乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.20 臣下無き武神
閉じ込められた。何故、こうなったんだろうか?
〖塔〗君に曼陀羅寺を占領させた。
大嶽丸君には精鋭を連れだって〖黒龍の巣〗に進行させた。
〖神地 天照〗の都は焼け野原にし、再生出来ないように徹底的に破壊した。
滑瓢君には八百万の軍を任せ〖神地 鳴神〗に戦争を起こさせ。
帝都には〖怪異〗の精鋭を残して万全の態勢だった。
それが西から現れた数人の来訪者達によって覆された。
「……あの〖最良〗君が現れてから全てが狂ったんだ。だから、あれ程、驚異になる前に殺すべきだと言ったんじゃないか……彼等はその忠告を聴かずに、僕がその余波を喰らうことになったんじゃないか……ああ、アトス君。ブレインズ君。君達が生きていれば何か変わっていたのかもしれないね……」
〖神話時代 末期〗
「もう少しで西側も平定出来るけど。任せられる人材がいないか……間違えを侵した子達は皆、殺してしまったし、逃げてしまった……そういう事は今まで、鵺がやってくれていたのに何でいなくなるんだ。それに最近は鈴君も僕の前に現さないし」
ズズズ………
「それは君にカリスマ性が無いからだろう。哀れだね。誰も注意したくれない。誰も従おうとしてくれないなんて」
「……何者だい? 君」
「〖神々の黄昏〗のロキさ。君を勧誘に来たんだよ。僕達と世界を変えてみないかい? 新世界の為にさ!」
「新世界?……君は何を言っているんだい?」
▽
〖無闇の部屋〗
「では大アルカナ〖皇帝〗はヤマトタケルに任せる。何か疑問があれば会議集合後。聞きに来てくれ。我々は同士なのだからな」
「同士……ありがとう。後で聞きに行くよ。〖代理人〗さん」
シャキンッ!
「……適任であった……友人としてお祝いを言わせてもらう……タケルよ」
「ハハハ! No.4かよ! 俺様より一つ上かよ。まあ、仕方ないな。この前の決闘はお前の勝ちだったものな。ヤマト」
「おお、大役ですな。タケル殿」
「アトス君……ブレインズ君……アルゴン君。ありがとう。嬉しいよ」
列島大陸を去って良かったと思った。世界には僕と対等に話せる子達がいたからだ。
独自の考え、超越したあらゆる力を持つ彼等が居たから。神話から現代までは案外退屈せずに過ごせていた。五百年前のあの出来事が起こるまでは。
▽
五百年前の〖黄昏の園〗
「は? アルゴン君が殺された? 誰にだい?」
「カンナギの姫君にだよ。ヤマトタケル君……どこに行く気だい?」
「……対等な友人だった。アルゴン君の仇を取りに行くんだよ」
「……勝手な行動は止めた方が良い。まだその時じゃないとあの方も言っていただろう。今は火種を撒き、育てる大事な時だよ。それに君は故郷に戻って、進行の準備をするという役目があるだろう」
「ロキ君。君は友人が死んで悲しくならないのか? 何でそんな笑顔で笑っていられるんだい?」
「ヤマトタケル君がそれを言うのかい? 神話から変わらず部下の気持ちを、格下の気持ちも理解できない強者の君がさ……この人で無しの武神君」
「……ロキ……!」
「おっと。僕は君をこの〖神々の黄昏〗にスカウトした張本人だよ。君と対等な友達を出来る切っ掛けを作ってあげた大恩人じゃないか」
「……それは……感謝しているよ」
「それじゃあ、列島大陸の攻略を始めないとね。それにちょいちょいは帰っていたんだろう? 居たのかい? 君と対等な立場になれる〖怪異〗君達はさ?」
「……五月蝿い。悪いがこれ以上、君と会話をしたくないんだ……それじゃあ、僕は列島大陸へと向かうよ……僕は君をこの〖神々の黄昏〗に誘ってくれ恩人として感謝の念は持っているけど、友人としてはみれないね。君みたいな虚像の神にはさ」シュンッ!
「……部下も友達も居ない。孤高の武神が何をほざくんだよ。偽りで孤独のヤマトタケル君……」
▽
現代 半年前〖無闇の部屋〗
「あっ! ヤマトタケル君。〖死神〗が殺られたよ。残念だったね。殺ったのは〖救国の担い手〗なんだって。本当に残念だったね。君の対等な友達が死んでさ」
「……ブレインズ君が死んだ?……〖救国の担い手〗?」
現代 数ヶ月前〖零の部屋〗
「何でアトス君から〖無闇〗の力を独断で奪ったんだ? ロキ!」
「いやー、参ったね。まさかまた〖救国の担い手〗に殺られるなんてね。君の対等な友達がまた減ったね。これで三人目かい?……誰も居なくなったね」
「君は……何でそんな嬉しそうな顔をしているんだ?」
不気味で恐ろしい笑みだった。歪んでいた。今の僕の様に歪んだ心と表情をしていた。心に闇があるのが分かった。
「何でって楽しいからだよ。強者があらゆる手を尽くして、美しく死んだだからさ。それがどれだけ楽しい事か。君もそう思うだろう? ヤマトタケル君。孤高の、孤高の、孤立のヤマトタケル君……さあ、君は列島大陸に戻りなよ。戻って始めるんだ。列島大陸全土を巻き込んだ動乱をさ。巻き起こすんだよ! それが〖死神〗や〖教皇〗への手向けになるんだからさ。それで殺してあげなよ。〖救国の担い手〗をさ」
「……動乱を巻き起こす……それが二人への手向けに……〖救国の担い手〗を殺す」
▽
〖現在 列島大陸 帝都 亜空間〗
「……そうか。僕の友達を殺したのは〖救国の担い手〗君かい……僕が孤立した原因は〖救国の担い手〗のせいかい……その原因が直ぐ近くに居る……なら殺すべきたね。彼等の仇を。この僕が取ろう━━━〖無闇の白〗〖光和天流〗を放棄しよう……大アルカナ【皇帝】を始動するよ……外の神よ力を〖オシリス〗を起動する」
ピキンッ……パキンッ!!
【破壊の一刀を】
ザスンッ!
〖伊吹城 中央〗
「……ここまでしてやっと使ったか。大アルカナの【皇帝】の力を……【闇星剣】……〖雷星剣〗」
ドゴオオオオオンンン!!
伊吹城の城内が崩壊していく。
「あのさぁ、受け止めないでくれないかい? 君を殺せないじゃないか? 〖救国の担い手〗君」
「バーカ! 死なない為に受け止めたんだよ。 死にかけのおっさん! だいぶ老けたな……〖老化の法〗を使い好きだか? ヤマトタケル!」
「武神に向かってなんて口利き方をするんだい……本当に腹が立つ子供だね。潰してあげるよ」
「そうかよ。ならこっちは最後まで絶えて、終わらせてやろう。あんたが起こした、この動乱をな!」