昇月決戦・〖世界は月影を赦し降ろす〗No.6 上弦の神業
〖蜃気楼の屋敷 黄金の間〗
「しかし、オルビステラ。アンタ、かなり見た目も変わったわね。今更、身体を成長させるなんて。親友のフレイちゃんが子供の姿のままを保っていたいから、私も同じ様にするとか昔、〖無闇の部屋〗で騒いでたのにねえ? 月光魔法〖月の影落〗」
「そうできなくしたのは貴女が原因でしょう。ヘカテ。漆黒魔法〖黒の髪凪〗」
私の魔法が若干押されてる。それにここは洞窟の最新部の筈なのに何故、月明かりが届くのかしら? ヘカテの大アルカナはNo.18〖月〗。そして、私はNo.21……No.が3つ違うだけでこんなに。
「アハハハ! 焦ってる。随分と焦っているじゃない。オルビステラ。あのガキと離れ離れになってようやく私との力が分かり始めたようね。そうよ! 大アルカナのNo.は高ければ、高い程強くなるの。そして、アンタは最下位のNo.21……だからアンタが私に勝てるわけねえんだよ。オルビステラ!! 〖新月の槍〗」
「つっ! 違う。大アルカナは強さじゃないわ。これはそんな簡単な言い方で例えられるものじゃないわ。これは御父様が私達の為に……キャアアア!!」
槍のような光が私の肩に突き刺さる。そして、この攻撃を受けてやっと理解した。ヘカテは私が〖担い手〗さんと一緒に居た時は、自身が弱そうに見える様に演技をしていた。
そして、私と〖担い手〗さんが別行動になった瞬間。ヘカテは隠していた本当の実力を見せ始めた。
「相変わらず。弱いわね。オルビステラちゃん……いつもは〖代理人〗かフォルトゥナ、エクシスがアンタやフレイを守っていたものね。でもそれも今日でおしまい。裏切り者のオルビステラちゃんは〖神々の黄昏〗の新たな〖皇帝〗か〖教皇〗の私に全く勝てずに死んでしまうだものね」
「それはどちらも大アルカナの主格の地位よね? まさか……貴女、今まで〖異界 イシス〗に引きこもったいたのって……」
「そうよ。上位の大アルカナ達が消えていくのを待つ為よ。【女帝】様は全然違う理由だけど。それにしても各大陸の〖髪ノ使徒〗って言うのは本当に凄いのね。数や力だけなら私達、〖神々の黄昏〗の方が圧倒的に有利だったのに、いつの間にか数も減らされて大慌てでなんて滑稽だと思わない? 〖代理人〗って? あっ! ごめんなさい。〖代理人〗って、アンタが慕う御父様だったわね。オルビステラ」
「……つっ! 今日の丁度今頃が満月の上弦だからって調子に乗らないでくれる? ヘカテ」
そうは言ってもヘカテはまだまだ余裕そう、それに引き換え私は最近、練習してやっと会得した現代魔法の覚醒の〖漆黒〗……技の練度が違うわ。それにあっちはまだ大アルカナも使っていない。
大アルカナは一度でも〖神々の黄昏〗を裏切ると決めれば〖資格〗を失い使えなくなる。そして、私は担い手さんとの戦いで敗けを認めて〖世界〗を失った。
ヘカテへの復讐を対価に……フレイ。私の選択、間違っていたかもしないわね。まさかここまで力の差があるなんて……貴女ならもっと上手く策を練って立ち回ったのかしら?
「あらあら。最初あれだけ威勢が良かったくせに、少し実力の差を見せつけられたから落ち込んじゃったのかしら? それはアンタ達が悪いのよ。まさか満月の日にこの〖イシスの門〗に来たから悪いんだけど。月光魔法〖満月の鉄槌〗……そして、今はその満月が一番高い位置にあり、私の力が最大に発揮でき……る?……何これ? 外の月の光が消えていく?」
彼女は突然、慌て始める。それもその筈。
〖蜃気楼の屋敷〗にまで届いていた月明かりが消えて行き、辺りが暗くなって行く。
「……俺の現代魔法の雷魔法の〖覚醒〗は天候を自身の雷魔法に付与し、小範囲だが周辺の天候に影響を与える力。悪いが〖雲雷〗で外に雲を出現させてもらった。これでしばらくアンタの力を制限させてもらうぞ。オバサン(ヘカテ)」
「……〖担い手〗さん」
「………ガキ。またアンタは……いきなり現れて邪魔する気?……オルビステラの愛玩具……よくも私の最大技を潰してくれたわね」
〖担い手〗さんが私の隣に来てくれた。そして、それを見たヘカテは怒りの表情を浮かべて声を荒げた。