虹霓決戦・〖豊饒の女帝は真実と共に〗No.8 女帝と地下へ
〖蜃気楼の屋敷〗の扉を潜った先はまるで別世界だった。
空は白いオーロラのようなものに包まれ、都市の建物は崩壊し、各所で火柱が上がっている。
そこら中で悲鳴や戦いが繰り広げられており、魔獣の肉塊だろうか? そんなものがそこら中に山積みになっている。
一言で言えば世紀末のような場所に来てしまったといえば良いのだろうか?
そして、更に衝撃だったのは目の前の光景だ。身動き一つしないヘカテの身体を抱き抱えた女の子を、エリスは自身が持つ杖でなぶろうと掲げていたのだ。
「エリス! その子に何をする気だ? 怯えているぞ!」
「あら? 弟君。来ていたんですか? この娘は私の言う事を聞いてくれませんでしたから、従ってもらう為にも一度折檻します。邪魔はしないで下さいね……」
今のエリスの様子は明らかに可笑しい。まるで何かに取り憑かれているみたいだった。
「あ……いや……助けて……いや………」
……エリスに襲われいる。女の子はあまりにも怖かったのか。下の服を突然、濡らしてしまった。
「つっ……転移魔法〖縮転〗」シュンッ!
「……アアア」
シュンッ!
「大丈夫か? 一端、どこからに逃げるぞ」
「へ? あ…じゃ、じゃあ、下に逃げて………研究所の中なら誰も入って来れないから」
「下?……ああ、分かった。〖臨転移〗」シュンッ!
ドガッ!
「あら? 逃げられてしまいましたか……あの二人の気配は……地上にはありませんか。仕方ありません。この世界を堕とした後、ゆっくり勇者様を探すとしましょう。今は私に向かって来る障害を全て排除しなくては……〖聖仗〗……これでこの異界から逃げられる方は居なくなりましたね。私達以外は……」
ドゴオオン!
私は外界と異界が繋がる扉を勢い良く杖で破壊し、その場を後にしました。
「異界と言いつつも。ここはヘファイストス地方……あの天空の異界結界さえ、破壊出来てしまえば私達。来訪者は外に出られる筈です……異界側の方達は知りませんがね」
◇
〖首都 地下深く〗
シュンッ!
「あんな状況だったが咄嗟に助けてしまったが……君はいったい誰なんだ? 何でエリスに攻撃されていたんだ」
「……私はイシス……〖異界〗の女帝イシスよ」
「イシスだと?……君がイシスの女帝だと?」
つまり、〖神々の建物〗の女帝……大アルカナNo.3って事か?
……不味い事をしてしまった。まさか今回の敵のボスを助けてしまうとは思わなかった。
「……そうか。俺は……ライだ」
「ライ……君? そう。私とヘカテを助けてくれてありがとう。お礼を言うわ」
……意外な事にこの娘は礼儀正しいな。〖女帝〗と言うからもっと傲慢な敵かと思ったんだがな。それに何故、この娘は俺に下に行けと頼んだんだろうか? 俺は辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「……ライ君はここがどんな場所か気になるの?」
「ん? ああ、かなりな。透明なカプセルに……捕縛用の魔道具……何かを閉じ込めておく為の大型の檻……何かの研究所か何かなのか此処は?」
「……そうね。そんな様な所よ。ここは……助けてくれたお礼に少し案内してあげるわ。上が落ち着くまで隠れていたいし……この場所は……ヘカテが産まれて狂った場所……そして。私が彼に託されて管理してきた世界……人工神々を創ろうとした場所〖創神の実験場〗を……」