虹霓決戦・〖豊饒の女帝は真実と共に〗No.10 崩壊と再会
〖異界イシス〗
シュンッ!
「……イシスから最後に渡された鍵……これがあれば死の大地の奥地へと行けるか……じゃあな。イシス……元気でやれよ」
イシスと地下へと行って、彼女の案内で地下の施設を案内され、半日程たった。その後、彼女は俺の前から忽然と姿を消したのだった。
ドゴオン!!
「あら? 弟君。戻って来られたのですか? イシスはどこに居るのです? 一緒ではなかったのですか?」
「……あの娘なら居なくなりましたよ。ヘラ……エリスさん……随分と暴れた見たいですね。そこら中火の海で瓦礫しかないなんて……」
「それはあの方達が暴れたからです。私はただ、私に向かってくる方々に大人しくして頂いていただけです」
「大人しく.….そのおんぶしている女の子……息してませんよね? 殺したんですか?.」
「馬鹿な事を言わないで下さい。この子は瓦礫の間に挟まれていたところを助けようとしたんです……それで間に合わなくて……」
「……そうだったですか。疑ってしまってすみません」
……まだ。ヘラ神に心を乗っ取られていないんだな。いや……そもそもヘラ神はエリスを護る様にして闘って居るのか? あの神は本当に行動が予測不能な神様だから困るんだよな。
「ガハハハ! ここに居たか? 女……そして、ソイツが次元を渡れる術を持つガキか?」
「皆さん無事でしたか。良かった」
「……勇者に似た姿の少年?」
「セツニャア!! ニャンでオニャエが此処に居るのニャア? もしかしてわっちを助けに来てくれたのかニャア!!」
「……血塗れの男二人に、フェンリルと……セシリア?! 何でお前が此処に居るんだよ」
「小僧。今はそんな事などどうでも良い……さあ、この異界が壊れる前にワシの願いを叶えよ」
「は? 願い……ですか?」
「次元の裂け目を造れ……ワシはそこから新たな別世界へと向かいたいのだ」
「は? アンタ。死ぬ気か? アテナ様の許可なく次元渡り何て……」
「良いから早くせよ。貴様等には戦闘と言う十分な対価を払ってやったのだ。だからさっさと黙って発動しろ」
黒フードの血塗れの男はとてつもないプレッシャーを放ってきた。今、この人に逆らえば、俺は殺されると悟った。
「……分かりました。何があっても知りませんからね。転移門よ……」
俺のその一言で地面から何処の世界に繋がっているかもわからない転移門が現れた。
ガコンッ!
「ほう。これが伝説に聞いた転移門か……アーサー……ワシは行くぞ。永らく世話になった」
「ええ、僕の方こそ! また、何処かでお会いしましょう。アリババ」
「ガハハハ! ウム! ではな! 親友よ!」シュンッ!
アリババほそう告げると一切の迷いなく転移門へと入り、一瞬で姿を消した。
「アリババって……もしかして建国者の……」
「では次は僕の質問に答えて下さい。勇……弟君」
「次はアンタかよ」
「私のかつての愛剣〖エクスカリバー〗は今、何処に居るのですか?」
「エクスカリバー?……もしかしてアン……アナタは……」
「ええ、遥か昔の聖剣の持ち主。アーサー・ペンドラゴンと言います」
「……貴方がこの世界……妖精国の王様の……そうですか。エクスは今、〖アヴァロン〗に還ったと思います。ですからセルビアに戻れば……」
「……再び、再会出来るという事ですね……それでは先ずはこの異界からおさらばしなければ行けませんね」
「セツニャ! 早くわっちを安全な場所に連れて行くのニャア。コイツ等と居ると危険いっぱいるのニャア!」
「なんですか? セシリア。私に何か文句でもあるのですか?」
「ギニャアア!! エリス! オニャエ。そんな血塗れの状態でわっちに抱きつくニャアア!! 血塗れになるニャアア!」
「……ではこの異界から脱出しましょう。皆さんは私の背中へお乗り下さい」
フェンリルはそう言って、身体を大きく肥大化させていく。俺達はその背中へと飛び乗った。
「異界の外は確かヘファイストス地方と繋がっていましたね。聖槍……解放……〖ロンゴミニアド・レクイエム〗」
虹色の光が異界の上空へと打ち上げられる。その光は上空の白いオーロラを全て破壊し、外界へと繋がる大穴を開けた。フェンリルはそこへ向けて走り、中へと入った。
「……まさか俺が着く前に異界を崩壊させる何て思わなかった。これが聖女エリスの……いや、死の大地ヘラ地方を統べる―女神―ヘラの力なのか」
俺は静かに血塗れ姿のエリスを見つめながら独り事を漏らし、崩壊していく異界イシスを後にしたのだった。
豊饒の女帝は真実と共に
終
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第六部〖異界創造〗編終了
最終部〖七死霊・決戦〗編へ
今日を持ちまして第六部〖異界創造〗編が終了しました。
明日から最終部〖七死霊・決戦〗編が始まりますので宜しくお願い致します。