神話の時代から生きるバケモンだからよう。何でも知ってやがるんだ!」
「影の国ってスカサハの……成る程。、今、向かっている場所でもあるし。その霊王という人に会ってみるのも手か。良し! そうと決まれば魔機車の速度を少しあげよう。終末の時間は刻一刻迫って来てる……このボタンを軽く押せば」
「了解ニャア。わっちがそのレバーを引いてやるニャア……良いショットニャア」
バチンッ!
阿保が魔機車の速度調整ボタンをおもいっきり叩いた。そして、魔機車の走る速度がめちゃくちゃ上がり。
ゴインゴインゴイン!!
制御が効かなくなった。
「ニャアー! 暴走し始めたニャア! なんでニャア?」
「馬鹿やろう。そりゃあ。あれだけ乱暴に叩けばそうなるだろう! 駄目だ止められない」
「うぅ……刹那。私、吐き気が……」
「ハハハ! アインズさんは相変わらず面白れえ女だな!」
こうして俺達は暴走魔機車に揺られ、影の国へと高速で移動していくのだった。