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帝都動乱 破


〖帝都 中級区画〗


「「「「「「「「シュララララ!! 出てこい人に取り憑く〖怪異〗共よ。遊びは終わりだ。我が戻って来たのだ。滅ぶが良いわ」」」」」」」」


「シャシャシャ……大蛇様。お久し振りにお会いしましたが、変わらずお元気そうですな」

「オホホホ! 数百年振りですかね?」


「貴様等は……〖般若〗と〖能面〗か。我の言いつけ通り帝都に潜伏していた様だな。ご苦労であった」


「シャシャシャ……いえいえ。主人の頼みならば。悪鬼だって()びへつらいますわい」

「オホホホ!! そうね。とても怪異臭くて最悪な場所てしたけども。〖黒龍〗様の命なら仕方ないわ」


「……感謝する。貴様等は一足先に西へと帰えり、〖黒の都〗で体を癒せ。奪衣婆に最高級の湯を張らせておくのでな」


「シャシャシャ……おお! 〖館湯(やかたゆ)〗をご用意いただけるとは……では」

「オホホホ!! 数百年の疲れも取れそうね……では」


「「御先に向かって下ります。〖黒の都〗の主。〖八岐大蛇〗様」」ズズズ……!


「シュララララ……大嶽丸も哀れなものだな。側近で仕えさせていた者達が、元は我の腹心だったと気づかなかったとは……鬼神は消した。次はあの娘か……」


〖八岐大蛇〗はそう告げると〖怪異〗に取り憑かれた者達に攻撃を再開した。



〖上級区画 花魁通り〗


「こっちよ! お客さん」「ねえ、私達と遊びましょうよ」「私を選びなさい」「お酒でもどう?」


「無事に〖上級区画〗に来たでござるが……」

「花街みたいな場所に出たな……」


 夜桜が待っていた。中級区画の街並みを例えるのなら、〖摩天楼〗だろうか。鉄と木で出来た高い建物に囲まれた街だったのに対して、ここは夜街だ。


 〖上級区画〗に入った瞬間。空は完全な夜へと変化し、満月が天を照らし、夜桜が美麗にユラユラと舞っている。


 そして、街には花魁の格好をした美女達が、煌びやかな装飾がされた店の中で手招きしていた。


「……異文化。それに着てる服が」

「際どくてイヤらしいのう。列島大陸(イザナギ)の女は皆、焔やあの者達の様に変態なのか? 焔よ」

「…誰が変態ですか。 誰が……あれは本島にある数々の国々から人質として連れて来られた各里や国々の姫達です。帝の幻術にかかりあの様な格好をさせられているのでしょう」


「……マジか。なら救ってやらないとな。全員。〖黄金の宝物庫〗で、ここいら一帯の人質と建物を転移させるか。転移魔法〖地点の転来〗」


 俺がそう唱えると。花魁通りの美女達が、突然現れた転移魔法陣の中へと消えていく。これで〖黄金の宝物庫〗の中は、しばらく花魁(おいらん)の女の子達で賑わ……


「止めぬか、馬鹿者! 今すぐに元に戻せ! アホ刹那」


「ゴガァ?!」


 俺の隣で静かに、俺の勇姿を見守っていた筈のエスフィールが、俺の脇腹にチョップしてきた。


 お陰で転移させていた筈の花魁の女の子達と建物が元の場所に戻ってしまった。


「……おのれ。エスフィール。何してんだよ」


「何をしてんだよは、こっちの話じゃ。馬鹿者。突然、和国で位が高い者達を一斉に拉致しようとしておるのだ。お主は」


「……兄弟子。最低」

「……昔と全然、性格は変わっていませんね。セツナさん」


 サーシャと焔の目線が痛い。この娘達は男のロマンと言う奴を分かっていない。ハーレムというものを……俺は確かに最初はモテる。モテるが結局、紆余曲折経てフラれる。


 だから、一度だけでも夢を見て見たいと思うじゃないか、花魁ハーレム何てシチュエーションを……


「分かるでござる! 分かるでござるよ! 神成殿。男子なれば一度は多数の花魁と(たわむ)れる事、夢が如し」


「黙りなさい! 建宮君」

「黙らぬか。 建宮」


ドスッ!「ゴガァでござる?!」


「た、建宮!!」


 建宮が花魁について語り始めようとした瞬間。エスフィールと焔が、建宮の脳天に天誅を下した。


「たくっ! 男と言うものはエロい事しか頭にないのか?」

「こんな状況で良く変態的な思考が出来ますね。お二人共」


 エスフィールと焔は呆れ顔で、男共である俺と建宮を見つめる。止めろ。そんな目で俺達を見ないでくれ。


「あれ? 何で私達。こんな所に居るの?」

「お父様とお母様は?」

「私は……雪の国にいた筈ですが?」

「……ここは? どこ?」


 などとやり取りをしている間に何だか周りが騒がしくなってきたみたいだ。


「あらまぁ……帝様の〖幻術〗が解けとりますなぁ……誰が解いたん? あんはん等の誰かなん? 面倒は~、今、帝様は御目目が(ひら)かないさかい。この()等邪魔やね……鈴鹿剣術……〖白鳥〗」


 そいつは花魁達よりも、一際(ひときわ)派手な着物を着ていた。獣耳、色白の肌、瞳は赤く、妖艶だった。右手には柄がない短剣。左手には派手がらな長剣の二振りを持ち俺達の前に現れた。


「これは?……刹那! 全員……いや、この〖中級区画〗とやらには居る全域の娘達と建物のを転移させよ。そうしなければ。全員、切り刻まれる」

「……だよな。とでもない。〖神秘〗持ちだもんな! 転移魔法……神代・回帰……〖極東移転〗」


 エスフィールが叫ぶと同時に、俺は転移魔法で一番の即効性と広範囲の転移魔法〖極東転移〗を発動した。


 先ず始めに白い(もや)が発ち込み、一瞬で拡大する。そして、周囲数キロ程の建物が、数秒で細切れへと変わり果てた。


「ほーん。やますなぁ~、あの一瞬でうちの攻撃範囲を見極めて対応なさはるなんて」


「……黙れ! 女狐。お主、あの娘達を全て殺そうしおったな」


「当たり前やろう~、世界を切り替えたのか知らんけどね~、騒がれ、逃げられ、和国中にここの事を喋られたら天下統一もパ~やもの」


 ……確かに最初の転移で世界は一瞬だったが切り替わった。魔法世界(アリーナ)は一つの世界。魔道具もその道具の内面に魔力を独立させ、一つの世界を造り出している。それは〖黄金の宝物庫〗七つの秘宝も例外ではないだろう。

 

 あの花魁姿の女の子達は〖黄金の宝物庫〗と言う一つの世界に入った。それが原因だったんだろう。

あの娘達がかけられた帝からの〖幻術〗が解けたのは。世界が切り替わった。その余波で幻術も消えたのだろうか?


「ハイカラなドレスを着た金髪さんは暴言が好きなんやね~、ぶっ殺したるは~」


「ほう。ヤれるものならヤってみよ。返り討ちに……む? サーシャ。なんじゃ? 今、あの女狐をコテンパにしてだのう」


 エスフィールの前に自分の杖をヒョイっと付き出し静止した。


「……はい……ストップ。ユナ姉は兄弟子と先に行って……あの狐さんの相手は私がやるから……建宮、蓬莱と一緒に」


「なんじゃと? 建宮(スケベ)(いたち)を?」


「拙者がスケベでござるか?」

「俺が残るのかい? サーシャ嬢ちゃんよう」


「……うん。ここは広いフィールドだから、戦うのなら私の方が向いてるから……兄弟子。本気で暴れるから……前に進んで避難していて」


 サーシャはそう告げて俺をジーッと見つめて来た……あの目は本気を出す時の目だ。不味い! ここに居たら、この娘の戦いの邪魔になる。


「ああ、分かった。エスフィール、焔、鵺様。行こう。ここが今から地獄と化す前にな」


「……馬鹿言え。サーシャと建宮と(いたち)を置いていくなど」

「そ、そうです。強敵、〖鈴鹿御膳〗殿が相手でも、この人数で戦えば……」


「駄目だ! 〖風の加護〗がある建宮や蓬莱様ならまだしも。本気のサーシャの攻撃に巻き込まれれば死ぬ事になる。サーシャ! これで良いんだな」


「……うん……転移魔法で飛んで逃げて」


「おう! 転移魔法〖峠転〗」

「おい! 刹那。お主……」

「……際西の魔術師さんですか」

「神成様のかつての仲間かい……蓬莱死ぬなよ」


 そうして、俺達は〖神帝区画〗へと向かう為に上級区画の奥へと転移した。


「……何なん? アンタはん……ブカブカ帽子の可笑しな可笑しなチビッ子は……」


「二重詠唱……火雷魔法……〖炎雷抜海(えらいばっか)〗」


 上級区画に火と雷の柱が上がり……そして鈴鹿御前は一度目の死を簡単に迎えた。

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