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北欧の義兄弟 No.3 狂えるものの長


 万物の神 、戦争と死の神、 魔術と狡知の神北欧神話最大の神にして、〖ワイルドハント〗の主。


 そんな存在が身近にいて、更に義兄弟ならばどんな悪事や裏工作をしてでも、おとしめてやりたいというのは、神や人だろうと考えるものではないのかい?


 常に自身よりも高次元の存在が近くに存在するというのは、辛いと思うのはボクだけじゃない筈だ。 


 そんな奴が居たら。陥れてやりたいし、惨めにしてやりたいと思うだろう?


 だからボクは地球で死んだ後、あの御方の力によって甦り、この魔法世界アリーナで不幸の連鎖を作り続けて来たんだ。


 このヘファイストス地方にある崩壊した〖異界イシス〗が外界と隔離したのもボクの仕業。


 ヘラ地方が荒廃した死の大地になったのも。


 〖博士〗と共に研究して魔神種が化物へとなったのも。


 七大大陸が混乱するようにずっと動いていたのは、ボクの功績さ。


 ……そうすればこっちの魔法世界ではボクの方が有名になる。ボクがオーディンよりも皆からチヤホヤされる。ボクはアイツを越えられるんだ。


 地球では出来なかった。万物神オーディンを凌駕できる。ボクの一人だけの力でアイツに勝って。アイツにボクの方が凄いと認めさせられるんだ。


 何が魔法大陸エウロペの英雄だ。神代魔法の祖だ。


 何で君までこっち側にやって来た? ここはボクの世界だ。ボクが主役で活躍する崇高な創造世界……主役は君じゃない。ボクなんだよ! 邪魔者のオーディン。



「老いぼれが若返ったくらいで何が出来るんだい? 〖葉のラウフェイ〗」


『ウフフフ!!』


「……自身を母親さえも道具とするか。来い! 〖グングニル〗」


 蜘蛛と女性が融合したような怪物〖アラクネ〗がロキのてのひらから現れる。そのアラクネの女性の顔はロキと瓜二つのに似ていた。


 そして、オーディンはアラクネに対抗する為に、雷纏う槍〖グングニル〗を魔力嵐渦巻く砂漠へとヴァルハラから呼び寄せる。


「狂気の主の雷槍〖グングニル〗かい。どうやら本気でボクを殺す様だね。義兄弟」


「貴様は俺の子供を……ヘズをそそのかし、バルドルを殺させた。それだけではない。北欧でも、魔法大陸エウロペでも、その優れた知略を自らの欲を満たす為にしか使わなかった。そして、最後にはこの終末を繰り返そうとする始末。ラグナログを」


「だからなんだっていうんだい? それで君を越えられれば、世界何てどうなったって良いだろう! 母さん!」


「フフフ!!」


「ラウフェイ……今、解放する。〖ウィルド〗」


「馬鹿かい? そんな単体のルーン文字でボクの母さんがヤられるわけないだ……」


「フフ……」ブシュ……パンッ!


「は? 何で身体が弾きとんだ?」


「一足先にヴァルハラへと向かわせた。ラウフェイのこんな姿を他の奴等にみられたくないからな」


「……オーディン。何でいきなりそんなに強くなったんだい? これじゃあ、ボクが君を越える計画が」


「そんなものは知らん。お前はそうやって言葉を巧みに操り、戦いを長引かせて自身の有利な状況へと変えていくタイプ。故にお前との戦いは短期決戦が最も有効な手段……お前の話はヴァルハラに帰還した後にゆっくりと聞こう」


「いや、そんな事はどうでも良いんだ。まずはその強さを」


「神明決戦雷槍……回帰……この名を〖グングニル〗……射手は万物が神オーディンなり……この雷槍をもってこの世界への謝罪とする……軍神の雷槍ハラス・トール


 北欧神話のあらゆる狂えるものの長〖オーディン〗が放った雷槍はロキの腹部目掛けて飛んで行き、ロキに全く気付かれぬまま突き刺さった。


「だからボクは話を……ガァ?……ゴレハ?……グングニル? かつて、オーディンにボクがあげた物でボクを刺すのかい? オーディン!!」


(ほう。良い槍だな)


(欲しいのかい? なら君にあげよう。義兄弟!)


「……これも魔法世界の未来の為だ。イシス殿! 今、です」


シュンッ!

「ええ、ありがとう。大英雄オーディン」


「お前は! 女帝イシス?! 丁度良かった。ボクを助けてくれ」


「………久しぶり。ロキ」


「ああ、久しぶりだね。地下にある施設の心配作のガラクタ達も起こして、皆でオーディンを殺して……」


「そうね。だから殺してあげるわ。ロキ……この〖写しみの水晶〗の魔力暴走で。オーディン様は上へ」


「了解した。だが全ての終末が終わるまで、この結界内にいさせてもらう」


「はい……」


「オーディン! 何処に行く気だ? 逃げるのか? 何故、イシスと結託している? イシス。お前は〖神々の黄昏ラグナログ〗の仲間だろう! なのにこんな事をして、〖代理人〗に逆らう気かい?」


「それで貴方が破滅させたヘカテと、私の悲惨な運命をつぐなわせる為。さようなら……悪辣で悪趣味な黒幕の一部さん。コピーの私と逝きましょう。〖イシス・ベーベイト・エル〗」


「このボクがこんな……簡単な罠で……このボクが死ぬわけないだろうがあぁぁぁ!!」


 イシスと神成の策はこうだった。崩壊する異界イシスの状況を見に来るであろう。ロキの捕縛か討伐。


 その為にヴァルハラへと信託を送り、オーディン召喚の契約を完了させた。


 その後は〖写しみの水晶〗で〖女帝 イシス〗のコピーを造り出し。時が来るまで砂漠の底で時が来るのを待っていた。


 その瞬間が今だった。若きオーディンが放った〖グングニル〗により、身動きを封じられ。


 逃げる事が確実になった時、写しみの水晶の神核とロキが数多に所有する奪った命である〖神核〗が反応し、大爆発を起こした。


 その爆発に反応した魔力嵐が更なる超爆発を生みイシスが張った結界内を黒煙に包む。


 そして、それはロキを確実に殺す為の神摯と化し。一瞬で悪戯の神を魔法世界アリーナから消滅するのだった。


「アアアアアア!!! 身体が保て……このボクの身体が……死ぬ……」


「幾ら。数百、数千の神核を持ち合わせようとも、異界結界と魔力暴走の嵐の中では無意味だった様だな。ロキ……ヴァルハラへと向かい永遠に封じられ、今までの行いを反省しろ。義兄弟………そして、この青色の大爆発はこの魔法世界アリーナ全世界に響き渡り、終末が始まりを知らせる鐘となった。反撃せよ。新世代の英雄達よ!」


 オーディンはそう叫び、ヘファイストス地方の空を見上げた。


 そう、この爆発は危機を報せる狼煙であった。七死霊が襲いかかる各地方の実力者達に、世界の危機を報せる反撃の狼煙である。



北欧の義兄弟

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