昇月決戦・〖世界は月影を赦し降ろす〗No.7 世界は平等にできていない
神話時代末期〖とある研究跡地〗
「私の大切なヘカテ。貴女に質問があるの」
「はい。何でしょうか? 〖女帝〗様」
「貴女はこの世界は平等だと思う?」
「……はい。思います。私はそう考えて発言する様に記録が施されていますから。私達はゼロ様によって創られた女神シリーズの……」
「その考えは今から棄てなさいな」
「……考え方を棄てる? それはどの様な記録でしょうか? 〖女帝〗様」
「これからは自分らしく生きなさいという意味よ。そうすれば貴女の世界は変わるの。不平等でイカれたこの世界に抗えるの。自身の身勝手が強制できるのよ。ヘカテ……私の可愛いヘカテ。廃棄された可哀想なヘカテ。私と同じ女神のヘカテ……抗いなさいな。この歪みきったこの汚くて醜い、魔法世界に……私と共にね」
「…………畏まりました。これからは私は身勝手にいきたいと思います。〖女帝〗様」
そう。私はあの方に言われたから、こんな振る舞いをしているのよ。私はそういう風に従う為に創られたのだから従うのよ。だから刈り取って私は悪くないし、私に優しくないこの世界……平等出ない世界で誰が苦しもうが知ったことではないないのよ。
▽
「ガキ……またアンタなの? エリーニュス達はどこに行ったのよ? 殺したのかしら?」
「誰が殺すか……癒して、アンタが絶対に入れない安全場所に避難させたんだよ」
「安全な場所? 馬鹿ね。この世界に安全な場所なんてあるわけないでしょう。こんな酷くて醜い馬鹿な世界にね。ねえ? オルビステラ」
「……知らないわ。魔法大陸なんてまだ平和な大陸よ。暗黒大陸なんて……もっと悲惨と聴くわ」
「嘘つくんじゃないわよ。この大陸は呪われているのよ。アンタ達は知らないだろけど」
「……魔法大陸が呪われているだと?」
「あら? 知らないの? この大陸の真実を……まあ、そうよね。七聖―女神―共がそんな事、教える分けないわね。あの選ばれた女共は……狡猾だもの」
「ヘカテ。お前はさっきから何を行っているんだ? ……いや、何を知って、そこまで歪んでしまったんだ?」
「……本当に知らないわけ? オルビステラの愛玩具。アンタはこの大陸が歪んでるって思わないの?」
「……歪んでいる?」
……ふと。ヘカテの真剣な顔を見て考える。
───〖異界〗がある。〖死の大地〗がある。他、大陸と繋がる〖魔窟〗がある。別世界が平然と繋がる〖アヴァロン〗がある。下へと堕ちる〖冥界〗がある。
…………異質な場所が沢山ある。
「………この大陸は異なる別の概念が……別世界が並列化されているな」
「……〖担い手〗さん。今はヘカテと戦いの最中。あんな狂った人の言葉に耳を傾けないで」
「黙っていなさい。オルビステラ!」
「つっ?!」
ヘカテはオルビステラに向かって怒鳴り付ける様に叫んだ。
「愛玩具……アンタ、名前は?」
「……ナルカミだ」
「……偽名ね。まあ、良いわ。アンタは珍しく私の言葉に耳を傾けてくれたわね……私のこの言葉で何かに気がついたのかしら?」
「……少し気づきかけているな」
「アンタ、何か結界は張れない? オルビステラは……抜きで話をさせなさい」
「……わかった。オルビステラ。少し時間をくれ……」
「ちょっと……〖担い手〗さん。何を」
「君の身体を癒す時間を稼ぐ為でもある。これを飲んで少し待っててくれ(ボソッ)……〖雷匣〗」ズズズ……
「……これは〖治癒の秘薬〗? 私の為にヘカテの話を聞くって事?」
「……どうかしらね」ズズズ……
〖雷匣内〗
「それで? 単刀直入に聞くが話って何なんだ? 〖月〗」
「……簡易的な別空間を生み出すとはねえ……そうね。アンタはこの大陸の……」
「?!……何? それは本当なのか?」
そうして俺はヘカテからこの魔法大陸の歪みや、彼女が何故、歪んでしまったのかを一方的に聞かされたのだった。
ズズズ……
「……今、戻った」
「?!……え? 一瞬で戻って来たの?」
ズズズ……
「時間も縛るのね……まるで〖無闇の部屋〗の上位互換だわ……ナルカミ。アンタに伝えた事は何もかも事実。それを他の馬鹿共に伝えるかはアンタ次第ね」
「……考えておく……それよりもそろそろ」
「ええ!! 戦いを再開しましょう! ねえ? オルビステラ。蚊帳の外のオルビステラ。アンタと違って、そいつは私の話に耳を傾けたわ……復讐しか考えない。可哀想なオルビステラ……そろそろ本気でやり合いましょうよ。この魔法大陸の今後の実権をどちらが握るかを決める。やり合いを……〖反転の女神〗」
ヘカテはそう告げると、自身の姿形を変え始めた。