虹霓決戦・〖豊饒の女帝は真実と共に〗No.9 異界イシスの真実
その地下は辺り一面がガラス張りの施設だった。
壁一面には血の痕がついており。何かが暴れた様な痕跡が所々に広がっている。
「ビックリでしょう? 異界の地下にこんな場所があるなんて?」
「……ここはいったい何だ? イシスさん……何でこんなに破壊された痕があるあっちこっちに」
「……シルヴィア……ヘカテを弔ってあげなさい」
(はい。イシス様……)
イシスが俺の話を遮り、ヘカテの遺体をSF映画に出てくる用なカプセルポットの中へと丁寧に乗せた。
すると何処からともなく女性の声が聴こえ、ヘカテが入ったカプセルポットが何処かに運ばれて行ってしまった。
「お、おい。良いのか? ヘカテは君の大切な人だったんじゃないのか? あんな透明な機械に入れて危ないんじゃ」
「あれはここのシステムの《シルヴィア》……害は無いわ。それにここなら地上と違ってヘカテを安全に眠らせてあげられるもの……貴方の質問に答えましょうか……ここはね。地球の神様達をコピーして、全く新しい神様達を創る為の施設だったのよ」
「……地球の神様達をコピーして?……いや、それ事態はヘカテに少しは聞いていて知ってはいたが……ここがその施設だと?」
「そう。ヘカテは貴方に教えてあげていたのね。意外ね……ここはね。七聖―女神―降臨計画の発案者《KT・ホーエンハイム、ゼロ、アレイスターと言う人達が共同で造った施設なの。そして、私は此処を守る番人兼当事者として、ずっと女帝を演じてきたか弱い少女なのよ」
「七聖―女神―降臨計画? 何だそれ? そんな話、ヘカテはしていなかったぞ。あの人は此処は女神を神工的に造り、失敗策は精神が汚染され狂っていくと言っていたんだ」
「……概ね会っているわね。まあ、そうなった原因は北欧系譜のコピーの神……《ロキ》が関わってせいよ」
「北欧系譜のコピー……がロキ?」
「あの偽物の零世代の神は、魔法世界に存在する七大大陸の歴史に少し介入しては、悪意と不幸をばら蒔いてきたお調子者者なの」
「北欧の悪戯の神のコピーが七大大陸で暗躍……」
「だけどこの異界イシスは私が護っていたから今、まで無事てすんでいたんだけど……それも今日で御仕舞い。ヘラの眷属を招き入れた時点で終わったわ。亜人の王フレデリカは、勝手に盗賊王と妖精王を私に内緒で幽閉していたし……恨みを買ったわ。臨界者が三人も同じ場所で共闘するなんて思いもしなかった。詰みよ……あらゆる意味でね」
「……だから敵である俺にこんなに色々と話しているのか? 神々の黄昏の大アルカナNo.3よ」
「……ええ、そうよ。七聖―女神―アテナの眷属〖神ノ使徒〗さん」
一瞬、沈黙がこの場を支配した。
「……闘うか?」
「いえ、無理ね。私の大アルカナ〖女帝〗はこの〖異界 イシス〗を司る為に使っているの。〖皇后〗〖大地〗〖ビーナス〗は常時発動型の力。それをあの三人の臨界者達に破壊尽くされた……そのうち大アルカナの力も失われていく……消えるわ。そのうち……この〖異界 イシス〗を護る結界と共に」
「そうなのか……」
「ええ、だから。貴方にはこの施設と魔法大陸の真実を教えてあげる……それがヘカテの望みだから。演技も疲れたもの」
「……その台詞。ヘカテも言っていたな」
「そう。あの娘と私は似ていたのよ。ただ、立場が違っていだけ。私はホーエンハイムさん達に力を最初から貸していた側で、ヘカテはあの計画から産まれた働かせられる側だった……私はそれがずっと許せなくて同情して。彼女を引き取ったの……そろそろ行きましょうか。急がないとこの異界が崩壊して壊れて行く前に、貴方に全てを伝えてから去りたいもの」
女帝はそう告げると俺の手を取り静かに歩き始めたのだった。




