大海を越え、再び行くは砂漠の国
〖暗黒大陸〗上空
「暗黒大陸を通るぞ! レヴィアタン」
(ええ、お好きにどうぞ……それよりも早く帰って、列島大陸と魔法大陸を繋ぐ転移魔法陣を設置しなさい。私はそれに乗って鳴神の所へ向かうから)
「……相変わらずのお熱で。感謝するよ。〖極神〗様」シュンッ!
俺、以外のメンバーには一度〖最果ての孤島〗の魔道具へと入ってもらった。その方が俺の移動の姿を近くで可視化できるからだ。
三日後〖剣技大陸 上空〗
「……剣技大陸の剣神・巫様。この神聖な海路をお通りします」
(……許可します)
「ありがとうございます!」シュンッ!
五日後『魔法大陸 ティアマト地方』
〖魔道船 ユピテル〗
シュンッ!
「……昼は長距離転移で大移動。夜は海の海魔に襲われない様に、認識阻害の魔道具と特殊装甲の結界魔道具わ併用して、休みながらの地獄の行軍……マジで疲れた。ようやく……魔法大陸に着いたか」
シュンッ!
「刹那! 大丈夫か? 馬鹿者。何故、私達が魔法大陸に上陸するまで〖最果ての孤島〗やらから出れぬように細工をした?」
「刹那さん。確りして下さい!」
「……兄弟子の馬鹿」
どうやら〖最果ての孤島〗にかけていた契約が切れた様だ。エスフィール、焔、サーシャが俺が魔法大陸へと上陸したと同時に飛び出して来た。
「ああ……今回はマジで疲れた。まさか全盛期の身体じゃないとここまで大陸移動が大変なんて思ってもみなかったわ」
「当たり前じゃ。普通。魔法世界の大陸渡りなど、普通は魔道船を使うものなんじゃぞ!」
「刹那さん。確りして下さい」
「……兄弟子の馬鹿」
女性陣がかなりお怒りだ。まあ、仕方ないか。列島大陸で海路転移門を潜ってからいきなり〖最果ての孤島〗に入れたんだもんな。
しかし、いきは直ぐに列島大陸に着いた筈なのに、何で帰りは、帰るのに五日間もかかったんだろうか?
「行く時は〖七原龍〗様達の権能でも発動してたのか?……まあ、良いや。無事に魔法大陸に帰って来れたしな。それより、皆、少し移動するぞ。列島大陸と魔法大陸を繋ぐ転移魔法陣を張りにな。転移魔法〖縮転移〗」シュンッ!
〖魔道船 ユピテル 隠し部屋〗
シュンッ!
「ここは? 何処じゃ?」
「……何でまた移動?」
「これが海外の船ですか? 木造ではないのですね」
「俺がカンナに頼んで造ってもらった隠し部屋だ」
「……何故、こんな場所に転移したのだ? 帰って来た事を皆に報告せんで良いのか?」
「……裏切り者に魔法大陸と列島大陸を繋ぐ転移魔法陣を知られたくないだけだよ」
「ん? 何じゃ……今なんと言った? 刹那…裏切り者じゃと?」
エスフィールが困惑した表情で俺に質問する。
「……仲間を余り疑いたくないがな。この魔道船 ユピテルに居る仲間の中で裏切り者が居ると俺は考えている」
「私達の仲間の中に……裏切り者?」
「ああ、だから今から設置する転移魔法陣と焔将軍の事は、この四人と〖黄金の宝物庫〗と〖最果ての孤島〗に居る仲間だけの秘密にする……第三者に言えない様に誓約も使う」
「……いや、そこまでしなくても良いのではないか。そんな極神様まで誓約で縛るなと」
「必要な事なんだ……裏切り者を炙り出すためにな。だから皆には協力してほしいんだ。エスフィールは魔道船に不備がないか確認してほしい。サーシャには最近、言動や行動に可笑しな点がある奴のマーク。焔には、その裏切り者が見つかった時……」
「粛清ですか……成る程。だから、私を簡単に魔法大陸まで連れて来てくれたんですか。相変わらず。腹黒い人ですね」
「……良く言われるよ」
「……兄弟子の頼み。理解……了解」
「帰って来てそうそう。こんな話をお主からされるとは思わなかったが……裏切り者とはのう。規模が大きくなればその様な者も現れるか……了解した。今後はそちら方面にも気を使おう」
「ああ、助かるよ。皆」
その後、隠し部屋に魔法大陸と列島大陸を行き来きする、転移魔法陣を設置した。
俺達はかなり疲れていた。なので列島大陸から帰って来た皆への報告は、明日にしようという事になり、エスフィールとサーシャは転移魔法で部屋に直接転移させた。
そして、列島大陸に戻ったと思った焔は、何故かこちらに戻って来て〖最果ての孤島〗で休むと言い出し。現在は最果ての孤島の中でスヤスヤと幼女二人と共に眠っている。
〖神成 刹那の部屋〗
……今回はかなり疲れる旅だったな。まあ、全盛期よりも魔力総量が多いお陰で、少し寝ればこちらの世界では全回復するんだかな。
しかし、今回の旅での一番の収穫は、あの三人に裏切り者の存在を伝えられた事だろうか。
俺は列島大陸へと向かう前から、ずっと疑問だった事があった。何故、俺が列島大陸へと来た事を帝や〖怪異〗達の数人は知っていたのだろうか?
……誰か情報を漏らしている奴がいるのだ。
これまで出会った仲間の中に裏切り者がいる。俺達の動きを事細かに〖神々の黄昏〗に伝えている誰かが。
「敵もだいぶ数を減らした……焦り初めているんだろうか。そうなればこちらも、それなりの対策を立てないといけないな……」
俺はそう考えながら。眠りに落ちた。
◇
◇
◇
次の日〖早朝〗
ドガアアアンン!!
「は? 何だ? 敵襲か?」
列島大陸帰って来てから一夜明けた早朝……突然、俺の部屋の扉がぶち壊される音で起こされた。
「おはようございます。勇者様の弟君」
「は?……ゴリラ聖……いやエリス? 何で君がここにいるんだ?」
「……ガラハットさんが言っていた様に本当に勇者様と似ているのですね」
「はい? 勇者様の弟? 俺が? 君は何を言っているんだ?」
「それで? 弟君。勇者様は今、どこに居るのですか? 私、そろそろもう一度お会いしないと心が張り裂けそうなんです」
「……意味が分からん。何で俺が弟……はっ?!」
そうだ。エリスの奴は大人の姿だった。俺しか知らないんだ。今の俺は〖女神の祝福〗で若返った少年の姿をしているんだった。
「……へ、へー、兄様の知り合いでしたか。そうと知らず。これは失礼しまっ?!」
ガシッ!っとエリスは俺の両頬を掴んできた。
「そんな事より。勇者様です! あの方は今、どこで何をなさってあるんですか?」
「……しょ、しょれは……ぐむ……」
痛い! 痛い! 痛い! 君の握力は力が強すぎるんだよ! 顎が砕けそうだ。
「そ、それは……」
シュンッ!
「列島大陸の事も解決したんだし。今度はこちらの問題に着手してもらうわね……約束は守りなさい」
「……誰ですか? この愛らしい方は? それよりも勇者様は何処ですか?」
「はぁ?……オルビステラ? 何でこのタイミングで現れるんだよ!」
「貴方、〖無闇の剣〗を持っているのね……じゃあ、行きましょうか。このまま……砂漠の国〖アリババ〗へ……共鳴〖無闇の砂行〗」ズズズ……!
「何でだよ! 俺は帰って来たばかりなんだぞ!」
「弟君。勇者様を!」
「……だってこれは貴方と私の契約でしょう。それにもう時間が無いもの。このまま放って置けば逃げられてしまうもの。待っていなさい〖月〗……フレイの仇……」
列島大陸での死闘を終え、帰って来た次の日。俺は新たな戦い場所へと急遽向かう事になってしまった。
フレイヤ地方わ旅した時に幾度となく訪れた国。
〖火と盗賊の国・アリババ〗へと……そして、その国の何処かにある扉を潜ると現れるのは、この魔法世界とは似て非なる世界。
〖異界 イシス〗の国が待ち受けているのだった。
第六部〖異界創造〗編
開幕