聖女様が辿ったルート
数ヶ月前の〖幻獣の楽園 ファンクス・セル〗
「エリス様。終末への対策着々と進んでおります」
「そうですか。それは素晴らしいですね。それと平行しての勇者様の捜索はどうなっているんですか? フェンリル」
「………は、はい。妖精国で見かけたと噂は流れて来ましたので、人獣へと変化可能な幻獣達に調べさせてはいるのですが。なかなか情報は得られずじまいでして」
「それ。ちゃんと探しているのですか? アリス、サーシャ、ギャラハットさんも戻って来ませんし」
「は、はい。エリス様の為に皆、一生懸命探しております。それにその三名でしたら現在、ティアマト地方の〖ティアマト地方・造船都市・エヌマ〗に居る事がラベルの報告で確認が取れています」
「ティアマト地方?……そうですか。以外にも近い場所にいたのですね。ならば直ぐにお迎えに行ってあげましょう。付いて来て下さい。」
「お、お待ち下さい。エリス様!」
「……何ですか? フェンリル」
「私とエリス様が同時に居なくなりましと〖幻獣の楽園〗の守護が手薄になります。その場合、西側の〖死の大地〗から侵略者が送り込まれてくるかもしれません」
「侵略者ですか……それは困りましたね。フェンリル。少し待っていて下さい……」
「エリス様?……もしや。私達の代わりを探しておられるのですか? そんな者。この魔法大陸に数える程しかいないのではないですか?」
「分かっています……ですが見つけました。西に二人もです。それと懐かしい気配も居ますね。少し待っていて下さい。連れてきますので」ドンッ!
「連れて来るですか? それはいったいどういう事ですか? エリス様……と聞こうと思ったが、西側地帯に飛んで行ってしまった。浮遊魔法も使わないで……」
〖アテナ地方 ガリア帝国北部〗
「いやー、良かったね。事件も解決して~、それじゃあ。私は孫の所にでも顔を出してから〖魔法族の里〗に帰るとするよ~、またね。マーリン。ペットの猫ちゃん」
「ニャアーわ誰が猫ちゃんだニャア。わっちはセシリアダニャー!」
「うん。助けに来てくれてありがとう。エヴァ、私はセシリアに修行を付けてあげないと行けないから、またしばらく会えなくなるね」
「……マーリンが修行をつける? その猫ちゃんに? へー、その娘かなり優秀なんだね。マーリンが直々に教えるだなんて」
「うん。将来有望かな……この娘は、今まで教えて来た子達の中でね。だから、オアシスでちゃんと育ててあげたいんだ」
「ニャア? わっち、今、めちゃくちゃ褒められてるのニャア?」
「……みたいだね。良かったね。猫ちゃん。マーリンがそこまで入れ込むってなかなかないよ……! マーリン。北東から凄い力を持った子が来るね」
「〖マザーグース〗の残党かい?……あの弟子が敵対者を取り逃がすわけないと思うんだけどね」
「………ち、ち、違うニャア。マーリン……この気配は知ってるニャア……化物だニャア!!」
「「化物?」」
ドゴオオオンン!!
「落ちた位置はだいたい会っていましたね。お久しぶりですね。セシリア」
「オ、、オニャーはゴリラ聖女ニャア? ニャンでここにオニャエが現れるのニャア!!」
「ゴリラ聖女……聖女って、もしかして行方不明中だったエリ……はへ?」トンッ……ドサッ!
「エリスちゃん……何で君がこんな所に……現れ……?」トンッ……ドサッ!
「ニャア!! エヴァニャンとか! マーリン! お、おニャア! ゴリラ聖女! なんて事するのニャア。いきなり不意打ちで眠らせるニャンて!」
「一時的に〖幻獣の楽園〗の元々の管理人達に戻って来てもらうだけですよ。用件が済めばセシリアの所に送り届けますから安心して下さい。やり方は物理的になりますけどね。それでは先にヘファイストス地方のオアシスに送ってあげます。物理的になりますが」
「……や、やめるニャア! オニャエあれニャロウ。昔みたいにわっちはを持ち上げて」
「ヨイしょっと!」
「投げる方向を決めたニャア」
「彼方ですね」
「全力でわっちを空の彼方に投げるんニャロウ?」
「行きますよ! セシリア! エイッ!」
シュン!!!
「クソニャア!!!!」キランッ!
「さて、意識のないとお二人を投げ飛ばして エイッ!」
シュンッ! シュンッ!
「あちらに先について受け止めて……」
〖幻獣の楽園 ファンクス・セル〗
ドサッ! ドサッ!
「受け止めると……!」
「エリス様。お帰りなさいませ……おや? その両手に抱えてい者達は………エヴァンジェリン様とマーリン様ですが」
「ええ……拾って来ました」
「ひ、拾って来たですか? あのお強いお二人を」
「はい。サクッとやりました。そして、寝ている間に玉座に座らせておきましょう。後は勝手に玉座がエヴァンジェリンさんとマーリンさんを王と認めてくれますね。ではフェンリル。行きましょう。勇者様を探す旅に」
「お、お待ち下さい。お二人にちゃんとした説明をしなくて宜しいのですか?」
「説明ですか……では、〖真実の水晶〗をここに置いておきましょう。後は手紙を……〖ルイル・イル〗」
エリスの右手から一つの封筒が現れる。
「……元々はこの方達が此処を空けた事が、ユグドラシル地方を不安定にさせた原因。少しの間〖王〗に復権してもらっておきましょう。フェンリル。私の杖の中へ」
「畏まりました。エリス様……因果応報ですか。失礼致します。エヴァンジェリン様。マーリン様……」シュンッ!
「次は……サーシャ、アリス、ギャラハットさんの気配は南東ですか……」ドンッ!
数ヶ月前の〖ティアマト地方 魔道船 ユピテル〗
「平和だね。サーシャ」
「……うん。ここのご飯も美味しい」
ドガアアアンン!!
「……ああ。ここに居たんですか。お二人共……迎えに来ました。アリスはどこに居るんですか?」
「………何で君がここに? エリス様」
「……エ、エ、エリス姉!! 何で飛んできたの?」スゥー……
「あっ! こら! サーシャ。何で私を置いて逃げるんだい? がぁ?!」
「……何故、逃げるんですか?……スン…スン……何故、ギャラハットさんから勇者様の匂いがするんですか?」
「はっ? 勇者の匂い? いったい何の事だ……痛」たた!!」
「このティアマト地方のどこかに勇者様が居るのです?……ギャラハットさん。案内して下さい」
「い、いや。セツナは今、元の世界にぃぃ!! 痛たた!! エリス様。肩が! 肩が痛いです!!」
◇
その後、ギャラハットさんに船内を案内してもらいましたが勇者様は見つかりませんでした。
勇者様にそっくりなお顔の方がサーシャと共に居た事は、確認できましたが転移魔法でどこかに飛んで行ってしまいましたね。
後でギャラハットさんに、勇者様とそっくりなお顔の方の事を強制的に聞き出したところ、勇者様の弟君だと教えてくれました。
一瞬、あの弟君が本物の勇者様かと勘違いしましたが、私の知る勇者様は聖魔法と〖エクスカリバー〗しか使えないお方。その力のみで私と共に数多の強敵を薙ぎ倒してきたのです。
ああ、全ての聖魔法を操り、聖なる剣を操る頼もしき勇者様……素敵な勇者様。今、どこで何をしているのでしょうか?
今日の朝、弟君が帰って来たとあの方に聞いて、急いで弟君の寝室に迎い、勇者様の居場所を聞き出そうとしたのですが、何故か見知らぬ女の子が現れて、三人でフレイヤ地方へと強制的に転移魔法で転移したのです。
〖フレイヤ地方 アラビア商業区〗
そして、現在、王宮で知り合ったモルジア王女にこのアラビア王都内を案内してもらっているのです。
「エリスちゃん。あそこが商業区よ。セツナ様なら多分、あそこで暴れているんじゃないかな?」
「……暴れている?」
ドゴオオオンン!! バリバリ!!
「あー、やっぱり居た。前も来て好き勝手やってたから、今回も何かやらかすと思ってたんだよね。当たりだね」
「あれは……雷魔法ですか?……」
……勇者様は転移魔法も雷魔法も私の前では一度も使った事がありませんでした……やはりあの弟君は勇者様ではないようですね。
王宮でのあの立ち振舞い。一瞬、勇者様が若返った姿が弟君かと思いましたが、やはり違うみたいですね……私がお慕いする勇者様はいったい何処に居るのでしょうか?