昇月決戦・〖世界は月影を赦し降ろす〗No.10 下弦の月美
「……担い手さん。何で……私とヘカテの戦いに介入したの? 私は〖世界〗の力でヘカテを倒そうと……」
「だから止めたたんだよ。ヘカテで聞いた……〖大アルカナ〗は使用者の未来を破滅させる力だと。だから、〖マキナ〗にまで手伝ってもらって止めさせてもらったんだ」
「〖マキナ〗?……あの蒼白の肌の娘?……あのヘカテを一撃で沈めたの?」
「そうしないと君はどのみち死んでいただろう? ヘカテに勝っても負けてもな。だから強制的に勝負に割って入らせてもらった……申し訳ないがな。それとその〖世界〗の大アルカナは……〖匣封〗」
俺は新たに手に入れた力〖匣〗の力を使い。オルビステラの中にあった大アルカナ〖世界〗の力を隔離し、匣の中へと封印した。
「……私の大アルカナ〖世界〗が消えた?」
「時が来るまで預からせてもらう……この力は危険過ぎるからな。俺は君に死んでほしくないんだ」
「私に死んでほしくない……そう。でも私はヘカテに復讐できれば後は死のうと……フレイの仇を取れれば満足だったのよ」
「だがヘカテはフレイに何もしていなかったんだろう? 全ては可笑しくなったフレイの被害妄想だった。それは周囲を同情させる為の演技だったんだろう?」
「つっ……それは……そんな事まだ分からないわ」
「……ならロキや〖博士〗とか言う奴に会ったら真実を聞き出すんだ。本当の事をな。〖神々の黄昏〗の真実を自分で確かめるんだよ……それがフレイの為にもなるじゃないのか? いや、君、自身の心の平穏の為にも」
「ロキや〖博士〗に真実を聞き出す?……どうやって?」
「……〖神々の黄昏〗も残り四人だ。数が減れば表舞台に嫌でも上がるしかないだろう。裏で企んでる奴等も……ヘカテの話を聞いて、俺もそいつ等には色々と言いたい事が出来たしな。真の復讐はその時、二人でやろう。フレイとヘカテの人生を狂わせた張本人達にな」
「…………まさかヘカテも被害者だったと言いたいの? ロキと〖博士〗の?……確かにあの人は裏で色々と動いていたわ。テレシアの時も……セルビアも……魔神実験の時は〖博士〗も………………あ……あ……ああ、そう。色々と暗躍して………皆、いつの間にか死んだり、居なくなったり、壊れていたわ……そう。本当の敵は…………偽装の○○だったのね………う……うう……そして、私はただ利用され………て……いた?……う……うう……」バタッ……
オルビステラは一つの真実にたどり着いた。
そして、その場で倒れ込み泣き崩れた。
「しばらくじっくり考えるんだ。オルビステラ……そして、この世界を長年狂わせている奴等に復讐してやろう。君の〖世界〗と俺の〖未来〗の為に……」シュンッ!
俺は彼女にそう告げ、瀕死のヘカテの元へと転移した。
〖異界 イシス〗へと繋がる扉前
シュンッ!
「……最後にこんな扱いをして済まなかったな。ヘカテ」
「……愛玩具……それは天城の〖世界〗の……そう。だから、終止余裕そうだったわけ」
「───マスター───殲滅完了」
「この娘は本当は出すつもりはなかった。アンタには色々と教えてもらって感謝してい……ます。ヘカテ様。だが貴女は〖神々の黄昏〗で大アルカナを起動してしまった。だから……倒します」
「……そう。アンタは……私の事をヘカテ様と呼んでくれるの…………そう……それを聴けただけでこの扉を潜ったかいがあったかもしれないわ……」
「……そうですか」
俺は静かにそう応えた。
「……ええ……そうよ。狂った振りも疲れたわ」
「ええ……貴女は俺に全てを聞かせてくれましたから」
「……ええ……契約と誓約だったもの……それで狂った女神の出来上がりだったの……」
「ええ……貴女の苦悩と葛藤は〖匣〗の中で全て聞きましたから……俺は貴女の痛みを引き継ぎます。そして、〖神々の黄昏〗を……ロキと〖博士〗を必ず倒してみせます」
「……ええ……後は任せるわ……真実を知る数少ない子……先に扉を潜らせてもらうわ……最後に〖女帝〗様に謝りたいの……お礼も言いたい」
「……了解です」
ギィィー……ガコンッ!
外界と異界を繋ぐ扉が不自然に開く。
そして、その中へと女神は入って行く。
「……もう偽るのも疲れたわ……失敗作の私には不釣り合いだった……大役だったのよ……〖神々の黄昏〗の怒りの矛先の象徴なんて………〖女帝〗様……いえ、〖イシス〗様……私、貴女の為に頑張ったんです……貴女が護りたいこの世界の為に……」
……ガコンッ!
彼女はそう告げると扉を潜り〖異界 イシス〗へと帰って行った……