強制帰還
地球『神成邸宅 リビング』
「……どういう事だ? 一瞬で……地球に飛ばされたのか?」
「う、うむ。恐らくはあの変な仮面を付けた者の仕業であろうが……次元の狭間を通らずにセツナの家に居るのう」
「……何だったんだろうな? あの仮面の奴は…」
「ニャアアア!! わっち! 毛むくじゃらで小さくなってるニャアアア!!」
「は? セシリアの声? 下から聴こえて来たぞ」
俺はそう告げるとリビングの下を見渡しはじめた。
「……そんなわけなかろう。セシリアは確か転移門を潜れない様にお主が契約をしておったんじゃろう?」
「ニャア? セツニャとメイエスと声が上からするニャア! わっちはここニャア! 助けてくれニャア!」
ニャアニャアと五月蝿い声がリビングに響き渡る。俺は耳を塞ぎながらテーブルの下へと目をやると、セシリアそっくりの子猫がそこに居た。
「……は? 子猫? 何処から入って来たんだ?」
「ニャー? セツニャ!! やっと見つけたニャアアア!!」
子猫がいきなり喋り出し、俺の顔面へとダイブして来た。
「その声はセシリ…ガハァ?!」
◇
「……セシリアの身体が子猫になってしまうとはのう。プッ……」
「ニャー! メイエス。今、わっちのこの姿を見て笑ったニャア? 怒るニャゾ!!」
「しかし、獣族がこっちの世界に来ると獣の姿に変わるんだな。初めて知ったぞ。ほれ、エスフィール。トマトとゴルゴンゾーラのパスタだ」
「おお、旨そうじゃのう。ありがとう」
「ニャアアア! セツニャは何でそんな冷静に料理作って食事を初めてるのかニャア? わっちが心配じゃニャいのかニャア?」
「さっきアナスタシアに連絡したらこう連絡が来た。魔法世界に戻れば、強制的に元の姿に戻れるだろうってな。だからしばらくはその姿で過ごしていてくれ。セシリア」
「ニャー、わっちはどこに行っても軽い扱いなのニャー、それに最近は色々な所に飛ばされている気がしてならニャイ」
「おお、ヨシヨシ! そう落ち込む出ないセシリア。その子猫の姿、とても愛くるしいぞ。是非ともモフモフさせてくれ」
「ニャオン? や、止めるニャア。メイエス。くすぐったいのニャア!」
エスフィールはそう言ってセシリアを抱き抱え、撫で始めた。
「……しかし、あの仮面の奴と良い。セシリアの事といい。次から次へと何が起こり初めてるんだ?」
「フレイヤ地方で〖星〗をへファイストス地方で〖女帝〗の神々の黄昏を倒したのだろう? それならば追い詰められた奴等が本格的に動き初めても可笑しくはあるまい。地球の大アルカナとやらに従えば、奴等の人数も残すところ後、二人なのだしのう」
「いや……〖女帝〗は倒したというよりも、アイツを誘き寄せる為に消えたというか。足止めしてくれているというかでな」
「何じゃ、変な言い回しをして、それよりもどうするのじゃ? 再び、魔法世界に向かうのじゃろう」
「向かいたいのは山々なんだけどなさ……強制的次元の狭間から地球に戻されて、転移門を開く為の魔力が足りないんだよな。そのせいで〖最果ての孤島〗や〖黄金の宝物庫〗も発動出来ないしな」
「何じゃと? では中に居る者達はどうなるのじゃ?」
「いや、そこは心配いらないと思う。最果ての孤島と黄金の宝物庫には、数年は暮らせる衣食住の備蓄があるんだからな。数日、外に出なくても大丈夫だと思うぞ」
「……それならば。よいがな……魔法世界に戻るのに数日かかるか。参ったのう。〖神々の黄昏〗の連中が動き出したとなったならば、奴等の事じゃ魔法世界中に攻撃を仕掛けるかもしれんのう」
「ああ、だから。あっちに戻る際はルアとアナスタシアも連れて行くつもりだよ。あの二人がいれば次元の狭間を移動する時に、邪魔されないですむしな」
「懸命じゃな。では、私達はセツナの魔力が回復する数日の間に、色々と準備せねばならんな。セシリアよ」
「ニャ~♪ 準備するニャ~♪」
セシリアはエスフィールに喉元を撫でられてサ○エのタマの様な鳴き声を上げた。




