乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.10 天邪鬼は思案し、神を止める
魔法世界の東の最果て 〖大瀑布 極獄島〗 神代時代
「へ? 本島に行って〖帝〗とか名乗る奴の監視をして来いですか? 閻魔様」
「……ああ、奪衣婆の奴が騒がしく言うのだ。動乱が始まるだとかな。だがここはあらゆる死者が来る●●だ。裁判もある。私は動けんからな」
「な、なら別の奴を行かせれば良いではないですか。俺には獄卒としての仕事が……」
「ありませんよね? 今朝だって、鼻をホジリながら暇そうに空を眺めていましたしね」
「篁。お前だって、一緒に団子食って、俺と駄弁っていただろうが!」
「……団子? 何? 篁ちゃん。私に仕事、押し付けて団子食ってたの?」
「閻魔大王様。この人は〖天邪鬼〗ですよ。なので言っている事が逆になるのです」
「……馬鹿、言ってんじゃねえよ! 悪友! お前はいつもいつも、自分が都合が悪くなる時だけ、俺を天邪鬼だなんだと言いやがって、本当の俺はな……」
「何で私の分まで残して置かなかった! この○○!」
ゴツンッ!
「ガハァ?……そっちかよ? 閻魔様?!」
「良い拳骨です。流石、閻魔大王様」
「良いから。本島には行って来い。○○。数千年後、何かは間違いなく起きる。その中でお前では対処できないと思ったら、記録を写し、残して帰還しろ。後、お土産の団子は買って来るようにな」
「……理不尽ですぜえ。閻魔様は……」
「あっ! 私は草団子でお願いします。天邪鬼……」
「お前は黙ってろよ! 篁!」
▽
「(あー、懐かしい夢か?……いや、走馬灯か……思えば数千年前は楽しき時だったものだな。閻魔様や篁の野郎は元気だろうか? 帝都がこんなに滅茶苦茶になっては土産どころではないが、買って帰らなければ数千年振りに八つ裂きにされかねないからな。北の雪国の茶屋に寄って買って帰るしかないか。しかし……しかしだ。この列島大陸の本島の奴等にも世話になったのは事実……滑瓢殿……大嶽丸殿)」
▽
「天邪鬼。今宵は満月だ。月の峰神宮の池の夜景を魚に語りおうか?」
「いや、俺はそういうのはしょうにあわないぜ」
「良い! 貴殿と語り合うのは楽しいのだ」
「天邪鬼。獄卒時代の話を聞かせてくれ。お前の話は何故か楽しく聞き入ってしまうんだ」
「大嶽丸殿。北への遠征から帰って来たのか?」
▽
「……(別に帝には世話になった覚えは余りない。あれは俺が普通の怪異よりも多少強いのを見抜いて、側付きにしているだけだった。というよりも俺の事はモノとして見ていても、ナカミを見ていない……心を見ていないのだ……深く見ているのは、滑瓢殿、大嶽丸殿、鈴鹿御前殿を含めた側近の三名だけだろうか。あれを数千年近くで見てきたが……あれには〖怪異〗以外の種族の側近はいただろうか?……駄目だ。思い出せん。どうせ、あれの幻術で忘れさせられているだけだろう。あれには思い入れはないが、世話になった三名には恩がある。だから恩は返そう。この強者二名を俺が食い止めれば。あれの勝率も多少は上がるだろう)……土遁術〖海若の結界〗」
ズズズズズ………!!
水中から土の箱が現れ始める……神代魔法の力を感じるけど。〖色〗の気配が無い? 何かしら? あんな力、初めて感じるわ。
「……これは未踏の島大瀑布の……」
「そうだ。俺専用の領域を発動した。そして、この結界の中にお前達を終戦後まで閉じ込めさせてもらう。ここは俺の世界。俺の恩義が潰えない限り、アレが倒されない限り、勝たない限り、ここからは出れない契約を交わした……神と神のお娘の二神を自由をこの戦いで封じているならば、アレも俺の事は許してくれるだろうよ……来い! 貴様等」
「……天邪鬼さんの雰囲気が変わりましたね。極神様」
トンッ!
「そうね。この結界は……契約の結界ね。確かにここを出るには、あの子達の戦いが終わるまで出れないみ契約をされたわね」
「そんな。それじゃあ、この人に勝って。セツナ様の所に行けません~」
「行かせない為に。〖上奏の契約〗まで結んだんだ。対価はこの数千年に渡る〖怪異〗方へ恩義なり……格はそちらの方が遥かに上だろうがな。来い! 終戦まで戦い続けお前達を足止めしてやろう……」