現代魔女と逸話御前 No.1 細大火力
この広範囲の攻撃を目にして、ようやく神成殿がこのサーシャと言う少女にこの場を残し、先に進んで行ったのが納得できた。
「なんだよ。これ……デタラメな破壊力じゃねえか。神成様の仲間っていうのは皆、こうなのかよ!」
拙者の方に乗る小動物。神獣の蓬莱殿と言ったか。化の者も驚愕の表情だ。
「ここは確か、上級区画の花魁通りだった場所でござるよ。それが建物ごど吹き飛ばされているとは……」
あの者を神成殿に紹介されたのは数日前。
(建宮。この娘が勇者パーティー時代の時の仲間。サーシャだ。そんでこっちが、俺が列島大陸をさ迷っていた時に助けてくれた仲間の建宮と焔だ。皆)
(……サーシャです。よろしく)
(そんで俺が蓬莱と)
(鵺だ。〖神地 鳴神〗からやって来た)
(拙者は忍者の建宮と申す。よろしくでござる。サーシャ殿。蓬莱殿。鵺様)
最初の印象は何とも無防備で無力そうな少女と勝手に思い込んでいた。これが〖黒龍動乱期〗を解決してくれた神成殿の仲間とは到底思えなかったでござるが、認識を改めなければならぬ。
神成殿を含め、彼の仲間は皆、強者なのだと。
〖炎上する花魁通り〗
黒煙、漂う中、一人の女が生き返った。
ズズズ……
「ケッホ! いきなりなんなん? お互いに自己紹介もし合わずに、いきなり戦闘なんて…てつまらんわ~、服もボロボロにしよってからに着替えかアカンやん。もう~」
鈴鹿御前が裸体の状態で姿を現し、収納魔道具から新たな服を取り出し着始めたでござる。遠目で着替えが見えないでござるな……
「……私はサーシャ。よろしく、鬼狐の人」
「うちは鈴鹿御前言いますわ~、帝様の愛人なんよ」
「……愛人? 恋人とかじゃなくて?」
「帝様もうちも想い人がおるからね~、だから形だけの愛人。仮初めの関係なんよ……それにしてもアンタ。結構やるんやね~? ここいら一帯をメチャクチャにして、生きてる人達が居ったらどうするん?」
「……嘘をつかないで。ここにはもう人なんて居ない。居るのは人成らざるお化けばかり……」
「あらあら~、感も鋭いんやね。山本はん。出番でありんす」
鈴鹿御前のその一言で上級区画の地面が突然、揺れ、建物が崩れそこから数千の肉塊が飛び出して来た。
「「「「「ぐおおおおお!! 鈴鹿御前……話が違うぞおおぉ! 何故、憎き〖七原龍〗共が外で暴れている? 奴等を相手したせいでワシの身体はこの様な醜き姿に変わり果てたぞ!」」」」」
〖死にかけの 山本五郎左衛門〗
「まあまあ、本当に気持ち悪いお姿どすなあ~、可哀想に~、ほんならその怒りをあの建宮はんと小動物の神獣にぶつけなはれ」
「「「「「ああああ?!! 忍者と神獣だと?!」」」」」
「いくでござる。蓬莱殿! 風遁術〖大堰風戦〗」
「おうよ! 蓬莱風術〖風雷鼬〗」
山本五郎左衛門の肉塊に、強力な斬り風と雷が降り注ぐ。
「「「「「がああああ!! これは神代と神話の術か? 止めろ! ごみ共!! 蒼生……〖疑似妖暹〗」」」」」
「「「「ルオオオオオオオ!!!!」」」」
人と怪異が混ざった者達が上級区画の家々から現れたでござる。そして、拙者と蓬莱殿を標的と定め攻撃を仕掛けてきた。
「……蓬莱殿。話が違うでござるぞ。弱っている者を仕留めるだけで、後は終わりじゃなかったでござるか?」
「いや、俺も最初はそう思ってたんだがよう。建宮……俺とお前なら大丈夫だ。この程度なら乗り越えられるぜ。ここで一番やべえのはサーシャ嬢ちゃんが抑えててくれてるからな。始めるぜ。列島大陸での俺の本気……細大火力をな。神代……回帰……『雷蓬莱術・雷風迅鎌鼬・蓬莱』」
上級区画の空に雷と風が鳴り響き、その力は一匹の神獣の元に集約されていく。
「魔法大陸では〖神秘〗の不完全で中途半端だったが、ここは列島大陸……百の力を出し切る事が出来るぜ……神成様との繋がり『蓬莱の尻尾』もあり、我、ここに完成せり。〖截り截り雷風〗」
〖神話神獣・蓬莱極鼬〗
雷と風を纏った強大な白き鼬が現れ、攻撃を放つ。そして、その攻撃は人と怪異の混ざり者〖腐敗〗達に降り注がれる。
「「「「「がああああ! 神話の神獣が何故、暴れる? 止めろ。俺様達が焼き焦げるだろうがあああ!!」」」」」
〖花魁通り跡〗
「ほんに残した人材は最適解やね……現代の怪異。〖山本〗はんには〖神話〗と〖神代〗の力を持つあの子等を当てて。自分は神秘殺しのうちと対峙するんやもん」
「……そう。だから私が残った。〖現代〗魔法しか使えない私が残った……」