乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.16 武神帝・ヲウスヲグナ
〖伊吹城 庭園〗
「……スゥー……ハァー……これで残り何割だ。神成」
無表情でいきなり電子煙草を吸い始めた。九条先生。更に服装はスーツとは、なんと異世界で見るとミスマッチにしか見えない姿だな。
「九条先生。電子煙草止めてくれません。俺、まだ未成年の中学生ッスよ」
「……それだけ距離を取っていれば煙は吸うまい。それよりも応えろ。あの不知火の娘の活躍で何れだけ削れた?」
「大雑把ですが、七割位は削れたんじゃないですかね? でも帝は俺達に対して大アルカナを使っていませんから……まだ奥の手は残してると思いますよ」
「フム……〖漿神(すいじん)魔法〗〖操りと神明の神眼〗〖無闇の白〗〖神気・青〗〖光和天流〗〖老化の法〗〖真神と白鶴〗に〖大アルカナ〗か……バグレベルで強いな。チーターか? アイツ」
「……何でゲーマー用語使いまくるんだよ」
「それは私がゲーマーだからだ。神成……炎の神気の莫大な負荷を喰らって〖漿神(すいじん)魔法〗〖神眼〗〖神気・青〗は使えんか。〖真神と白鶴〗は私と神成で対象した……畳み掛け、止めを刺すなら今が最適解か。〖老化の法〗の極限までやられる前に。神成! 不知火の娘! 囲むぞ。奴が立ち上がる前に止めを……」
「……そうはさせないよ。裏切り者の〖玉藻の前〗……君が最初から僕に付き従っていれば、こんな地べたに這いつくばるなんて屈辱を味合う必要なんてなかったんだけどね……」
「……やれ! 貴様等」
「了解! 〖雷豪百激〗」
「はい! 〖灰 噴火〗」
「……退きなよ。邪魔な〖神ノ使徒〗……今は君達に構ってる暇はないんだ。裏切り者の〖玉藻の前〗を殺さなくちゃいけないんだよ。〖無闇の白激〗」
白色の霧が漂い……烈火の如く周囲を爆発させていく。
ドドドドドドドド!!!
「ぐっ煙幕か?」
「何も見えません。一端離れましょう。刹那さん」
「ああ!」
俺と焔は帝から数十メートル程の距離を取った。
「ちっ! 熱湯も……〖神気・青〗の部類だったか」
「ハハハ……判断をミスたね。今の僕に成長の隙を与えてくれるなんてね……我を更なる全盛に至らしめよ。〖老化の法〗よ」
帝の身体がまた変化し始める。俺と対峙していた時の様に歳を取り始めた。青年の姿だった男が、立派な大人の男性へと姿を変貌させていく。
「ハハハ……経験、知識、肉体、神聖、神秘、魔力の全てが全盛期だった頃まで戻る事になるとはね。それ程までにムカついているという事なんだけど……僕の怒りが分かるかい? 〖玉藻の前〗」
『列島大陸が天印 武神帝・ヲウスヲグナ』
「スゥー……ハァー……知らんな。私は今、あのアホ二人と、貴様等が巻き込んだ神成の事しか考えていないんでな。偽物殿」
「つっ!……君はどこまで知っているんだい?」
「知る? いや、私は見えているだけだ。貴様の心が濁りきっているのをな。いったい何を取り込めばそれ程までにどす黒くなるんだ?」
「そうかい。君は見えているのかい。僕の中が……ならさっさと消してあげないといけないね。〖玉藻の前〗……〖光和天流〗・〖積乱雲〗」
「……私に狙いを定めるか。まあ、それも奴等の為になるか……九尾妖術〖薫〗」
ドゴオンンンン!!!
〖伊吹城 外〗
「せ、刹那さん。九条殿が集中的に狙われ始めましたが」
「俺達三人の中で一番厄介だと思ったんだろうな。それよりも俺が気になるのは帝がまた年を取った事だ……さっきまでの姿が全力じゃあ、なかったんなら俺達は帝の強さを見間違っていたな……ヤマトタケルは強すぎる。九条先生……いや〖九尾の妖狐〗にすら対抗し得る力を持っているんだからな」
「……では私達には勝ち目はもうないという事ですか?」
「何もそんな事は言ってない……〖三明の剣〗……成る程。大蛇とサーシャはこの場面を想定して、俺にこれを託したのか。エスフォール、ラベル、ガブリエル」
ズズズ……
「なんじゃ、私が私が着くことは分かっておったのか」
シュンッ!「ハイハイ~!」
シュンッ!「魔王様の相棒殿。何でしょうか?」
第二摩天楼での戦いを終えたエスフォールが伊吹城に来てくれた。それと花魁達の治療にあたってくれていたエスフォールの契約者〖ラベル〗、天使〖ガブリエル〗も〖黄金の宝物庫〗内から呼んだ。
「君達にやってもらいたい事がある。今から、それぞれに一本ずつ剣を渡し、指定の位置に待機していてもらいたい…そして、俺が合図を出したら……帝に向かってその剣を投げてくれ……その時がこの動乱を終わらせる最後の時だからな……」