乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.21 動乱の行く末を
〖神帝区画 伊吹城際奥の間 武帝宮〗
「……良くも僕の平穏を壊した。来訪者……死になよ。大アルカナ……起動【統治する(ガヴァニング)】」
世界が歪んでいくそして、現れるのは何処かの軍畑だった。
「現実を歪めて、何の誓約も無しに異空間を創ったのか?」
「それだけじゃないよ。この中ならば、僕は全盛期全ての力を最大限に伸ばせる。そして、君はわざわざ。僕から奪った〖三明の剣〗を返してくれた。それを使って今から君を串刺しにしてあげよう。」
帝はそう言って身体に突き刺さっていた三つの〖三明の剣〗を抜きはしたが……
「そうだな。それを使ってここを破壊しよう。確か……九条先生に教わった操りの言葉は……爆ぜろ! 〖大通連・小通連・顕明連〗」
俺の言葉が切っ掛けとなり、三つの剣は反応する。
スパンッ!
大通連は帝が創った異空間を切り裂き。
ドスッ!
小通連は帝の心臓を突き刺す。
シュパンッ!
顕明連は帝の【統治する(ガヴァニング)】を真っ二つに切り効果を破壊した。
パキンッ!!
「何をするんだよ……大アルカナ……起動……【堅固さ(ソリディティ)】 防御【プロテクション】」
異空間を破壊された帝は兜の様な装甲鎧を創り初め、装着していく。
「……特殊装甲。そんなものまで使えるのかよ。なら……召喚魔法……〖二対の天使〗」
俺は遥か西の焼け果てた都から彼女達を呼び寄せる……合い入れない。強者の二人を
〖火之神城跡 上空〗青黒い球体
パキンッ……ミシミシ……パリンッ!!
「終わりにするわ。神代魔法(金)〖金星の光跡よ〗……ん?」シュンッ!
「無駄です。神明魔法『ラグナル・ロズブロークのサガ』……これは呼ばれている?」シュンッ!
〖武帝宮〗
「不可侵の絶対防御だよ。これで君の攻撃は一切寄せ付けない」
「ああ、俺の攻撃はな……来てくれ。ルシファー! ブリュンヒルデ!」
シュンッ!
「〖金星〗よ」
シュンッ!
「〖〖シズレクのサガ〗〗」
バキンッ!!!
「がぁ?! 〖抑制〗君と……天界の天使? 何故、この瞬間に現れるんだい?」
二対の大天使達による本気の攻撃が帝に放たれた。その衝撃で彼が身に纏っていた。装甲鎧は粉々に砕けてしまう。
「……ここはどこ? あれは主君」
「……成る程。私達を心配して呼び寄せてくれたんですね。流石です」
「いや、違うでしょう……明らかに修羅場よ」
「何ですか? ルシファーさん。まだ負けを認めたくないからって言い分けですか? これで何千回目ですか? 子供の様ですね」
「……アナタねえ」
「……仲良くなったんだな。二人共……無事で良かった。〖黄金の宝物庫〗でゆっくりしていてくれ」
「「誰がこんな腹黒天使と仲良くなんて……」」シュンッ!
俺はルシファーとブリュンヒルデを速攻で〖黄金の宝物庫〗へと移動させた。
「次から次へと仲間を集めるんじゃないよ……こうなったら。この帝都事全てを吹き飛ばす……〖怪異〗の子達には悪いけど。これも僕が君を殺す為だ。許してくれるだろう……大アルカナ……起動……〖同盟の元首消滅〗」
帝がそう詠唱すると大地が揺れ初め、伊吹城上空から巨大な真神と白鶴の姿をした魔力の塊が降って来る。
「何だこれは? 強大な魔力残滓の塊だと?」
〖〖真神白鶴の陣〗。ハハハ!!……彼等もただでは終われないと。力を貸してくれた様だよ〗
「スゥー……ハァー……そうか……ならば私は別世界から力を借りるとしよう」
「九条先生? 無事だったんですか?」
「ああ、ピンピンしている……それよりも私はあれを処理したら彼方側へ帰るからな。神成。後の事は自分で何とかしろよ……妖狐術〖九尾の傾国〗……今だ。放て貴様ら。〖班水の鏡楽〗」
九条先生の具現化した魔力……九つの尻尾から不可しかな何かが放たれ。帝が放った魔力残滓の塊へと当たった。すると両方の力は何の音も立てずに、静かに金色の光の粒子となって消えてしまった。
「……僕の僕達の一撃が消えた? 〖真神白鶴の陣〗が無力化されただって?」
驚愕の表情を浮かべる帝……そして、何故か先程よりも老けた様に見えるのは俺の気のせいだろうか?
「スゥー……ハァー……ここまで面倒を見てやれば、あれも納得するだろう。ではな、神成、地球で待っている。無事に帰ってこい」シュンッ!
「……九条先生が消えた?」
『地球 〖簡易異界・ケレスホルン〗』
「やりましたわ。やりましたわ。上手くいきましたわ!」
「……そうね。私達、やっぱり以前よりも格段に魔力操作が上手くいっているわね」
「見事ですよ。我が子達」
「そうスねぇ~、見違えたっスよ。お二人さん。これは今日は高級焼き肉ッスね」
「「高級焼き肉~! やりましたわ!」やったぁ!」
シュンッ!
「……スゥー……ハァー……ただいま。お前達先程の魔力移動はなかなか良かったと……ぞ?」
「あっ! お帰りなさいませですわ。九条先生」
「九条先生。無事だったのね。いきなり消えたからビックリしたのよ」
「そうか。そうか。心配してくれたのか。流石が私の教え子達だ。優しく育ってくれているな」
「そ、そんな! 可憐で、優しくて、美しいだなんて!」
「て、照れるわね!」
「そんな風には言ってませんよ」
「そうスッ……あれは明らかに……ぶちギレてる顔ッス」
「それよりも貴様等。私がいない間に勉強……サボっていたな? この答案用紙の空欄……私が居ない間、何をしていた?」
「……ヒィ!」
「ハゥ!」
「貴様等は来年受験だ。特進クラスを任されている私が直々に、貴様、二人だけを指導してやってるんだ。一つでも高ランクの高校に進学させてやろうとしているのに……サボるとは何事だ?!」
「「ヒィィーー!! ごめんなさい! 九条先生!!」」
「アラアラ……さっきまで褒められていたのに」
「あー、これは高級焼き肉は無しスッね。終わったッス。あの二人……」
◇
「〖玉藻の前〗……最後の最後まで邪魔をするのかい……かくなるうえはこれで終わらせよう。大アルカナ……起動……〖放浪者の王〗」
ヤマトタケルは全身に〖青の神秘〗を纏い始めた。それは今まで戦ってきた彼の中で最も強い姿と思える程の迫力があった。
「……来るか。最後の本気が」
「〖救国の担い手〗……君を屠り。この列島大陸を再び壊す日々に戻ろう……【蒼依】」
「この身体だと……持って数分か。天雷・回帰〖天雷春光〗」
ドガアアアアンン!!!
最早、伊吹城の城内は最初の頃の豪華絢爛で作られた場所では無くなっていた。幾度と重ねられた戦いにより。全ての部屋が破壊され、瓦礫と化していた。
「……重い……それに速い……一度受けただけで、腕の骨が砕けてしまいそうだ」
「そうかい。なら、そのまま死になよ……【碧の太刀】」
「くそっ!もう。俺の間合いに入るのかよ! 【闇星剣】・〖雷霆星〗……転移魔法〖捌転移〗」シュンッ!
バリバリバリバリ……ドガアアアアンン!!
俺はヤマトタケルとの打ち合いの後、直ぐに転移魔法でとある場所に移動した。
「ハハハ……逃げる一方かい。仲間に頼ったり、逃げ回ったり情けない来訪者だね」
〖神帝区画 帝守閣〗
シュンッ!
「ラグエル! 準備は終わっているかい? 彼は直ぐにここにやって来る!」
「……Hi……master……」
「今、終わったの。始めるから……」
「ああ、頼む」
「「………YES!………LaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLa」」
〖ラグ〗と〖エル〗のデュエットの歌唱が帝都に響き渡る。それにつられてなのか帝守閣にヤマトタケルが突っ込ん出来た。
ズドオンンン!!
「最初の戦いの場に戻って来て何をする気だい? そもそもこんな場所に何が……」
「「〖Raguel・Noise〗」」
それは敵対対象の脳に直接発動する『天弾・装填巧』の第零形態。〖聖声〗。神であろうと、人であろうと例外なく1分間の間。身体能力停止を与える。〖ラグエルの書〗の最大技だ。
「……(これは身動きが取れない?……こんな事で僕が……策にハマるなんて)……あり得ない! 大アルカナ……最終起動……立方体の石帝都……これで全てを踏み潰し、終える!!」
帝守閣の上空に光の光球が顕れる。その光球は力の塊見え、今にも周りを巻き込んで大爆発を起こしさそうとしていた。
「……マジかよ。〖聖声〗を聴いても尚、動けるのかよ……だが、それもただの悪足掻きだ。ヤマトタケル……出番だ。焔……決め手やれ」
〖伊吹城 天辺〗
「はい……刹那さん。貴方が再びこの列島大陸に来てくれた事に感謝します……参ります。〖緋龍 灰神楽〗様」
(うん。何時でも放ちな)
〖(不知火神術━━神炎・回帰〖火之神一閃〗)〗
焔将軍が伊吹城から飛び降りる。
目指すは動乱の元凶たるヤマトタケル。
落ちる。
落ちる。
落ちて……〖灰神楽の神剣〗でヤマトタケルが出現させた光球を真っ二つに切り裂き……その勢いで……ヤマトタケルの右肩から左腹部まで容赦なく、深く斬りつけた。
スパンッ!!
「がぁ?!……君は〖最弱の神ノ使徒〗……何で今更、君が現れるんだ……よ」ドサッ!
重い重い一撃に見えた。焔はこれまでの怨みをその一刀で帝都の支配者。〖武神・ヤマトタケル〗を斬り臥せた。
「……勝負ありだ。君の負けだよ。ヤマトタケル」
「……ハァー……ハァー……ハァー……だろうね。こんな心が篭った〖神炎〗で斬りつけられれば、どんな強者でも倒されるだろうね」
ヤマトタケルは大怪我を負っている。何故か老人の様に老けてもいる。〖ラグエル〗の〖聖声〗も未だに発動している……なのに、なのにだ。普通に俺と会話をしているのだ。
「……俺は部外者だった。だが、君は俺の仲間を傷つけたんだ。そして、未来を壊す元凶でもある〖神々の黄昏〗の一員でもあった……だから倒したんだ」
「未来?…………そうかい……未来か……僕はね。列島大陸の未来を憂いていたんだよ」
「……そうか」
俺は静かにヤマトタケルの……彼の言葉に耳を傾ける。
「うん……神と人族が協力して生きるこの列島大陸はこのままでは滅ぶと産まれた頃から思っていた」
ヤマトタケルは苦々しい表情で俺を見つめる。
「………」
「僕のそんな考えを……周りの神々や人族は認めなかった……最初に僕を信じたのは、鵺や鈴君の様な神獣や怪異だけだった」
シュンッ!
「……タケル……」
「?!……鵺様」
……鵺様が突然、〖黄金の宝物庫〗から現れた。
「鵺の声?……近くに居るのかい?……ハハハ……〖老化の法〗を使い過ぎて老け着るとはね……我ながら馬鹿な事をしたよ」
「……逝くのか?」
「……いやいやまだ生きたいさ。出来るだけながくね……〖神々の黄昏〗に入ったのもその為さ。列島大陸をの全てを一度破壊し、創成する……新時代を創る筈だったんだ。それを君達に邪魔された。僕に付き従ってくれないしさ」
「……くっ! タケル! お前がそんな考えだから。神話時代のお前の仲間達は愛想をだな……」
「鵺様……彼はもう……最後だけでも優しい言葉をかけてあげて下さい」
「な?! 雷様。何でだよ」
「……神話の頃の相棒だったんでしょう? 後悔しない様に彼と会話するべきですよ」
「……雷様……分かったよ」
鵺様にそう告げると。本来の姿に戻ってヤマトタケル前に座った。
「……鵺……」
「……こんなに傷付いて、老けやがって……そんで悪さまでしやがって…馬鹿やろう」
「……ああ、皆からはそう見えていたようだね……僕の考えは神話から現代にかけても変わらなかったみたいだね」
「だな……だから反省しろ! そして、次に活かせば良い……活かして今度は色々な日とに好かれる存在になれば良いんだ。タケル」
「……人に好かれか……そうだね。僕に足りなかったモノは……色々な人をちゃんと見ることだった……列島大陸の土地ではなかったんだね……先ずはそこに住まう八百万の神々、人々、怪異達に目を向け、未来を考えるべきだった……ああ、気づくのがこんな死ぬ間際何て……思ってもみなかった……よ。僕の相棒の鵺……」
「タケル!……おい! タケル確りしろ! タケル!!」
「………アリーナ様。どうかヤマトタケルに安らかな眠りを……来世では平和な日々を過ごさせて下さい……そして、永劫続く魔法世界を願います」
鵺様は大粒の涙を浮かべ、ヤマトタケルを抱き締める。その隣で俺は手を合わせ合掌していた。
〖帝・ヤマトタケル〗……間違いなく今まで一番の強敵だった。
君は強すぎた。それが君を孤高の存在にしたんだと俺は考える。
それが孤独を生み、歪んだのだろうと……だから今は安らかに。ただ安らかに眠って欲しい。
「タケルの身体がひかりになって消えていくだと?」
「……鵺様。多分ですがヤマトタケルの肉体は〖天界〗に向かうんだと思います」
「天界?……そうか。それを良かった……こっちに居たら身体をどう扱われるか心配だったんだ……良かったな。タケル」
鵺様はそう告げて涙を流し続ける。
……こうして列島大陸の動乱は終わりを告げた。
ヤマトタケルの敗北をもって……和国の動乱は終幕を迎えたのだった。
列島を想いし皇天は未来を願う
終