虹霓決戦・〖豊饒の女帝は真実と共に〗No.4 解き放たれた臨界者達
〖首都 サイス〗
アーサーさんが放った黄金の光は地上まで伸びて行きます。
そして、その光に乗って私達も上へ上へと上がって行きます。
「何ニャー? この金色の光は? それにこの船もどこから取り出したのニャア? アーサー」
「妖精国の呪文で呼び出したんですよ。猫族娘さん……そろそろ上に着きますね」
「ガハハハ! ああ、祭りの始まりよ。ではな。ワシは一足先に暴れてくるぞ。長らく地下牢獄へと閉じ込めた亜人共に報復する為にな。ではこの国を蹂躙し終わったらまた会おうぞ。同士共!」
トンッ!
アリババさんはそう告げると、勢い良く地上へと飛び出し行きました。
「ニャー、凄く高く飛んでったニャー、アイツ滅茶苦茶強いニャロウ? アーサー、あんなの普通の人族の動きじゃないニャア」
「ああ、分かりますか? 彼は〖臨界突破〗者なんですよ……僕と同じ様に。そろそろ地上に着きますね。エリス、先程立てた作戦では盗賊さ……アリババ君が亜人達を抑え、僕がイシス兵を全てを相手にし、セシリアさんとフェンリル君で勇者君の捜索とこの異界からの出口を探すということで良いです?」
「はい。アーサーさん。そして、私はあの〖女帝〗を名乗る方の相手に専念させて頂きます。皆さんでで時間を稼いで頂いている隙に、トップである方を倒して手中に収めてしまえば異界側は抵抗出来なくなりますからね」
「……ニャー、真顔で言ってるニャア。この聖女は、本当に性格悪……」
「セシリア女王。それ以上、言えばエリス様からまた折檻されますよ」
「フェンリル……オニャエ、しばらく見なかったと思ったら、エリスと一緒に居てビックリしたニャゾ。いい加減、わっちの所に戻って来るニャーよ。オニャエはわっちの契約者ニャロウ?」
「……それは無理かと。私もエリス様に逆らえませんので」
「……ニャー、それなら仕方ないニャア」
セシリアとフェンリルがひそひそと何かを話していますが、今は気にしないで起きましょう。
「おや? セシリアさんとフェンリル君は知り合い」
「ええ、主従関係というやつです。そして、私がフェンリルをセシリアから奪……護り手として付いてもらっているんです」
「(……奪った?)な、成る程、昔の仲間だったのならば何かしらあるのですね。おっと地上に出ますね。では、ここで三方へと別れましょうか。ではっ!」
スタンッ!っとアーサーさんは地上へと出ると飛び上がり、建物の上へと上りました。
「エリス様。では私はセシリア女王と共に、先ずは勇者殿がこの異界イシスのどこかに居ないか調べて来たいと思います。では行きましょう。セシリア女王」
「ニャー? ま、待つニャ。フェンリル。わっちはまだ行くと言ってニャイニャア!!」
「ええ、その判断で結構ですよ。フェンリル。セシリアは貴方と入れば安全ですからね……だってここは今から戦場と化してしまいますからね」
「大穴から誰が出てきたぞ。捕らえろ」
「イシス様の城を破壊した一派かもしれんからな。殺しても構わん」
「「「「ハッ!」」」」
「それは少し無理だと思いますよ。だってセシリア意外……私を含めた全員が〖臨界突破〗に到達しているんですから」
少し離れたとある建物……
「……あの娘が何で今更、この異界に足を踏み入れるの? 私が護って来たこの世界を」
◇
「解き放たれた狂暴な野獣と思え! 痩せ細っているが、奴は不死身の様な生命力を持った化物だ」
〖亜人の女王 フレデリカ・オーバン〗
「はい……ですが幾ら取り囲み攻撃しようとしても……」
「全ての兵がなぶり殺されて肉片へと変わっていきます。フレデリカ様」
「ブオオオ?」「ギャアア!」「ギゴブォ?!」
その風貌は痩せ細った銀髪と褐色肌の青年の姿をしていた。
フードと腕力を駆使して、亜人達を蹂躙していくその男の名は盗賊王・アリババ・アラビア。
あらゆる富と自由を手に入れ、盗賊の国を一から建国した神代の臨界突破者である。
「ガハハハ! 数百年の恨みをここに晴らす。覚悟しとけよ。イシスの民共!」




