二人の騎士に救いの手を No.8 呪いは解け、日は進む
「はぐれ妖精の里」朝明け
「『世界樹の根』が光っている。という事は、地上は朝ということか」
ケイ殿がそう言いながら地下空域の中央に生えている『世界樹の根』を見ていた。
「ユーウェイン!良かったわね!元に戻れて」
「あぁ、ありがとう!ベディヴィア卿!これも全てセシリア様のお陰だ」
「ベディヴィア卿なんて。そんな、他人行儀な言い方よしなさいよ」
「あぁ、そうだな!ベディヴィア卿」
「人の話。ちゃんと聞きなさいよ!」
「あぁ、セシリア様の所に行ってくる」
「待ちなさいよー!!!」
ユーウェイン卿とベディヴィア卿はコントをしながら、セシリアの元へと向かって行った。
「セシリア様!!」
「んにゃあ?誰にゃおにゃえ?わっちの知り合いにおにゃえみたいなイケメンは、ヒスイ意外知らないのにゃあ」
「ヒスイ?‥‥‥宝石ですか?いや、そんなことより私ですユーウェインです!貴方のお陰で無事。元の姿に戻ることができたユーウェインです」
「んにゃあ?あの、火傷が酷かったニューエンにゃあ?おにゃえ、そんな、イケメンだったのかにゃあ?」
「イケメンの意味が分かりませんが、私は決めました。貴方に救ってい頂いたこの命」
「呪いを解いたのは、セツニャにゃぞ!」
「貴方の為に、今後は使っていくと!」
「わっちの話を聞けにゃあ!まぁ、そんな、冗談が言える位に元気になって良かったにゃあ!ニューエン!よしよしにゃあ!」
セシリアはそう言いながら。ユーウェイン卿の頭を優しく撫でた。
「セ、セシリア様!なんと、勿体無いご褒美を!ありがとうございます」
「ご褒美にゃあ?!‥‥‥まぁ、良いかにゃあ!よしよし」
「そこまでよ!くそ猫!私のユーウェインから離れなさい!」
「あん?誰にゃあ?おにゃえ?」
「私?私はユーウェインの元許嫁のベディヴィアよ!」
「今は違います!セシリア様!」
必死に叫ぶ、ユーウェイン卿。
「元許嫁にゃあ?ベディちゃんとやらはニューエンにふられたのかにゃ?プププウ!よしよしにゃあ!」
「わん!」
「なに!笑ってンのよ!くそ猫!!ぶっ殺すわよ!!」
「怖いにゃあ!ニューエン!!」
「ベディヴィア卿!セシリア様が怖がっている。そんなに威圧的な言い方をしないでくれないか?」
「な、なによ!ユーウェイン!!私は貴方の為に‥‥‥」
「私の為、私の目からすれば。か弱い、セシリア様に勝手な言いがかりをしてるようにしか見えないが?」
「な、なによ!ユーウェイン!昔は、昔は、あんなに優しくしてくれたのに‥‥‥ユーウェインのバカーーー!!!うぇぇぇぇんん!」
ベディヴィア卿は泣きじゃくりながら。何処かへ走り去ってしまった。
「ベディヴィア卿?!ベディヴィア!待つんだ!ここは僻地なにが起こるか分からないんだぞ!‥‥‥くそ!セシリア様!すみません。私はちょっと!」
「にゃあ!行ってやるのにゃあ!ニューエン!」
「感謝します。我が運命の女神よ!」
ユーウェイン卿はそう言うと。ベディヴィア卿が走り去って行った方へたと駆け出して行く。
「‥‥‥‥なんだ!あの、やり取りは?もしかして、ベディヴィアちゃんって悪役令嬢なのか?転生者かな?エスフィール?」
「セツナ!お主も何を訳の分からない事を!」
「いや、地球だと。悪役令嬢ものが結構流行っててな!俺、結構好きなんだよな!転生悪役令嬢のお話」
「分かった!さっきの大規模な聖魔法で疲れたのじゃな。無理させて済まなかったのう」
「ん?いや、別に!溜めてあった魔力瓶を使ったから。俺、自身の魔力は余り使ってない‥‥‥そんな、事より、エスフィール!君に少し話がある。ちょっと、一緒に来てくれ」
「な、なんじゃ?セツナ?!」
セツナはそう言うと、私の手を握り。歩きだした。
「ここなら、誰もいないな」
「エスフィール!」
なんじゃ?久しぶりに会えて嬉しいとか言ってくるのか?
「は、はい!」
「君が使った神代・回帰なんだが!」
「ん?『新緑の防壁』の事か?」
「あぁ、その、『新緑の防壁』の事だ!あの、魔法はやりすぎだよ。あんな、森林地帯がいきなりできたら。周辺に住む。魔物や妖精達の生態系がおかしくなってしまう」
セツナは強い口調で私に言い放った。
「いや、でものう」
「君、最初、こっちに戻って来て、セシリアと俺の闘いの後に言ってたじゃないか!(森の木々がまる焦げじゃ!それにこの猫娘も。もう少し治療が遅れていたら死ぬ所じゃったぞ。だから今度、使うときは相手と場所を考え、使ってくれ。これじゃ、ただの破壊者じゃ。)って!今回の大規模な緑魔法もそうじゃないのかい?」
「そ、それは‥‥‥‥‥確かにそうじゃな‥‥‥私は自分達だけが良ければそれで良いと。周囲の事も考えず。強力な魔法で生態系を変えてしまった‥‥‥済まない、セツナ」
私は少し泣きそうになり。下を俯むいた。地球に居た時やアリーナで過ごして居る時も、セツナは私に怒ることが全く無かった。それが、今、私は初めてセツナに注意され。申し訳なくなり。そして、心が少し塞ぎ混んだ。
そんな、姿を目にしたセツナは
「エ、エスフィール?!ご、ごめん!君を泣かせるつもりで注意したんじゃないんだ!」
「いや、でものう!私が何も考えず‥‥‥」
「俺の言い方も少し強く言いすぎたよ。ごめんよ!」
セツナはそう言うと私の頭に右手を置き。優しく撫でる。
「本当か?怒っとらんか?」
「あぁ、怒ってない!ただ、エスフィールの魔力は強大だから。使い方をもっと慎重に使ってくれると助かるかな」
「慎重に使うか。うむ、今度からは周囲にも気をつけて魔法を使おうと思う」
「そうか、それなら良かった。そうだ、エスフィール、俺と離れている間になにが、あったのか教えてくれないか?君と離れている間。君が心配で心が落ち着かなかったんだ」
「ん?あぁ!良いぞ!セツナの話も聞かせてくれ。私も寂しかったからのう」
「寂しい!‥‥‥‥そうか、じゃあ、君が泊まっていた宿の食堂まで行こうか!」
「うむって!きゃあ!!」
セツナは、突然、私の身体を持ち上げお姫様抱っこした。
「い、いきなり、何をするのだ?!貴様」
「泣かせたお詫びにお姫様抱っこしてる。さぁ、宿の食堂まで行こう」
「ま、まて!皆が見ている!恥ずかしいから下ろすのだーー!!」
「ねぇ?何あれ?セシリア」
「にゃあ?お姫様抱っこにゃあ!アルディス王子」
「あれが噂の‥‥‥‥じゃなくて何でイチャイチャしてんの?あの二人?それに何でアルディス王子なの?」
「いや、冗談にゃあ!アル!それにあの二人は、前からあんにゃ感じにゃぞ!元は宿敵同士にゃのに。今じゃ、周りを気にしない熟年夫婦みたいに見えるにゃあ!にゃあ!」
「セツナってかなりモテるの?」
「セツニャ?セツニャ?君は止めたのかにゃあ?」
「細かい事は気にしないのセシリア!ゴリ!」
「‥‥‥‥ハイにゃあ!セツニャかにゃあ?そうにゃねぇ!ガリアの姫に七聖教会のゴリラ聖女にゃろう?それにあれに、これに、それににゃあ、‥‥‥‥女の子との思いではいっぱいあるにゃあ!セツニャが女の子と仲良くなる度にゴリラ聖女がぶちギレてセツニャを半殺しにしてたにゃあ」
「半殺し?」
「うにゃあ、それを見て、わっちとサーシャはドン引きしてたのにゃあ」
「その、ゴリラ聖女さんもセツナに惚れてたの?」
「多分、そうにゃあ!当のセツニャは。毎回、ゴリラ聖女にボコボコにされてたから。ゴリラ聖女が苦手なのにゃあ」
「苦手?!嫌いではなくて?」
「言葉は言い様にゃあ!‥‥‥‥まぁ、嫌いにゃろうにゃ!セツニャの近くにゴリラ聖女が入ると。セツニャの奴は、いつも変にゃ汗をかいてたからにゃあ!小言で(殺される!殺される!)って言ってたにゃあ」
「それは、ある種のトラウマなんじゃ?‥‥‥‥もし、ユグドラシル地方にそのゴリラ聖女さんが居たら。大変な修羅場になりそうだね。僕も含めて」
「にゃん?アルも含めて?‥‥‥まぁ、よくわかんにゃいが。アルも速く素敵な人が見つかることを祈ってるのにゃあ!」
「はぁ?!なに?その余裕?!自分はヒスイ君に‥‥‥それと新しくユーウェイン卿まで手懐けたからって余裕ぶっちゃって全く」
「ニューエン?何でニューエンにゃあ?まぁ、黒騎士はなかなか、良い奴にゃあ、何で奢ってくれるしにゃあ。心も綺麗にゃし」
「くっ!何でセシリアばっかり優良物件が向こうからやってくるんだよーーー!!」
アル先輩はそう叫びながら。項垂れた。
数日後。『はぐれ妖精の里』
「では、メイエス殿。セシリア殿。今回は本当にありがとうございました。それからナルカミ殿、アルディス王子」
「ありがとうございました。セシリア様!皆さん」
「はい!ケイ殿!ユーウェイン殿。我々は一度、メリュジーヌ卿‥‥フローレンス卿に合流しようと思います」
「そうですか、では、しばしのお別れを!俺達はもう少しここで休んでからパーシヴァル卿の領地へと向かおうと思います。ユーウェイン卿とベディヴィア卿がこちらに付いた事で女王も南東の支配は、維持できなくなりましたから」
「そうですか‥‥‥‥では、行きます!ケイ殿!ユーウェイン殿!お大事に去らばです!」
私達はそう言うとセツナ達が乗って来た。メリュジーヌ卿の契約者。レッドドラゴンへと乗り込み。レッドドラゴンは地下空域に飛び立つ。
「ありがとう!!」「気をつけて!!」「メイエス様!!セシリア様!!!」「ありがとう!!本当にありがとう!!」「神父様!!!」
呪いで異形に変えられ。セツナの聖魔法で元に戻った近衛兵の人達が次々のお礼の言葉を述べていく。
「じゃあにゃあ!!皆にゃあ!!!バイバイにゃあ!!」
「皆さンも!お大事に!!!」
「また、会いましょう!!!」
私達も大声でお別れの挨拶を叫ぶ。
「ユーウェイン!この恩。一生だな!!」
「‥‥‥‥はい!!ケイ殿!!!私はこの恩義!一生忘れません!!」
ユーウェイン卿は泣きながら。そう答える。
そしてケイ卿は
笑顔で!
「ハハハ、そうだな!!俺も一生の恩義!絶体に忘れはしない!君と一緒だな!!ハハハ」
笑い、ユーウェイン卿と固く誓い合ったのだった。
二人の騎士は呪いに落ちた。
だが、二人の女性に救われる。
彼ら彼女らのお陰で新しい朝日を迎えられた。
二人の騎士は尚も笑う。
その心に大きな勇気と明日を貰い。大切な恩義を感じる為に心から笑うのだった。
二人の騎士に救いの手を編
終
以上で、二人の騎士に救いの手を編。完結です。
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