乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.17 九条と武神
〖神帝区画 伊吹城内〗
「しつこい男は嫌われるぞ。偽物殿」
「ハハハ! それ程の美貌を持ってるのが悪いんじゃないかい? 傾国の〖玉藻の前〗」
ドガアアアン!!
私が居ると不利になる事を悟ったか。おおよそ、私を始末した後、神成の中に居る鈴鹿を解放し。二体二に戦いを持っていく気なのだろう。
ずる賢い●●なら直ぐに思いつくだろう策だ。追い詰められ始め、余裕も無くなってきたか……しかし、神成の奴はさっきから何を出し渋り戦っているんだ?
明らかに力をセーブして戦っている様にしか見えん。あの不知火の娘の成長させる為にあえてやっておるのだろうか?
こんな切羽詰まった戦いの場でか? そうだとしたら、余りにも馬鹿馬鹿し過ぎる。現在、〖七原龍〗とやらが、列島大陸全域に結界を張り、他大陸から外部干渉を遮断している……いや、その前の侵入者を気にしているのか?
………そもそもの全ての元凶の襲撃を気にしているのか。
「……〖輪禍〗……だがその気配も去った後だろう。まさかこの戦いを通じて、不知火の娘を成長させる気なのか? あの問題児は本当にろくな事を考えんな」
「何を……独り言を言っているんだい? 〖玉藻の前〗 神明魔法〖吉備穴済神〗」
「ルオオオオ!!!」
怪物の様な姿の塊が私に襲いかかってい来る。
「何? ここに来て……神明だと? 貴様、隠していたのか? 九尾妖術〖奈落〗」
「ゴアァ? アアアァァ!!!」
この土壇場に来て、まだ手札を残していたのか? 全く。人(神成)も神も性格が悪いのは万国共通か。本当に何で私がここまで骨を折らねばならんのだ。
「隠すだって? 馬鹿を言うんじゃないよ。神明魔法何て程度の低い技を使うまでもなかったてだけさ。とういうよりも僕、程の高位の神聖持ちは純粋に自身の力を最大限に高めた方が強く魔法や技が使えるというだけの事だよ。〖神明〗と言う他人が創った逸話や伝説に頼った力なんて本当の力とは言えないさ」
「……一理ある。だがその発言には疑問も残るぞ。その余裕は貴様が逸話や知名度に恵まれているというだけの事だ。神明すら持てん奴等の事も考えん傲慢な考えだけだと思わんのか?」
「……思わないね。というよりも人族に何を期待するんだい? 彼等は傲慢で理不尽な子達ばかりだ。僕の対等の友人だった魔族のブレインズ君や、厳しい境遇にも関わらず、それにも負けず大国の教祖にまで成り上がった月の民のアトス君の様な素晴らしい子達もいるけどね……基本的には人族何て、下等で、欲深く、愚かで、醜い子達なんだよ。救い様がないね」
「……ほう。だから帝都の人族の大半を化物に変えたのか?」
「へー、こっちの世界に来たばかりだというのに、情報収集が早いじゃないか」
「〖獣耳の加護〗だ。私の獣の眷属など何処にでもいるからな。その聲を聴いた……随分と殺したもんだな。こんな事をアイツが知れば何と言うだろうな」
「知っているかい? この魔法世界では力があるものは何をしても許されるらしいんだよ。あの御方は僕にそう言ってくれたんだ」
●●はそう告げると不気味な笑みを浮かべわたしに微笑む。
「……貴様は何を言っている。どんな世界でも法や制度が必ずあるものだ。それにこの世界は神や人など関係なく平等に……」
「それは古い価値観さ! 僕達。〖神々の黄昏〗は新たな時代を創っていく。世界を壊し、新しい新世界を創り、それはこの世界を超えて。あらゆる別世界を破壊するんだ」
別世界の破壊……そう言って、この偽物は大笑いする。
下らん……非常に下らん妄言だ。
何故、他人に命じられ、教えられた事で動く?
そこに疑念は生まれないのか?
……破壊か。私も遥か昔から沢山の破壊と混乱を生み出してきた。
だが、そんな事で動揺などしなかったが……(別世界を破壊する)か……それは困るというものだ。地球やここ(アリーナ)には今、大切な教え子達が頑張って生きているのだからな。
そこを破壊するなど言語道断だ……何せ、私は今の近代が大好きだからな。
「……別に貴様がこの列島大陸程度の侵略だったのなら多少は眼を瞑っていたのだがな」
「……何だって? 今、何て言ったんだい? 〖玉藻の前〗」
「……私がお前の完全なる敵になったと言ったんだ。●●! その神明は私が彼方に戻る為の対価として奪うとしよう。妖狐術〖八尾の虚鏡〗」
「何を言っているんだ? 僕の神明を奪う? 馬鹿な事を言わないでくれるかい? それにそろそろ消えてもらわないとね。次の子達を狩らないといけない……神明魔法……〖から……?!……何だ? 神明魔法が発動しない?」
「……私が奪ったからな。伊吹城共に砕けろ。九尾妖術〖妖狐衣〗」
九つの衣を顕現させ、鋭利な刃物の様に●●へと突き刺した。
「がはっ?!……玉藻のま…え……君、良くもを……」
私の攻撃で伊吹城が倒壊すると同時に●●も伊吹城の下へと落下していく。
「今宵は満月だったか。スゥー……ハァー……おまけに魔法世界は秋……月見団子日和だな。スゥー……ハァー……」
ドゴオンンンン!!
私は電子煙草を吸いながらそう告げた。