虹霓決戦・〖豊饒の女帝は真実と共に〗No.6 騎士王の槍
『首都サイス セトの広場』
「貴様……このイシス兵数万に囲まれて、そんな小さな槍一本で何をする気だ?」
〖アマゾネス族 族長 マーラ〗
「そうですね。軽く君達を殲滅位までできますよ。だって僕は強いからね」
「ハッ! ただの雄が何をほざく。何処から現れたか分からなんが、ここは男禁制の女の国〖イシス〗。迷い込んだの者は即座に殺す決まりとなっている」
「では、殺されない様にしなくてはならないね。聖剣について、勇者君とやらに聞かないといけないので……無力化させてもらうよ。僕は敵と認識した人達には容赦をしないと決めているから……聖槍ロンゴミニアド……〖龍突〗」
魔法世界の妖精国を治める王アーサー・ペンドラゴンの固有の力……権能は〖騎士覇道〗と〖妖精色彩〗、資格は《妖精王》である。
彼はこの〖権能〗と〖資格〗の力を併用し、妖精国の頂点として、現在に至るまでその強さを保持し続けている。
そんな彼はかつて七つの秘宝の一つ聖剣〖エクスカリバー〗を所持していた。
しかし、壮絶な行き違いにより、エクスカリバーはガリア帝国へと渡ってしまった為に、彼はエクスカリバーを探す為に魔法大陸中を旅していたが、異界イシスの西方を支配していたアマゾネス族の者達の卑劣な罠により捕まり、長らく幽閉されていた。
その幽閉先で日々行われていたのが、アマゾネスや亜人達による拷問であった。その拷問はアーサーの全身に深い傷を負わせる無慈悲な拷問であったが、どんな拷問を受けてもアーサーの傷は次の日には全て治り回復していた。
それは何故か……それはアーサー・ペンドラゴンが持つ、もう一つの聖武器〖ロンゴミニアド〗がアーサーの全ての傷の時間を抜き取り武器の中に内包し、変わりに受けていたからである。
これも愛する主アーサーを護る為に聖槍が行った奇跡の力である。
だが、その数百年にも渡る傷は現在も聖槍の中に内包されているのは変わらない。何故か? それはアーサーが地上へと解放され、自由に動ける様になった時、アマゾネスや亜人達にアーサーが受けた分の傷を返す為である。
そして、その数百年分の拷問の傷の痛みが内包された攻撃が、アーサーを取り囲むアマゾネス達へと光聖として放たれる。
「……これは? 痛みの記憶?……ああぁぁ!! こんな……ごめんな……さい」ドサッ……
「いや……いやー!! 私は……こんな……」ドサッ……
「止めろ!……刺さないで下さい……わだじは」ドサッ……
「何だ?……私の部下達が次々に口から泡を吹いて倒れていくだと?……それに何だ? この拷問の記憶は? 頭が割れる様に……痛い」
「……それが僕が数百年にも渡って貴方達から受けた傷だよ。それを今、記憶と経験として僕を取り囲む君達全てに見せて疑似体験させている。このロンゴミニアドがね」
「な……に?……や、止めろ。直ぐにそんな事、止めろ……こんな記憶に……体験……耐えられない」
「いやいや、それを僕は堪え忍んだんだよ。数百年もの間、毎日ね。僕とこのロンゴミニアドはいつか君達にやり返そうと耐えていた。ただ、迷い込んだだけの僕を。君達は僕が雄だからという理由だけで牢獄へと閉じ込め拷問した。だけど僕はそんな事では恨まない。恨まないけどね……聖槍は許してくれないらしい。君達が精神崩壊を起こすまで、数百年分の拷問の記憶と疑似体験を与え続ける様だ」
「……ぜ、全軍の中で戦える者は突撃しろ……でなければ我々は時間の経過と共に……心を奴に殺される事になるぞ」
「……あああ! 刺さないで……」ドサッ……
「こんな状態で……そんなの無理……」ドサッ……
「……どんどんと倒れていくね。これで分かったかい? 君達が数万で僕を取り囲んでも僕にはけして勝てない。何せ、数百年分の痛みの記憶と体験という精神汚染を抱えて戦うのだから。では僕からも攻撃を初めさせてもらうよ。外へと出て聖剣にもう一度会う為にもね」
 




