乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.9 蒼と天
〖神帝区画 大扉〗入口(水中)
「ガアアア!!! 大渦に巻き込まれ、帝都を一周したのかえ?!……己、己、許されねえ、許さねえ……お前等は許さねえぞ。水の邪神共」
「……しぶといわね。私とアオイさんの大水を喰らってピンピンしているなんて」
「鬼族の皆さんは頑丈ですからね~! こうやって直接攻めないと……水遁術〖流蹴〗」
青龍の娘。アオイの両足に魚の様な尾ひれの魔力が覆われていく。
「それは……〖神殺しの力〗よね? まさか貴女、纏えるの?」
「はい! 列島大陸の特種な力を持つ〖七原龍〗のお娘なら纏えるんですよ! 凄いですか?」
「
凄いってものじゃないわね。普通……〖神秘〗が少しでもある神々が神気に触れれば、何かしらの状態異常を引き起こすものよ。一部、例外はいるのだけどね」
「そうなんでねえ~! でしたら、神の娘がどうやって〖神気〗を使って戦うのか見ていて下さい。極神様~! 行ってきます!」ダッ!
「あっ! ちょっと待ちなさい。先ずは相手の出方を……水中に潜って行ってしまったわ」
「たくよう。たくよう……まさかここまで攻められるとは思わねえだろうよ。第一、第一よう。俺は反対だったんだ。滑瓢殿や大嶽丸殿を西側の地に遠征させるなんて……長い時間をかけて、怪異を増やし〖塔〗殿に任せていれば良かったんだよ……やはりあの若僧では駄目だったか……何が〖神々の黄昏〗だ……突然現れ、でしゃばりやがって……こんな事なら。〖閻魔〗様や、〖素戔嗚〗様に来て頂くべきだった。そうしていれば、今頃、この列島大陸がこれ程に荒れる事は無かったんだよ……ブツブツ……」
「長い独り言の最中、失礼しますね。蹴りのデリバリーに来ました~! 受け取って下さい~!」
「……あ? 何だ? 俺は今、虫の居所が悪いんだがな……ゴガオオオオ?!」
ドボンンン!!
「いっちょあがりです~!」
「ガボボボ?!……(クソッ! またか……あの青髪の娘は青龍所の眷属か。そんで高層塔から俺を見下ろしてやがったのは、隣の暗黒大陸の……〖極神〗殿とは、普通は他大陸の争いに介入してこない筈だが……天狗殿と摩天楼を駆け回っている女からは魔法大陸の出身者の気配がした…暗黒大陸と魔法大陸側があっちには付いてやがる。帝は余裕そうに構えておるが追い詰められ始めてるが事実じゃねえか。こうなったら裏切るか? いやいや、このタイミングで今更、裏切った所でこの戦いの後に俺が静かに始末されるだけか……ならばこの混乱に乗じて逃げるしかねえか)……土遁ブ…ツ……ゴボッ……〖裏霞鬼〗」
「……出てきませんね? 逝き絶えちゃいましたかね? 天邪鬼さんは」
「いえ、あれを見なさい。アオイさん……来るは」
……水中から全長三十メートル程の巨人の様な鬼が現れる。さっきとは全然違う姿をしているわ。暗黒大陸の悪鬼族とはまるで違う姿。
「ゴオオオオアア! 誰が逝き絶えるか。青龍の遣い。良くもこの帝都をここまで破壊してくれたものだな。こんな水中都市のようにしてくれやがって、この戦いの後の事も考えないか? お前達は、確かにここは俺達〖怪異〗の楽園だった。帝様は士族を虐殺し、俺達に居住区をくれたんだからな。そんな思い入れがあるこの場所をお前達は愚かにも破壊し、水浸しにした。これがどう言うことだか分かるか?」
「……うるさい。悪鬼ね」
「説明が長過ぎますね。何だか説教されている気分になります」
「……なら早く黙らせましょう。私、〖鳴神〗の地での戦いで疲労が貯まっているから前には出れないから、サポートに回るわね。アオイさん」
「了解です! 行きます…水遁術〖尾蒼〗」
「何だ? お前は! この天邪鬼が話している最中に攻撃するとは、俺を馬鹿にしているのか? 土遁術〖土砂降〗」
水中化した〖神帝区画 大扉〗の周辺の建物が浮いて、土塊が泥となってアオイさんの方へと向かって行くわね。
「させないわ。極神魔法〖白鯨の汐吹〗」
私は天邪鬼に〖神秘〗が交ざった神水を浴びせた。
「ガボアガ?! 己、そこの神秘的な女! よくも技を放っている俺に対して、攻撃をしたな? お前には戦いの中での美学というものがないのか? そもそもの話だ。他大陸の神か仏だか知らないが、事情も全て把握せず戦いに参加してくるなど、蛮族が如く行動だと思わないのか? 普通ならば他大陸のいざこざなど見て見ぬ振りをするものだと神話の時代からのならわしではないか? それをお前等、暗黒大陸の者達は平気で破るとは何を考えて……」
「隙ありです! えいっ!」
ボキッ!
「貴様は万死に値す……ゴガア?!」
ボキッ……ドボンッ!
アオイさんの強力な足蹴りで再び、天邪鬼は水中へと沈んで行ってしまったわ。本当に良く喋るうるさい敵……