『世界』との密会
〖盗賊の屋敷 密会部屋〗
「こちらがご用意した部屋になります。では。新ボス……では少し変ですな。担い手様とお呼びすれば宜しいですかな?」
「え? ええ、隙に呼んでもらってもいいですよ。ボスとか何とかはアイツ等が勝手に俺の事を呼んでいるだけですから」
「そうですか。ありがとうございます。今後はその様にお呼び致します。今後ともよしなに」スゥー……
「消えた? 現代魔法だよな? 水魔法系統の?」
「どうかしら……身体を蜃気楼みたいに変えてその場に居る様に見せていたのかも。まあ、そんな芸当、水魔法を上手に使えないと出来ないとおもうわ」
「だな。まあ、良いか。近くにはいないみたいだし、会話を聴かれる事はないか……しかし、アジトが盗賊の屋敷って、まんまじゃないか。アイツ等、アホなのか?」
「……この都市全体に幻覚魔法の気配があるわ。この盗賊の屋敷を認識、意識しないと様に結界として、水魔法系統が」
「水魔法系統? それってさっきのジーンって人の仕業か?」
「恐らくそう。でもこの結界には何の悪意は感じないの。むしろここに居る子達を守る様に張られている」
「……守る様に?……何に対してだ?」
「逆に聞き返すわ。どこから守ってるいると思う?」
「どこからって……そりゃあここは戦争盛んなフレイヤ地方出し、西側は直ぐ、ヘファイストス地方だ。あらゆる国がここの貴族や商人の子供を拐おうとかは考えると思うが……」
「でも、最近は平和になっているんでしょう? 貴方が舎弟とか言う人達に集めさせた。魔法新聞にはフレイヤ地方はガリア帝国との戦争膠着により。五大列国の絆はより強固に、西側、ヘファイストス地方との交易は新都市『ガルクドウルク』が出来た事により、以前よりも盛んに行われていると書かれているわ」
オルビステラは、密会部屋のテーブルに用意されていた魔法新聞を読み上げならが俺に語った。
「……隣国から守る為ではないって事か。それじゃあ、どこから守る為に結界なんて……あっ〖異界〗か」
「正解。それで残りの大アルカナは後、何人だったかしら? 貴方の場合」
「残り……四人だ」
「かなり減ったわよね。数が減り始めたらやっと動こうとする人達がいた筈よね。ヘファイストス地方の不思議な場所で、自分達から進んで外界の情報を遮断して、隠れてる人達が」
「……〖イシスの国〗か。そして、そこを繋ぐ扉はこの国の何処かにある」
「そうね。それとこの国の地理にも関心をもった方が良いかも」
続いてオルビステラは魔法大陸の全体図が描かれた地図を指差した。
「……アリババはフレイヤ地方にあるな」
「ええ、資源が豊富よね。魔法大陸の富が集まる場所で、フレイヤ地方は魔法大陸の経済の中心といっても過言ではないわ。それに北側は常に戦争状態だから、戦士も屈強」
「フレイヤ地方を落とせば。財と兵が手に入るな」
「そうね。それでフレイヤ地方はあらゆる地方と隣接してるから攻めやすいわ。それにヘファイストス地方、ヘスティア地方、アテナ地方、ティアマト地方、ユグドラシル地方の五つの地方は半年前からの〖神々の黄昏〗達が引き起こした事件の数々でボロボロね」
「……完璧な準備を整えた軍隊が突然現れ、経済と戦争の中心である場所を落とす。その勢いのまま弱った箇所を簡単に征服し、手中に収めるのが〖イシスの国〗に居る〖神々の黄昏〗の狙いだったって事か? 初めから……」
「そうね。それがあの組織で一番謎が多い〖女帝〗と言われる人の考えかもしれないわ」
「〖女帝〗……その進行を察知して、あのジーンって人は結界を張ってるのか」
「そうかもしれないわ。だから、貴方をここへ招いたのかも」
「俺をここに招いた? それはどういう事だ」
「あら? ヘファイストス神の夢の御告げ聞かなかったの? 私、なんて貴方が列島大陸から戻って来る道中でいきなり……」
ドンッ!
「話は聞き耳を立てて聞かせてもらったぜ! 兄貴!!」
「う、うん。上手く聞き取れなくて何を言ってたのか分からないけど。分かったよ!」
「お、お前らは! バカ1 バカ2 何でここに居るんだ。確か、しつこく付いて来ようとしてたから、ジーンさんに縛りあげられて天井に吊るされてた筈だろう」
「「誰がバカだ! 」」
「息ピッタリね」
「それよりも話は何、言ってたからわかんねえけど分かったぜ! 兄貴」
「誰が。兄貴だ。アホ1」
「うん。私達に任せて、義賊集団〖アリバの末裔〗の支部にも連絡して、キャラバンを準備するね。侵略者からこの国を守るんでしょう?」
「キャラバン? いや、俺達は単独で行動をだな……てっ! どこ行くんだ。お前等。俺の話を聞け!」
「話が大きくなって来たわね」
「……キャラバンって何をする気なんだ? アイツ等は……」
その後、その場に残った俺達は〖月〗に対しての事と『ジンの蜃気楼』について話し合った。