乖離決戦・列島を想いし皇天は未来を願う No.5 神人・小碓王
「転移魔法〖縮転移〗」シュンッ!
俺は帝との距離を取る為に、簡易転移魔法で〖帝守閣〗の入口付近へと転移した。
シュンッ!
「……これだけの攻撃で何れだけ削れたと思う。焔」
シュンッ!
「二割……いえ、三割程でしょうか。ですが帝はまだ〖大アルカナ〗〖神眼〗〖神話〗の力を何も使っていません」
「だな……それに帝のあの姿。何かを偽っている様に思えてしょうがないんだよな。それに俺が知る書物。〖古事記〗の中では、彼は青年だった筈なんだよな」
「……まだまだ本気では無いという事ですか」
「ああ……行こうか。そろそろ〖雷火の殺陣〗の効果が切れる」
「……はい」
〖帝守閣〗
帝守閣の入口を再び潜ると、そこは凄まじい量の水が流れる場所に変わっていた。俺が放った雷、焔が放った炎は全てかき消されてしまっている。
「……こちらの攻撃は一切受けず、僕に攻撃を与えるに与え、逃げるとはね。現代の〖神ノ使徒〗は、本当に逃げ隠れが好きな子達ばかりだね」
髪の色が白から青黒色へと変わっている。俺達が与えた筈の傷も見当たらない。
「体が少し成長している? 神人化したのか……帝……いや、ヤマトタケル」
「へー、僕の神明に気づいたのかい? 厄介だね。異世界からの訪問者君は……だから、〖代理人〗や〖女教皇〗には、地球からの派遣者を排除する事をあれ程勧めたんだ。それを放置した結果が、〖神々の黄昏〗の大アルカナの半分を倒される結果だよ」
「その中に新しく君も加わってもらう……【皇帝】……」
「そして、この列島大陸の動乱を終わらせて頂きます」
「〖将軍〗……君がそんな台詞を吐くとね……〖最良〗の彼なら僕に届くだろう。だけど君は〖最弱〗の〖神ノ使徒〗。君は喋るな。虫酸が走るよ」
「……さっきから〖最良〗やら〖最弱〗とか言っているが、何なんだ? いったい?」
「あれ? 知らないのかい? 魔法世界の七大大陸の〖神ノ使徒〗のあだ名さ。君はあらゆる敵を倒した魔法大陸の〖最良〗……そして、その娘は列島大陸の眷属達の余り者から選ばれた〖最弱〗……現在の七大大陸で無価値の〖神ノ使徒〗という事なのさ」
「無価値?……焔。コイツはいきなり、何を言ってるんだろうな。神ノ使徒が無価値だ何て話、聴いた事がないぞ」
俺はそう告げると隣に立つ焔の方を見た。その表情は烈火の如く怒りの表情をしていた。
「……それは貴方達が〖怪異〗側と結託して、歴代の〖神ノ使徒〗候補を殺して来たからではありませんか。そのせいで、あの一族とヨル殿は他大陸へと去り、唯一眷属として残った私が、〖天照〗様と〖緋龍〗様、二神の眷属となり、そのまま繰り上がりで列島大陸の〖神ノ使徒〗になったのは」
「帝の奴は……〖七原龍〗の歴代の眷属を殺してきたのか……それで列島大陸にはあれ程の〖怪異〗達が各地に溢れて暴れているのか」
「それは全て、〖七原龍〗達が悪いね。育てる筈の〖神ノ使徒〗の元となる眷属を修行と言って一人で寺院に預けるなんて、好きなタイミングで殺しに来て下さいと言っている様なものだと思わないかい? 〖最良〗君」
「……一切思わないな。眷属殺し! お前はやっぱり〖神々の黄昏〗の一人だと確信したぞ。出番だ。〖ラグエル〗。〖天使の歌姫〗」
「えぇ……マスター……LaLa……set………Standby……Aaaaaaaaaa……LaLaLaLa……♪♪」
「「「「「LaLaLaLaLaLaLaLa……♪♪♪」」」」」
「曼陀羅寺で歌唱をしていた〖天界〗の異物かい……邪魔だね。久しぶりの神人化で閉じていた眼も開いたし、その子達は僕が操って有効活用してあげよ……」
ドンッ!……ガキンッ!!
「……血? 〖最良〗君。君、僕の身体に何をしたんだい?」
「〖ラグエルの書・(陰)〗……『天弾・装填巧』。臨機応変の変則武器だ。出し惜しみはしない……帝よ。ここで君を確実に倒す」
金色と銀色に光る機巧武器。それが〖ラグエルの書・(陰)〗だ。今は銃の形を取っているが、これは変則する。敵対対象や戦いの環境に対象する為に最適な形を造る武器。それが『天弾・装填巧』。
「……海外の玩具かい。ロキ君、辺りが喜びそうな武器だね。次の黄昏の園での会議の時にお土産に持っていこうか」
「そんな未来は来ないぞ。帝……やるぞ。シャディネス・ラグエル! 〖聖刻〗」
「……奇怪な武器から鉛が飛び出して来た? そんな玩具で何が出来るんだい?……この〖神人・小碓王〗をさ。〖最良〗君」
「なら受けてみろ! 天罰の銃弾……〖ラグエルの聖痕〗をな! 帝」