〖死の大地〗ヘラ地方へと
九条先生に連れられてウチの近くの竹林を抜け、廃墟と化した神社の鳥居を潜ると、そこはまるで宮殿の様に広いお社が広がっていた。
九条先生が言っていた九条神宮というのがこの場所なのだろうか。
狐耳巫女装束姿の女の子達が沢山いた。そして、それに混ざるように何故か、俺の幼馴染みのアヤネと……神無月、元委員長が巫女服姿で現れ、俺に襲いかかって来たのだ。
そして、何をされたかというと……怪しげな部屋に連れ込まれ縛りあげられた後、説教と謎の詠唱を聴かされその後はアヤネ達と別れた後の旅の事について最後まで説明させられたのだった。
〖逆転の部屋〗
「……あの詠唱本当に何だったんだ? マジで少し魔力が戻ってるぞ」
「何じゃ? くんずほぐれずでもやっとたかっと思っておったが、違ったのか?」
「ニャー、そうニャア、あの二人発情してたニャア~」
「……ああ、縄でグルグルにされた挙げ句数時間、説教と懇願されたな」
「懇願?」「懇願ニャア?」
「ケレス女学院から……女の花園からの脱出を手伝ってとか、意味の分からない事を泣き叫びながら俺に頼んできたな……凄い剣幕で」
「ほう。あのアホ二人……私が居ない間にその様な事を言っていたのか……今日からアイツ等の修行と勉強の時間を倍にさておいてやるか」
「九条先生! いつの間に……」
「うむ。遅れて済まんな……色々と準備を済まして来て少し遅れてしまった」
「……準備ですか? 何の?」
「ああ、いずれお前達に役に立つ事だ。それよりもさっさと修行を始めるぞ。時間も惜しいからな。先ずはこの部屋の説明をする。この部屋に居る者は一日を百日に引き伸ばす事ができる」
「一日を百日……」
「それはもう聞いてるニャア」
「ええ、とても便利な部屋だと思いました」
「うむ。そして、部屋の外に出れば知識と経験だけが魔力懐炉に刻まれ、部屋で過ごした老化もリセットされ、外見も逆転の部屋に入る前に戻る……」
「外見も?……それってオルビステラの世界の話と少し似ていますね」
「オルビステラ……〖世界〗か……ああ、それもそうだろうな。元の造りは同じなんだろうとも。この部屋は世界の理から外れた世界……【絶空】の世界なのだからな……世界から切り離された世界が時たま現れる。それが絶空だな」
「絶空ですか……」
九条先生はそう告げると部屋の中を一瞬見渡し。
「良し、これよりお前達の修行を開始しよう。神成の魔力が全て戻る三日間……いや三百日の間にお前達を鍛えるだけ鍛える……死にものぐらいで食らいついて来い」
九条先生はそう告げて扇状の武器を構えた。そして、とてつもない圧の魔力残滓を周囲に放ち始めた。
「ニャア……あれ? わっち。いつの間にか元の姿に戻ってるのニャア。やったニャア!」
「セシリア! 気を抜くでない。九条先生に殺されるぞ」
「ニャア? ニャンでニャア?」
「……とてつもない殺気を俺達に向けているからだよ。こりゃあ、本気でやらないと不味いのは確かだな。エスフィール、セシリア。最初から全力でいくぞ! 地球の最強種様が本気で鍛えてくれるんだからな」
「うむ!」「良く分からないニャイが分かったニャア!」
「ああ、それで良い。そうすればギアートルの馬鹿にお前達なら勝てる可能性が出てくるからな」
こうして突然の事だったが、九条先生との〖逆転の部屋〗での三日間……いや、三百日間にも渡る修行が行われ。残りの半日、逆転の部屋では五十日間を身体を休める休養に努める事になったのだった。
◇
三日と半日後〖九条神宮 蘭菊の門〗
「じゃあ、九条先生。魔法世界に向かいます」
「……逆転の部屋での約一年。お世話になりました」
「ニャア~! メチャクチャスパルタだったのニャア!」
「頑張ってきますわ。九条先生」
「活躍するんだから!」
「……スゥー……ハァー……キラとスイ。天王洲と神無月をクレスへと連れて行く。捕獲しておけ」
「はい。姉様」「了解です。お姉様」
「へ?」ドスッ!
「何?」トンッ!
……俺達の直ぐ近くにいたアヤネと委員長が九条先生の部下?のキラとスイと言う子達に一瞬で拘束されてしまった。
「お前達はこっちに残って私と一緒に狭間の空間の結界維持だ」
「い、嫌です! 私もセツ君と一緒に再び魔法世界に旅に……きゃあ?」ドスッ!
「そ、そうよ。また、新しい冒険に出るのよ。も、もう。百合は嫌なの!……にゃあ?」トンッ!
「終末がもう少し遅く来ていれば、それも出来たがな。今は地球と魔法世界を繋ぐ空間の維持の手伝いを優先しろ……昔よりも強くなったのは分かるがな。今は緊急時、諦めろ」
「……そんな。セツ君!」
「……私達だって魔法世界を救いたいのに!」
アヤネと委員長は捨てられた子犬の様な目で俺を見てくる。
「そうか。二人共。狭間の結界維持頑張ってくれ。行って来る!」シュンッ!
「……アヤネも恵も大変そうじゃのう。またのう」シュンッ!
「世話になったニャア。地球の世界のセツニャの仲間達。またニャア~」シュンッ!
「………アイツ等。とても良い笑顔で去っていったな。天王洲、神無月……それでは行くとするか。ケレス女学院とな。プッ……」
「「こ、この白状者!!」」
───こうして俺、エスフィール、セシリアの三人はアヤネと委員長を置いて。再び魔法世界へと帰還したのだった。
◇
『魔法世界 ヘラ地方』
シュンッ!
「おお! 一瞬で魔法世界に着くのか?……凄いな九条神宮にあった蘭菊の門って……ここは何処だ? やたらと魔力濃度が濃い様な」
「……死の大地の入り口。影の国じゃな」
「ニャア…ニャンか空全体が黒い雲に覆われてニャイかニャア?」
九条先生が用意してくれていた蘭菊の門を通った瞬間。次元の狭間を経由せず一瞬で魔法世界へと着けた……着けたのだが、何だか周囲の様子が少し変だ。
【ほう……ゼロの戻りから帰還するか。救いの者達。成る程。これも運命、受け入れよう】
俺達の後ろから突然、声が聴こえて来た。とても冷たい声が、その声の主を確認する為に後ろを振り向くと……
「……髑髏の騎士?」
「こやつは……まさか?」
「骨しかねえニャア!」
【さよう。我は髑髏の〖不死騎士〗アルデバラン・アルカ〗……そして、去らばだ救いの者達……〖死剣〗】
〖不死騎士〗と名乗る髑髏男はそう告げると、黒い大剣を俺達に向けて振り上げ向かって来た。だがその瞬間間に割って入る様に黒い鎧を見に纏ったアイツが現れた。。
バキンッ!!
「よおぉ! 探したぜぇ! 骨野郎! そろそろぶっ殺す!」
【貴様は……夜霧の……そうか。貴様の方が先か】
「ヒスイ?」
「何故、あやつがここにおる?」
「ニャー、いきなり現れたニャア」
「おう! 久しぶりだな! お前等! 少し待ってろ! この骨野郎をぶっ飛ばして直ぐに感動の再会といこうじゃねえかよ!」
俺達の目の前に夜霧のヒスイが姿を現し、不死騎士の剣を受け止めた。
【笑止……】