昇月決戦・〖世界は月影を赦し降ろす〗No.2 新月の虐め
〖現代初期━━〖レッドローズ〗赤の館〗
「オルビステラ。私の代わりにこれを食べなさい」
「……いやだ。ちゃんと自分で食べて。フレイ」
「何でよ。食べなさいよー!」
「……へー、この子達が新しい世代の大アルカナなの? フォルトゥナさん」
「ええ! そうよ。月ちゃん。可愛い子達だからって虐めちゃ駄目よおん。貴女は昔からお遊び感覚で大アルカナの子達を殺しちゃうんだから……以前は〖抑制〗ちゃんの時は」
「あー、はいはい。分かったわよ。この世界ではやらない。やらないわよ……この世界ではね」
「……そう。その言葉を信じるわよ。いちをね……でも、本当にあの子達にはちょっかいをかけないでね。あの子達は皆、〖代理人〗ちゃんの大切な子達なんだから。とくに〖太陽〗ちゃんと〖世界〗ちゃんは姉妹みたいに仲が良いから。その関係を壊しちゃ駄目よ」
「ふーん。そうなの……大切ね。それはとても壊しがいがある子達ね(ボソッ)」
▽
『蜃気楼の屋敷』
「この……雷…は…邪魔よおぉ!!」
月は俺が放った天雷魔法〖嵐雷〗を振り払った。
「天の力が付与された雷魔法だぞ。それを簡単に破るのか」
「当たり前でしょ。月は神話から生きる女神ですもの」
「女神? 何だそれ? この世界には七聖―女神―以外にも女神が入るのか?」
「……ええ、居たわ。色々な姿の女神達が……かつての〖異界 イシス〗にはね」
「色々な女神? その女神の一人があの月なのか?」
「そう。アリーナに七聖―女神―に選ばれなかった成れの果て。地球の記録から、創られた魔法世界の偽物の女神……〖偽装兵神実験〗の失敗作が、あのヘカ…」
「?! 危ないぞ。オルビステラ!! 転移魔法〖雷転〗」
ガキンッ!
「チッ! 何、避けてんのよ。アンタ達! 腹立たしいわ」
シュンッ!
「危なかった……何でアイツはあんなに気性が荒いんだ。確か地球の女神〖ヘカテ〗は、救世主としての側面もある優しい女神でもある筈だぞ。オルビステラ、〖偽装兵神実験〗って言うのは何なんだよ」
シュンッ!
「だからあの女神は魔法世界が生み出した歪みそのもの……地球の逸話を模倣した似ている様で、全く違う魔法世界の偽物さん。だからその地球のヘカテって神と性格が違うのは当然の話」
「……つまりなんだ。〖偽装兵神実験〗って言うのは……地球の神をベースに神達のクローンを造ろうとしていたって事か?……創造神事態が……」
「いいえ。それは少し違うわ。それを計画して実行したのは〖博士〗とロキと言う人で、お父様は……」
ドゴオオオンン!!
「……まだ切れてやがる」
「そう。あの人は性格の欠落があったから、七聖―女神―に選ばれなかったの」
「また避けたのね……オルビステラ。フレイの様な私の玩具だったくせに生意気ね」
「そんな発言と行動ばかりしてるからお父様に〖イシス〗に送られたの。月はね」
「なーに? オルビステラちゃん。さっきと全然、雰囲気が違うわね。頼もしいアンタの騎士様が来てくれて、強気になっちゃったのかしら?」
「……こっちの世界のヘカテって本当に性格が悪いのな。さっきから出てくる言葉が悪口しかないぞ」
「ええ、〖神々の黄昏〗の中でも、あの人は皆に嫌われていたの。〖女帝〗以外からは」
「……オルビステラ。アンタ、さっきから敵に情報を教えすぎよ。私達、〖神々の黄昏〗の敵にねえ」
「私はもう〖神々の黄昏〗ではないの。今は貴女に復讐するだけの復讐者……そして、この日為に私が作り出した新しい力で貴女を倒す。漆黒魔法〖夜光〗」
「……これは闇? チッ! 月光魔法〖松明の光〗」
俺の目の前で闇と月明かりがぶつかり合い、不思議な光が辺り一面に漂った。